1話
……え?
どうして僕は、いきなり僕の自習室に入ってきた人に伴奏を頼まれてるんだろう…?
…しかも、あの永峰夕に!?
わけがわからないよ
どうしよう
「頼む!」
ええっ、土下座!?
「えっと…あの、やめてくださいっ」
「……ああ」
やっと上げてくれた顔は…むやみにイケメンだった
うらやましい
「永峰さん…ですよね」
「その通りだ。君の名前は?」
「浅井光です…じゃなくて、僕に伴奏をって…?」
「ああ」
「どうして僕に?僕なんかよりもっと…」
「君の音に一目惚れした」
この人…変な人だ!
「ご、ごめんなさい。急に言われても困ります」
「そうか…だが俺は諦めないぞ」
うぅ…怖いよぅっ…
…でも無駄にイケメン…
「ああそうだ。俺の演奏を聴いて…」
「失礼します!」
逃げよう
全力で
怪しい人と関わったらダメって、おばあちゃんも言ってた!
「ハァ…ハァ…」
寮までたどり着いた
さすがにもう大丈夫…だろう
それにしても
いったい何だったんだ?
急に伴奏とか、音に一目惚れとか…
…意味がわからない
とはいえ
先輩…だよね
放置して逃げちゃってよかったのかな…?
……まぁ、いいか
「ふぅ…」
部屋の鍵もちゃんとかけてっと
今日はなんだか疲れた
もう寝…よ……う………