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ある仕事人
# 話
私こと、道具屋の横車は、誠心誠意お客様の為に頑張って
おります
今日のお客様は、事業を失敗され、一歳から11歳までのお
子様が、全部で五人
当年とりまして、38歳の青年実業家〇〇様でございます
話2
肌荒れ酷く、眉は釣り上がり、尖った眼をした
奥様と、力無くふにゃふにゃと薄笑いを浮かべ
たご主人、そして強制執行人の三人の中に、わ
たくし、横車は見えない空気の様に、しかしそ
こにしっかりとはまり込む様に、正座して入り
ます
# 話3
奥様はわたくしの方を見ようともなさいません
ご主人はどこを見ているのかわたくしにはわか
りません
執行人は、わたくしとは一番近しい間柄ですが
全くわたくしが、そこにいないものと思ってい
る様です
わたくしは、わたくしは、ただじっと、息を潜
め、そこで、わたくしの与えられた、いえ、わ
たくしの強い精神で確保したその場所で正座す
るばかりです