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ラストプリンセス 前半  作者: 山犬 翔景
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王都ルーレンパレスを奪還する

プロローグ



2万年のも昔。

ルーレンと言われる広大土地の西側に、エンゼル山からの湧水の恵みを得られるナビル平野にて人々は幸せに暮らしていた。


南方の暖かい気候と、水は豊富にあるのに水害に苦しめられない、夢の土地だったのです。


しかし、その平穏はある日破られた。どこからか現れたトロルゴブリンによって人々はその土地を追われたのだった。


人々はエンゼル山から東にある、ユーウラス川とイグリアス川が交わる畔にて暮らし始めた。水は豊富にあるが、夏の雨季の時期は洪水に見舞われ、冬は寒さに震えていた。人々は思った。あのナビル平野にもう一度暮らしたいと。


そんな人々の願いを神は見捨てはしなかった。神は、人々の中からルーグランという1人の青年に、エンゼルソードとナビル剣を与えた。雷の力を持つエンゼルソードと、トロルゴブリンにも負けないパワーを備えるナビル剣。


人々はルーグランを総大将にトロルゴブリンと戦い、みごとナビル平野の土地を取り戻し、そこに王都ルーレンパレスを築いたのである。ルーグランは王となり、エンゼルソードをエンゼル山の頂上に突き刺し、ナビル剣はナビル平野の地下奥深くになる、地底湖に沈めたのである。


そこから人々は幸せな日々を過ごしたとされたと、神話が話し伝えられている。



しかし、事実を確認できる歴史書によると、

ルーレン歴BC2013年

バルト王国は、建国1万年を迎えた。

これから1500年もの間、人々はナビル平野を求めて戦い続けてたのである。

あるときは、グライト家が、ある時はオーラル家が。ある時はブレイン家が国を治めていた。

しかし、人とはこうも欲深い生き物なのだろう。みんなで仲良く分け合うなんて考えてもしない。自分がすべてを握りたいのだ。



ルーレン歴BC421年。ルーレンはバルト王によって統治され、約400年以上統治される事になる。しかし戦乱が終わる事はなかった。



ルーレン歴BC2年。ルーグラン・エン・ロイド王は、ユーウラス川の戦いで、勝利して、王都ルーレンパレスはルーグラン家によって奪取された。または取り戻された。



そして、ルーレン歴を作り、0年として、王都ルーレンパレスが再建される。しかしその偉大な王ロイドはその22年後にこの世を去る。その後は息子ルドによって、ロイドの理想郷を完成されていく。



そして、ルーレン歴29年 この物語の主人公のリンネが誕生する。



しかし、ルーレン歴48年。


「アルツィネ・・・おまえもかぁ・・・」


剣を刺され、血を流すルド王が、アルツィネに手をのばし苦しみながら放った一言である。


その横では、弓矢に刺されて死んでいる女性が。リンネの母、メディバである。


「どこまでお人よしの王なのだ。私は裏切った者の1人ではない。私が指導者だぁ! それも見抜けぬとは、どこまでも愚かな王なのであろう! 」


「くくく・・・」


「天国で、先祖に詫びるのだなぁ。どこまでもお人よしで申し訳なかったとなぁ! ハハハハハハ。 おりゃーー! 」


グサ


「ううう・・・ 」


バターン


ルドは苦しみ、悔しさの中死んでいった。



「姫をさがせぇ! 」


「はぁ! 」


家来たちはリンネを探しに行った。


「ルーグランの血を一滴も残すなぁ! 我が一族の夢を果たすのだぁ。神に選ばれた一族など存在せん! あんなのは神話という作り話でしかない! 我こそが王なのだぁ! 」



「探せぇ! 」



アルツィネの側近であるグラフを先頭に、家来たちがリンネを探していた。そんなアルツィネの目を盗み、物影には、黒髪小顔ショートで、服装は和風の忍びのような女が身軽にベランダから上に登って行った。



そして登ると、物置小屋に隠れていた、少し茶色かかった黒髪の長い髪で、ティアラを頭にのせ、赤色のドレスワンピースで、2層のシフォンになって、透け感が見える。また、その上には、銀色がかった白色の羽織ものをしているものを着ているリンネ姫に跪ついた。彼女の名前はレイ。リンネの側近である。


「姫。ここにはもう危険でございます。私とともに、城の外へ」


「お父様はぁ? 」


「それは・・・」


「お母様はぁ? 」


「それも・・・」


「レイ! お父様とお母様を助けるのじゃ! 」


しかしレイは下を向いて動かない。


「レイ! 」


「それはもう無理に御座います。王も王妃も、もうアルツィネによって殺されました」


「え・・・」


「姫だけでも早く! ルーグランの血を絶やしてはなりません! ルーグランは神に選ばれた血族! 急ぐのです姫! 」


とレイはリンネの手をとり、出ようとすると、アルツィネの家来が襲って来た。


しかしレイは、短剣で、相手の剣を振り払い、他の敵を切り裂き、その後、その敵も切り裂いた。


そして城の階段を下りて、馬に乗り、場外へと逃げていった。


「逃がすなぁ! 追え! 」


レイの基点と速さでリンネは助けられた。



アルツィネは玉座にいた。


「申し上げます。すみません。姫をとり逃しました」


「なんだとぉ! あの小娘! 」




第1章王族の血



王都ルーレンパレスから北東に1200km

鉱山都市ガレイ


「キャー」


「うわー」


「はやくしろぉ! 」


鉱山都市ガレイでは、奴隷たちが強制労働をさせられていた。


鉱山都市ガレイは銀が出る町として発展した。ルーグラン家がこの地を支配してからは、レイの父であるオルトが納めていた。


ガターン


1人の男が倒れた。


「貴様ぁ! 」


バチン


「あー」


倒れた男を容赦なくムチで叩いている。まさに残虐非道である。


そこに1人の青年が働いていた。


「くそ・・・」


彼の名前はライファだ。昔の農民のような服装をしていて、長髪の黒髪である。


彼がいた小さな町アレイは、アルツィネ側につかなかった為、アルツィネの軍に攻め落とされ、働ける者は奴隷として強制労働させられている。


ライファもその1人である。


ガチャーン


老人が採掘した銀を落とし、その辺りにまき散らした。


「なにをやっているんだぁ! 」


「すまないすまない」


老人は土下座して謝りだした。


看守はムチを振りかぶり殴りかかった。


ドーン


看守が倒れた。


ライファが蹴り飛ばしたのだ。


「お年寄りに手を挙げてるじゃねーよ」


「貴様! 」


他の看守がやって来た。


「やばい! 」


ライファは逃げ出した。


「待てぇ! 」



その頃、ルーレンパレスでは、ルーレンパレス住まいし人々が城の中の広場に集まっていた。

そこには、アント将軍や、カイデン将軍の姿も見える。


グラフが出て来て人民に話し始めた。


「今より、アルツイネ王によるお話があられる」


そう呼びこまれると、アルツィネが王の王冠を被り登場した。


「ルーレンパレスに住みし者たちよ。私が真の王アルツィネである。この50年ぐらい、ルーレンパレスは逆賊ルーグラン家の元に落ちていた。確かに、神話の中では神に選ばれし王家の一族と言われているが、そんなのは迷信である。なぜなら、正式な歴史書に確認できないからだぁ! だからこそ、真の王族とはバルト家の事をいい、このアルツィネそこが、バルトの血をひくものである! 」


そこに垂れ幕が落ち、アルツィネがバルトの血をひくと証明される家系図が発表された。


「アルツィネ! アルツイネ! アルツイネ! 」


人民がアルツイネをたたえた。


アルツイネは下がり、グラフに話し始めた。


「グラフ! 」


「はぁ! 」


「うそつきの自称歴史学者は、ことごとく処刑しろぉ! 」


「はぁ! 」


今から、10年前ぐらい。

歴史学者は、自ら発掘した出土品をルド王とメディバ王妃、リンネ姫に見せていた。

その後ろには、アルツイネが付いてきている。


「こちらをご覧ください王様」


「これは、我が家紋」


その神殿の柱と思われる出土品に、持ち手と刃の間が、天使の翼になった剣、これがエンゼルソードだと思われるものと、刃が分厚い剣、これが恐らく、ナビル剣だと思われるものが、ばってんに重なり、その後ろにエンゼル山を模様した、逆三角形があり、その下には翼が大きく広がっているエンブレムが描かれていた。これがルーグラン家の家紋である。


「はい。こちらは、約7000年から8000年前にあったとされる神殿の柱になります」


「ほう、であれば、我がルーグラン家はその昔、このルーレンを治めていたという事かぁ? 」


「左様にございます。これは間違いありません。神話は事実だと言えると、私は考えます」


リンネもしっかりとその家紋を確認した。

後ろでは、アルツイネがくそぉという顔をうかべている。

それに気づいたルド王はアルツイネに話しかけた。


「アルツィネ。いかがした? 」


「はぁ・・・・いえ。これは誠に嬉しい事でございます。ルーグラン家が、神に選ばれし王家であると結論づけされました。私もうれしゅう御座います」


と言いながら、ルドから顔を隠し、悔しがっていた。



ライファは、山道にある川まで逃げて来ていた。


「ハァハァ。ここまで来れば大丈夫だろう」


ライファは安心して川の水で顔を洗うと、川上で布地を洗う少女を見つける。



その頃、ルーレンパレスでは、アルツィネはリンネが見つからない事で、イライラしていた。


「姫は見つかったかぁ? 」


「いえ、まだ・・・」


「ルーグランの血は一滴足りとも残すなぁ! 反乱分子はもう摘んだかぁ? 」


「ほとんど、摘み取りましたが、後は、ルド王の甥であるネオンと・・・」


「あのバカかぁ。あんなものは時間の問題だろう」


「後は、ルド王の側近だったエイネンです」


「エイネンなど相手にもならぬわぁ。大軍を差し向ければすぐに寝返るわぁ! 」


「はぁ! 」



ライファは川上にいるその少女に話しかけようと近づいた。その少女はリンネであった。


姫というよりは、洋風な動きやすい服装に身を包み、腰には2本の剣を差している。


「止まれ! 」


「う・・・」


さっきまでいなかったレイがライファの首元に短剣を突き出した。


「これ以上近づくなぁ。さもなくば、貴様の命をもらうぞぉ」


「ふざけやがって」


ライファはレイの腕をつかみ、強く握った為、危険を感じたレイはすぐさま離れた。

レイとライファはにらみ合った。


「たぁ! 」


レイが素早く短剣を斬りつけると、ライファは腕をとって、押し返した。


レイは素早く、何度も斬りつけた。


レイは離れ、ライファは少しよろけた。


「たぁー」


レイはその隙を見逃さず、斬りつけたが、それも間一髪で交わし、ほほにかすり傷がついた。


その後、レイはもう一度斬りつけような向かっていったが、


「やめよレイ! 」


リンネが止めた。


レイは立ち止まり、リンネに跪いた。


「はぁ」


「おまえはここで何をしているんだぁ? 」


と言いながらリンネに近づいた、


「貴様、姫に近づくなぁ! 」


「よい! 」


「はぁ」


「姫? ・・・もしかして、おまえがリンネ姫かぁ? 」


「そうだぁ」


「てめぇー! 俺らがどういう状態か分かってるのかよ! 」


「無礼者! 貴様誰に口を聞いている! 」


「よい。そなたの言いたいことはよく分かる。でも今の私には・・・」


「今の私にはって! それでも人の上に立つ人間かよ! 」


「貴様! 姫の想いを何も分からずそのような事を! 貴様殺されたいのかぁ! 」


レイはライファに斬りつけた。


「うおーあぶねぇ〜。何しやがるだぁ! この女男! 」


「誰が女男だぁ! 」


レイはライファに斬りつけた。


ライファは間一髪でかわした。


「やめよ! 」


「はぁ」


「私も姫として、ルーグランの者として悔しい。人々が流さなくてもよい血を流し、しなくてもいい戦いをして、奴隷にされて苦しんでいる。それは我が王家として力がない事にある。ホントにすまない・・・」


とリンネは下を向き涙ぐんだ。


「姫・・・」


「今は、このように身を隠す事しかできぬ・・・」


「姫。お察し致します。きっとこのレイが、もう一度姫を、王都ルーレンパレスにお返し申し上げます」


「そんな事、できるのかよ! 」


「できるできないではない。やるしかないのだ! そなたのような下民に分かる事ではないがなぁ」


「やるしかないのなら、できる事をしろよ! 女男! 」


「なんだとぉ! 」


「では、そなたに聞く。できる事とは、なんだぁ? 」


「アルツィネの嫁にでもなったらいいんじゃねーの」


「何? 」


「貴様! 姫にアルツイネの女になれと言うのかぁ! 」


「分かんねーけど、母ちゃんは、父ちゃんに色々言えるだろう。奴隷をなくしてとか言ったらさぁ〜。後、釣ったらいいんじゃねー」


「釣る? 」


「須〇亜〇里とか、渡〇美優〇とか、秋〇真〇とかみたいに心奪ちゃえよ! 」


どっかの世界のどっかのアイドルの事を言っているのか・・・この話とは全く関係ない。


「え? 」


「何言ってるか、分かんねーけど、リンネ姫にアルツィネの心を掴めと言っているんだなぁ」


レイのおかげで、話がややこしくならずに済んだ。


「そう言う事だよ」


「アルツィネの女に姫をさせる訳にはいけませんが、確かにルーグラン家は神に認められた一族です。だから、アルツイネの子を産んだら、そのバルトの血もルーグランの血も持つ子供が生まれましょう。そうしたら、誰も裏切らないと考えるのも必然です」


「そうであるか・・・」


「しかし、それはいけません! アルツイネに姫が跪くなどありえません」


とレイが、訴えるが、リンネはライファに質問を続けた。


「もしそうなったら・・」


「うん? 」


「そうなったら、奴隷はいなくなるのかぁ?! 戦争は終わるのかぁ?! 」


「それを受けいれてもらえるようにするんだろうがぁ」


「分かった。人々に平和が戻るのであれば、この身を差し出そう」


「姫・・・」



リンネたちは王都ルーレンパレスへと向かった。


「ここは、王都ルーレンパレスである。何の用だぁ? 」


「アルツィネ大臣にご面会願いたい」


とレイは門番に話した。


「無礼者! 大臣ではない! 王である」


「我は、リンネ・フランテ・ルーグランである」


リンネが自分の名前を明かした。その場で殺されてもおかしくない勇気ある行動である。


しかし、そうしなけば、入る事もできないのであろう。


リンネが名を語った時、緊張が走った。


レイは、腰元につけた、短剣に手をかけた。


「リ・・・リンネ姫・・・・」


「早くここを通せ! 」


レイは門番に強い声で開門要求をした。


城内ではアルツィネに、リンネが来たことを伝える伝令が走らされた。


「申し上げます」


「なんだぁ? 」


アルツィネは玉座に座り、横にいたグラフが伝令を会話とした。


「リンネ姫が王に面会したいと、こちらに来ております」


「リンネ姫だと! 」


リンネ姫という言葉にアルツィネは反応した。


「はい! 」


「通せ! 」


「はぁ! 」


「なんと、自ら出てくるとは、グラフ! 」


「はい」


「いつでも準備しておけ」


「もちろんです アルツイネ王」




「ここで待て」


「まさかこんな形で戻ってくるとは・・・」


リンネは元々、自分が住んでいた部屋に通されていた。

アルツィネもワザとやっているように思えた。


「痛み入ります」


「な・・・なんだここ! 俺からとった税金でこんな所に住みやがって! 」


ライファは、自分たちとあまりに違う生活を見て、腹正しく思っていた。


「ルド王はそんな多く税金はとっておらん! アルツィネだろう。税金をあげたのはぁ! 」


「・・・・」


「アルツィネ王が会われる」


そこに、アルツィネの家来が入ってきた。


「よし」


「しかし、会われるのはリンネ姫のみです」


「なんだとぉ! 」


レイは怪しい行動に警戒を覚える。腰元の短剣に手をかけ、リンネ姫と兵の位置、周りを見渡した。


「それ以外のものはここで待っておれ」


「貴様ら! 何を企んでいる! 私も共に参る! 」


とレイはリンネと兵の前に立った。


「それでは、アルツイネ王はお会いになられん! 」


「そもそも、姫を待たせることすら無礼千万! 普通ではあれば迎えに来るのが礼儀であろう! 」


とレイが強く兵に言い放つと、


「よい! 」


とリンネはレイを止めた。


「姫・・・」


「私は1人で参る」


「しかし、アルツイネは何を企んでいるか分かん奴です。危険でございます」


「構わん! 夫になる人間。ここで信じなくて、大望を果たせはしない」


リンネはルーグラン家の人間にふさわしく、強い心もちであった。


「姫・・・」


「それではこちらでございます」


リンネは兵に連れて行った。


レイとライファはその場で待たされた。



玉座の間に入る手前で、その家来は立ち止まった。


「念のため、腰に差している、2本の剣はお預かりします」


「・・・・分かった」


リンネは腰につけた剣を家来に渡した。


リンネは玉座の間に通された。


玉座は1段高い所にあり、以前であれば、そこに王と王妃の椅子があり、父であるルドと、母であるメディバが座っていた。


リンネは下座に通された。ルーグラン家の人間が下座に通さるなどあり得ない。レイが見ていたら、暴れるであろう。リンネとて、このような侮辱は許される事ではない。しかし今や、力なくしたルーグラン家にはどうする事もできないし、それで人々を守れるのであれば、その侮辱も受けれ入れる覚悟である。


リンネは目をつぶり、気持ちを抑え下座に立った。


「リンネ姫。今より、アルツイネ王が参ります。どうぞそちらに跪つき頭をお下げください」


「跪く・・・・」


「はい。何か問題でもございましょうか? 」


「う・・・・分かった」


リンネは悔しい気持ちを抑えつつ跪いた。


そこにアルツイネが姿を現した。


「これはリンネ姫、なんというお姿でぇ! おまえ! 」


「はぁ! 」


「姫に、跪かせるとはなんと無礼なぁ〜。どうぞお顔をお上げ下さい」


と、勝ち誇ったような笑みを浮かべ、わざとらしく家来を叱った。おまえがやらせたのはまるわかりである。ルーグラン家より上である事を見せつけたかったのであろう。


「アルツィネ」


「呼び捨てですが姫。聞いた話では、私の妻になろうと投降された聞いておりますが。であれば、私は姫の主人になるという事。口を慎むがよかろう! 」


アルツイネの声は部屋中に響き渡った。


この時、リンネは気づいていなかったが、玉座の間の、横の部屋には、グラフと何名かの兵士が戦闘態勢で待っていた。


「アルツィネ・・・・・お・・・王・・・」


リンネは屈辱を抑えながら話した。


「なんですか? 」


「どこか、これ以上の血を流すのをおやめください。私の血を持って、これ以上の犠牲をなくし、奴隷を解放して下さい! であれば、このルーグランの血をアルツイネ王に差し出しましょう! 」


「フ・・・フフ・・フハハハハハハハハハ! これ以上の戦争をやめ、奴隷を解放すれば、その血を、我にくれると思うすか。面白い! 」


「・・・・」


「よかろう。思い通りに致そう」


「ホントかぁ? 」


「約束しよう。フハハハハハハハハ」


と言うとアルツイネは手を挙げて、何かを指示をだした。


リンネはびっくりした顔でアルツィネを見つめた。


きっと、玉座の間の、横の部屋にいた、グラフたちが襲ってくる合図なのだろう。


しかし、


しーん


「うん? グラフ! 」


しかしグラフたちは襲ってこなかった


「どういう事だぁ・・・」


・・・・・


「グラフ! どうした」


「おめーが探しているのはこいつかぁ! 」


その時、どこからか、ライファの声が聞こえた。


「ライファ」


リンネはライファを探した。


「うぐ」


ドーン


ライファはグラフを殺し、グラフはその場に倒れた。


その他の兵士もレイとともに全滅された。


それを見たアルツイネは玉座にある、鐘を鳴らした。


カーンカーンカーン


そこにたくさんの兵が走って来た。


ライファとレイは2,30人いる兵士と睨み合った。


「おりゃー」


ライファが兵士を斬りつけ戦っている。


レイも短剣でバタバタと斬りつけている。


「アルツィネ! どこまでも卑怯な奴めぇ! 」


リンネはアルツィネを睨んでいた。


「どこまで、親子そろってお人よしなんだぁ! おまえの血は欲しいが、それは死にゆくお前の血だぁ! 」


アルツイネは剣でリンネを斬りつけた。


「おいリンネ! 」


「姫! 」


と2人が気づくも1歩早く、アルツイネの剣は振り落とされた。


スパーン


布地が少し切れた、


リンネは鮮やかにかわしていた。姫とは思えぬ身のこなしである。


「やるじゃねーかぁ! 」


「姫とて、伊達に鍛錬は積んでおらん! 」


と言って、リンネはレイに手を差し出した。


「姫! 」


とレイはリンネに2本の剣を投げ渡した。


リンネは剣をとり、剣の鞘を捨て、2当流で構えた。


「ほう」


と言って、アルツィネも剣を構えた。


「おまえだけは許さない! たぁー」


とリンネは2当流で斬りつけた。


カキン カキン カキン


ズサ


リンネの剣がアルツイネの肩に少しだけかすれた。


アルツイネは血を流している。


そこに違う兵士がリンネに斬りつけた。


ズバーン


しかしそれは身軽に飛んだレイによって粉砕された。


そして、リンネとレイは背中合わせになって構えた。


「姫」


「私に、構うなぁ! 」


「うぉー」


カン ズザ


レイは短剣で相手の剣をはじき、そのまま心臓目掛けて突き刺した。


「おりゃー」


違う兵士が、今度はリンネを斬りつける。


リンネは左手の剣ではじき、右手の剣で45度に斬りつけた。


ズバーン


「ライファ! 入り口を開けろ! ここから脱出するぞぉ! 」


「俺に命令するなぁ! 」


と言いながら、入り口にいる兵士を2,3人と片付けて行った。


「姫! 」


「おう」


その隙に、3人は城外へと逃げ出した。


城の左側へ走ると、そこには馬小屋がある為、馬に乗り逃亡する事とした。


リンネはレイの後ろに乗り、ライファは別の馬に乗った。


「追え! 姫を殺せ! 」


アルツィネは痛んだ左腕を抑えながら、兵に叫んでいた。


「追いかけてくるぞぉ! 」


猛スピードで走るライファの後ろに兵が迫ってきた。


「後ろを向くなぁ! 前を見て私についてこい! 」


レイもリンネを後ろに乗せ、猛スピードで走っている。


城内の迷路を知り尽くしたレイは左にある、出口へと向かった。


正面入り口の方が道幅も門の幅も大きい為、出やすいが、兵士に道をふさがれる可能性が高い。


その為、城下の左側、東側にある門なら兵士も少ない為、そこを狙った。


「よし、もうすぐで城外に出れるぞぉ! 」


「おうよぉ! ・・・・おい前! 」


前には兵士たちがいた。


ブオーン


レイはその前の段差を利用して、ジャンプした。


ライファもそれに続いた。


みごとに兵士の頭上を抜けた。


「うぉーい! 」


ライファが歓声を上げるほど、見事までにまいたのである。


そのまま、城外へと逃げていった。


「待て! 」


「もうよい! 」


「えぇ」


そこに、英語のAのような、三角のマークを掲げた将軍、アントの指示で、家来たちは止まった。


「手柄の1つでも残しておかねばなぁ〜」



玉座の間でアルツィネは、治療を受けていた。


「申し上げます。 リンネ姫を取り逃がしました」


「なんたる様だぁ! おのれ、小娘が! いつまでも逃げれると思うなよ」



夜の森で、リンネとレイとライファは焚火を行っていた。


「このままどうすればいい? 」


リンネは、どうすればいいか悩んでいた。


「おいリンネ! 」


とライファはリンネを責めた。


「無礼者! 姫を呼び捨てにするとはぁ! 」


レイは、リンネに対する無礼な態度にライファをいなした。


「おまえはお人好しすぎるんだよぉ! なんであんな奴の事を、一瞬信じたんだよ。明らかに嘘ついているって分かるだろうがぁ! 」


「だから貴様! 姫に向かってなんたる口の利き方だぁ! 」


「よい! ライファの言う通りだぁ・・・我が一族は昔からお人好しだ。だからルーレンパレスを守りきれぬのかもしれん。でも我が一族がいなければ、ルーレンの地は1つにはまとまらない」


ルーレンとは中国のような広大な土地を指す。そこを神話の中ではルーグラン家は1つにまとめて来た時代がある。しかし、そこからルーレンの地は、三国志のように、争った時代もある。それをバルトが1つにまとめ、その後戦国時代が始まり、リンネの祖父、ロイドが1つにまとめたのである。そして今、また反乱が起こり、国が乱れてはいるが、ほとんどはアルツィネに従っている状態となっている。


「とにかく、当初の計画通り、東を目指し、エイネン殿の元に、参りましょう。エイネン殿はまだ、アルツィネと戦っております」


とリンネに進言した。


「エイネンって、確か、補佐官をしていた奴だよなぁ〜」


「貴様はとことん無礼な奴だぁ。エイネン殿はルド王が一番信頼しておられた、側近補佐官である。だからアルツィネは、エイネン殿が、所領に帰っているとこを狙いやがったんんだ」


「エイネンは、まだ持ちこたえたておるのか? 」


「分かりません。ただ、やはり頼るは、エイネン殿と思われます。我が父がやられていなければ、ガレントの鉱山都市を利用して戦えたかもしれませんが・・・」


「すまないレイ。私たち一族のせいで、父をなくしてしまい・・・」


「何を言っておりますリンネ姫! 兵士に生まれしは、仕方がない事に御座います」


とリンネはレイを気遣った。




今より13年前。

ルーレンパレスより北にある、修道院には、リンネやレイなど、7から10歳の子供たち8人が老人の元に集められていた。

老人はオンといい、ロイドの王の軍師を務めていた者である。


「ルド王の命により、そなたたちをリンネ姫の郎党となる事に相成った。そなたたち7人はリンネ姫の忠誠を誓うように。よいなぁ」


しーんとなった修道院。誰もが聞いているのかどうなのかというような感じだった。

その為、オンは大きな声を上げ始めた。


「よいなぁと聞いたときは返事をしないかぁ! 」


ビクン


だれもが、老いぼれた爺だとも思っていたので驚いていた。

もちろん、オンの事を知らないわけではない。親やお国の家庭教師より聞かされている話であり、ルーレンパレス建国の話は誰もが伝え聞いている話だからだ。


「はい」


「それでは、1人1人自己紹介をする。では、そなたからだ」


とオンはレイを指さした。


「将軍オルトの娘、レイ・ミネルバという。ここより、北東にある鉱山都市ガレントから来た。山を走り回って育ったので、身軽さには自信がある。宜しく頼む」


「では、次」


「私は、ユーフラス川とイグリアス川が交わるメグロスから来た、将軍アントの直子コーテン・フレンジャーである。父は智にも力にも優れた人間ではあるが、私は生まれつき体が弱い。その為、智を極めようと考えています。オン先生から学べるとあり、父に頼み、ここに来られるようにしていただきました。宜しくお願い致します」


「では、次はそなた」


「私は、将軍セドルの娘ルフィサ・オーラルだ。我オーラル家は剣豪の家元として繁栄してきた。私はその44代目となる予定だ。これからいろいろと宜しく」


「次」


「俺はここより、北にあるビダルという山間部の町から来たサーベルである。狩猟民族ザボンの末裔である。わが民族は昔より槍の使い手の為、俺も槍使いを得意とする。宜しく」


「次は、そのデカイの」


「俺か。俺はランバル。ボルドという街が来た。父はイグリアス川のダム管理をしている。みんなと違い、兵士の子ではないが、力だけは自信がある・・・・・宜しく」


「次」


「私はバシル。ガルバゴスから来た。馬にはよく乗っている。宜しく頼む」


「最後は、そなただなぁ〜」


「・・・・・」


「聞いているのか! 答えよ」


「俺はガーディアン・・・・」


ガーディアンは名前だけ言って、それ以外何も言わなかった。無口な男で、あまり人とコミュニケーションをとらない。


「・・・・終わりかぁ・・・」


しかしガーディアンは何も答えない。


「答えんかぁ! 口下手なのか、人見知りなのか知らんが、来たとことか、親は誰かとか、得意な事とか答えんかぁ! 何を見ていたんだ! 」


「来たところは、東の方にあるカテンだ。父は弓の指南役をしている。だから俺も弓を得意とする・・・・」


「宜しくなぁ! 」


「・・・・はい・・・・」


「それでは、姫も自己紹介してくれますか」


「分かった。 私は第50代王ルドの娘、リンネ・フランテ・ルーグランである。我がルーグラン家には男児が生まれなかった。父も母以外の妻をめとる気はないとの事。その為、私が、いずれルーグラン家を継ぐ事になる。皆のもの、我を支えよ。宜しく頼む」


「ありがとうございます」


リンネが挨拶すると、オンにレイとルフィサ、コーテンやガーディアンは頭を下げた。しかしそれ以外は下げなかった。この4人はそれなりの家柄。その為礼儀を教育されている。しかしそれ以外はその礼儀を知らないのである。


「姫が挨拶されたときは、頭を垂れよ。これが礼節というものだぁ。まーそれだけ色んな所から集まったものばかりという事だ。これから、その辺も身に着けるように」



第2章エイネンを助けよ



リンネたちは、エイネンがいるガグパゴス城へ向かった。


ガグパゴス城は、今、アルツィネの家来であるフィルランの3万の兵に取り囲まれていて、対するエイネンは裏切りもあり2000程度まで減っていた。


リンネたちは近くの小高い丘から、バレないように寝転がって状況を伺っていた。


「おい! こんなのどうやって突破するんだよ? 」


ライファが言う通り、完全に囲まれており、虫1つ、入る隙間もないほどに張り巡らされ、完全に物資の輸送も不可能な状態であった。


「もうこの状態が、何カ月も続いている。もはや、食料も尽きたと思われます」


「レイ」


「はぁ! 」


「エイネンが心配だ。なんとか突破口はないものか・・・」


リンネは小さい頃から一緒にいて、慕っていたエイネンが心配だった。


「う〜ん・・・援軍でもあればいいのですが・・・」


「ネオンはどうしたんだぁ? 」


「分かりません。ネオン様は所領のザグト城に入られたままだと・・・」


「なんだそいつ! なんで、出て来ねんだよぉ! 」


バコーン


レイはライファの頭をぶん殴った。


「イテェ! 」


「貴様! ネオン様に、そいつとはなんだぁ! 」


「そうだろうがよぉ! 普通、味方なら助けに来るだろう!  」


「ネオン様にだって、事情があるかもしれんし、ネオン様の所領からでは、アルツィネの直轄地を通らねばならん」


「なんだそれぇ! 」


「要するに、そう簡単には動けんのだぁ! 」


「そんなのビビってるだけじゃねーかぁ! 」


バコーン


レイは、ライファの頭をまたぶん殴った。


「イテェ! てめぇ! 」


「お前はバカかぁ! 考えもなしで動いて、たくさんの兵をなくしたら、それまでだろうがぁ! 」


「それでも、仲間の為に命をかけるんだろうがぁ! 」


「だからぁ! 」


「おしゃべりはそこまでだぁ。援軍だぁ」


「え・・・」


「その、ネオンって奴が、やっと来たかぁ? 」


その援軍は、英語のAのような三角のマークを掲げている。


「あれは、アント将軍の兵だぁ! 」


とリンネが叫んだぁ。


「なんだぁ! 」


ライファはよく分からない様子だが、名前は聞いたことはある。なぜなら、


「ルーレンの兵の総司令官を務めていたアント将軍。しかし、今はアルツィネ側についている。だから、あれは援軍は援軍でも・・・」


「その、フィルランという奴の援軍て事かぁ! 」


「そういう事だぁ・・・しかも10万近くいる・・・」


「うおおお! 」


リンネは立ち上がり、雄たけびを上げだした。


「レイ! であえ! 」


と言って、剣を抜き、馬に乗ろうとした。


「お待ちください! 姫! 」


レイはリンネを抑えた。


「レイ! エイネンを助けるのじゃぁ! 」


「なりません! ここはどうかお抑え下さい! 」


「エイネンは殺してはならん! 」


リンネは、エイネンを助けたい一心だった。でも3人で行った所で、どうにかなるものではない。



その夜。


「ううううう」


リンネが泣いていた。


「姫・・・」


レイが横について、慰めていた。


城からは白煙が上がっている。


その後、城攻めが行われ、1時間ぐらいの攻防で城は落ちたのである。


「我には何も力がない! もう姫など、ただの1人の女子でしかないのだぁ! 」


と言って、リンネは剣を抜き、自分の首に当てようとした。


「姫! なりませぬ! 」


と言ってレイが剣を取り上げようとしていた。


その時、ライファがリンネの手を蹴り飛ばし、剣は飛んで、地面に突き刺さった。


「貴様! 無礼者! 姫を蹴るなど許せ・・・」


とレイがライファを短剣で斬ろうとしたが、


「おまえそれでも一国の主なのかぁ! 」


「うん・・・」


レイはそのライファの言葉に動きが止まった。


「その、エイネンって奴は、おまえに期待してたんじゃねーかぁ。だから、ルド王が殺されても、ずっと反抗し続けたんだろう! きっとおまえが生きてると信じているから。 それをおまえはなんだぁ! ただ暴走するだけでぇ! 何もできないと嘆いているだけでけぇ。ただのおてんば姫じゃねーかぁ! 」


「・・・き・・・・貴様! 無礼者がぁ! 」


とレイが短剣でライファに斬りかかった。


「やめよぉ! 」


とリンネがすぐさま止めた。


「はぁ! 」


「そなたの言う通りだぁ。私は、暴走するだけ、嘆くだけで、何もできない。ルーグラン家の人間として恥を知った。すまない」


「お・・・」


「レイぃ! 」


「はぁ! 」


「城の様子を見てきていくれないかぁ! エイネンを助けれるなら、助けて欲しい」


「分かりました」



リンネが4歳の頃


「という事から、ルーグラン家とは、神に認められた・・・」


とエイネンがリンネに神話を教えているが、リンネは聞いていない。


リンネの前にはバッタが飛んできた為、そっちに気がいっている。


「うん? 」


「そして、エンゼル山の頂上に、そのエンゼルソードを・・・」


バッタはリンネとにらめっこ状態になっている。


そしたら、バッタが、


ピョーン


「うわー! 」


バッタがリンネ目掛けて飛んできたのでリンネは後ろに倒れた。


「姫! 大丈夫ですかぁ姫! おい誰か、医者を! 」


リンネは椅子ごとを倒れて泣いていた。


「ウワーン」



リンネが5歳の時だった。


「姫! 姫! ハァハァハァ お待ちください! 」


とエイネンに呼ばれるも、リンネはどんどんと走って行く。


「うるさいぃ! エイネン。こっちに来るなぁ! 」


「姫! いつも遠くには言ってはいけないと言っているでしょう! 姫! 」


「ハァハァハァ。ホントに、どこまでおてんばな姫なのでしょうか。ルド王が言われるように、女子ではありませんなぁ。ハァハァハァ。あれ? 」


エイネンが疲れて立ち止まっているとリンネの姿を見失ってしまった。


「姫! 姫! リンネ姫! 」


しかし探しても探しても姫は見つからなかった。



「すみません。ルド王。メディバ王妃」


エイネンは玉座に座るルドに謝っていた。


「申し上げます」


とそこへ、兵士が走って来た。


「どうだぁ! 見つかったか? 」


「それが、城中をくまなく探しておりますが、どこにも・・・」


「本当にすみません。このエイネンの首を持ってお詫びいたします」


「たわけた事を言うなぁ! そなたの首を持って、リンネが戻ってくるわけではない! 」


「申し訳ございませぬ! 」


「申し上げます! 」


「いかがした! 」


「城の北西にある、井戸の前に姫の靴が落ちておりました」


と言って、その兵士は靴を差し出した。


ルドは急いで、その靴をとりに行った。まさしくリンネの靴であった。


「それはあの子の靴です・・・もしかして、井戸に落ちたのでは、あーーー! 」


メディバは泣き崩れた。


「案内せよぉ! 」


「はぁ! 」


ルドは兵士に案内させ、リンネを自ら探しに行った。

エイネンもそれについて行った。



「こちらに靴が落ちておりました」


そう兵士が言うと、ルドは井戸を覗いた。


しかし、井戸の中は暗くて何も見えない。


「ルド王! 」


「いかがした? 」


エイネンが呼ぶと、そこにはもう片方の靴が落ちていた。

その先には、なんと洞窟がある。


「ランプを持ってまいれ! 」


「はぁ! 」


ルド王はランプを受けとり、中へと入っていった。

そのまま歩いて行くと、洞窟の中に段差になった所があり、そこにリンネが寝ていた。


「おい! リンネ! 」


「うん?・・・あーお父様・・・・あれ・・・リンネ遊んでいたら眠っちゃった」


「リン・・・」


「姫! 何を言っておるのです! 」


ルド王がリンネを叱ろうとしたとき、エイネンが声をあげた。


「みんな総出で探したのですよ! どれだけ心配されれば宜しいのですかぁ! 私は何個体があっても足りませんぞぉ! 姫! 」


「エ・・・エイネン・・・」


いつも怒らないエイネンが怒って、リンネはびっくりした。


「でも、ご無事でなによりでした姫」


「エイネン・・・」


とリンネは、エイネンを見つめた。



現在のガルバゴス城。

レイは、夜陰に紛れて城へと侵入した。

城の中では、アントが上座に座り、その前に、ひもで縛られた、エイネンがいた。


「エイネン殿。どうだぁ! 自分の無能さを思い知ったであろう」


「アント殿。そなたは、ルド王への忠義を忘れたのかぁ! 慈愛に満ちた、あの偉大な王に、どれだけの恩恵を受けたと思っている。人民1人1人に目を向けられる、数少ない王であるぞぉ。アルツィネなど、私利私欲に走っただけの者であろう! あんなものに従うのかぁ! 」


「フハハハハハ。確かに理想的な王であり、ルーレンは素晴らしい国であった。でもどうだぁ! 我々軍人は、戦って所領を増やさねば、豊かにはならん。隣国も戦を仕掛けて来た。我々にとっては、それほどの働き口はなかろう。なのにあの王は、お金を払うとか、貿易をするとか、色んな事をして平和を保とうとした。我々はなんだぁ! 何の為に存在するんだぁ! 貴様とて、将軍の端くれであろう! 無能扱いされているようで、虫唾が走るわぁ! 」


「アント殿! 考え直せぇ! リンネ姫がきっと生きておられる。リンネ姫とともに、新たな国を作り直そうではないかぁ! あの姫は、確かにおてんばで、お人好しな姫である。でも男勝りな力と、人民に愛されてもいる姫である。ルド王とよく似ているではないかぁ。どうだぁ! アント殿! 」


「おい! 」


アントは、部下に指示をだすと、部下は剣を構えた。打ち首をしろとの命令である。


「やれぇ! 」


「はぁ! うおりゃー! 」


その部下は、剣を振り落とした。 エイネンは目を閉じて衝撃に備えた。


カーン

グザ


レイは素早く飛び出し、剣をはじいて、その部下を刺し殺した。


すぐさま、ロープをとり、エイネンを引っ張って逃げた。


「誰だぁ! あの小娘! 」


とアントが叫んだ。


「あれは、オルト将軍の娘、レイです」


「オルトの娘・・・逃がすなぁ! 殺せぇ! 」



城中の人間がレイとエイネンを捜している。


「そなた、何しに来た? 」


「リンネ姫の命で、エイネン殿を助けに参りました」


「なんとぉ! 姫は無事なのかぁ! 」


「はい」


「なんとぉ、それは何よりである」


エイネンは、リンネが無事である事を心の底から喜んだぁ。


しかし、城の警戒網は厳しく、なかなか物陰から出ることができない。


「ダメだぁ。あっちもこっちも兵がいる」


「すまぬ。私なんかの為に・・・」


「いえ。姫の命ですから・・・」


「リンネ姫が、私を大事にして頂けるとは、なんと嬉し事であろう」


エイネンは涙ぐんで喜んだ。


レイは、隙を伺っているが、その隙はなかなか見つからない。



城からほど近い、小高い丘では、リンネとライファが待っていた。


「あいつ、おせーなぁ。やられたんじゃないかぁ」


「レイはやられはしない」


「すげー信頼だぁ」


「当たり前だ。レイは・・・」


リンネは北斗七星を見ていた。



13年前。

修道院の最上階。そこに、幼き日のリンネとレイがいた。

その横には、ルフィサと、バシル、ランバル、サーベル、コーテン。少し離れた所にガーディアンが座っている。

オンは夜空の星を見上げ、リンネたちに話し始めた。


「姫! あれが北極星に御座います」


と、そのオンが北極星を指指している。


「北極星? 」


「はい。あれが姫に御座います」


「私が、北極星」


「はい。北極星は、いつでも同じ場所にいます」


「そして、その北極星をいつも見ている、あの7つの星が、北斗七星である。これがそなたたち、7人である」


とオンは、レイたちを指さした。


「北斗七星は北極星を片時も見て居なくてはならぬ。よいかぁ! いつでも姫に忠誠し、姫をお守りする。それがそなたたちの生きる道である。よいなぁ! 」


「はい」


ガーディアンも少し離れた所で聞いていた。



現在のレイは、階段下で身を隠している。兵たちが行き来しており、なかなか出る事ができない。


「くそぉ! もう少しで出口なんだけど、表から逃げるべきか、裏から逃げるか・・・」


エイネンは考えていた。そして決心して話した。


「レイ! 」


「はい」


「私が囮になろう。その間に裏口が逃げるんだぁ」


「何を言っているのですか! そんな事できません」


「どうせ、私は城を枕に散る身であったのだ。だから、ここを抜けだし、早くリンネ姫の元に向かいなされ」


「そんな事はできません、これもリンネ姫の命でございますから」


「そなたがすべき事は、私を助ける事ではない。リンネ姫をお守りし、王都ルーレンパレスにお帰しする事である。こんなとこで、私にかまっている場合ではない」


と言って、相手の兵に飛び掛かった。


「今のうちじゃあ! レイ! 」


エイネンは相手の兵を抑え、レイに裏口から逃げるように言っている。


「しかし・・・」


「早くしろぉ! 」


レイは迷いながら、裏口に行こうとした。しかし、エイネンの所には、たくさんの兵が集まってくる。レイは一緒に戦う事にした。


「うおおおお」


「バカ者! 」


ズサ 


「うおー」


バタン


ズサ


「うおー」


バタン


次々と兵が弓に撃たれて倒れていく。


レイは弓が撃ち込まれる、上の天窓を見た。

そこにはなんと、ガーディアンがいた。


「ガーディアン! 」


「そなた、なぜ戻ってきた! 皆と逃げろと言ったはずじゃあ」


とエイネンはガーディアンに叫んでいる。


「とにかく、レイ! ここから逃げれる。早くしろ! エイネン殿もお急ぎ下さい」


そう言って、ガーディアンは下に飛び降り、裏道に案内した。


しかし兵は襲ってくる。

ガーディアンは弓を入り、レイは短剣で斬りつける。エイネンも剣で応戦する。


「こっちだぁ! 」


ガーディアンはお城の隠れ道に案内した。

そこから抜けると、城の裏から山の方に抜けた。そこはリンネがいる所だ。


「待て! ガーディアン。リンネ姫がおられる」


「リンネ姫が! 」


レイたちはリンネの元に戻った。


「あれ、女男じゃねーか。おーい! 」


と遠くにレイたちを見つけ、ライファは呼んだ。リンネにはエイネンを見つけ、一安心した。


「エイネン! 」


「これはリンネ姫。よくぞご無事で。エイネンはこれほどうれしい事は御座いません。ううううう」


エイネンはリンネの顔見るなり泣き始めた。


「エイネン・・・」


「年をとると、涙もろくなるものです」


エイネンはリンネの教育係でもあった。要するにじいやというものだ。ルドの信頼も厚い人間であった。しかしいつしかアルツィネへの信頼が強くなっていった。それがこの事態を産んでいったのである。


「リンネ姫」


「ガーディアン。そなたもよう生きておった」


「はい。ありがとうございます。近くに、隠れ家があります。そこに80人ぐらいの兵がいます。まずはそちらへ」


「あんなにいた兵も80人ぐらいになってしまうとは・・・・」


エイネンは嘆いていた。戦局を変える事ができなかった為だ。ここで踏ん張り、再起を図りたかったのだ。



「リンネ姫! 」


隠れ家には痛んだ兵が80人いた。


「皆、無事でなによりであった」


「リンネ姫、しかしたくさんの人が死にました。もうここにいるだけしか・・・」


「皆には苦労をかけた。でももう安心するがよい。わたしがネオンに会い、ザクトリアへ逃れれるようにしよう」


「それはありがたく思います。よし、みんな、もうひと踏ん張りだぁ! 」


「おおう! 」


「おいそんな事約束してしまっていいのかよぉ! 」


ライファはリンネに話した。


「確かに、リンネ姫。ネオン様は味方になってくれるかは分かりません」


「なんとかして説得する。そうでなければ、みんな生きていく場がない」


リンネは、一国の主として、希望を見せなくてはならなかった。


その日はそこで休み、明日、ザクトリアに向けて出発した。



第3章アルデンの山賊



「それでは、ザクトリアに向かいましょうか」


「そうだなぁ」


「おい女男! 」


「だれがぁ女男だぁ! 」


「大丈夫なんか、そのネオンって奴は? 」


「リンネ姫から見れば、お従兄にあたられる方だ。妹のルイファン様は、リンネ姫とはとてもお仲がよい方であるから、大丈夫だろう」


「今の情勢の中で、本当に味方になってくれるのかよぉ! 」


「貴様! 黙って聞いていれば、無礼な事を申し寄って! 覚悟しろぉ! 」


と言って短剣を抜き、ライファに切りかかった。


「やめろぉ! 女男! 」


そうレイとライファが追いかけっこしている中で、ガーディアンがレイを呼んだ。


「レイ! 」


「なんだぁ。ガーディアン」


「それで、どうやってザクトリアに向かうつもりだ。ザクトリアに向かうには、アルツィネの直轄領を通らなくてはならないぞぉ」


「アルデン山脈を通るしかない」


「アルデン山脈だとぉ! あの辺りは、山賊がいて、なかなか無事には通れんだろう」


「仕方がない。だから、私と姫と、こいつだけで行こうかと思っている」


こいつとは、ライファの事である。


「3人だけでかぁ! 」


「あー。そのほうが、山賊にも見つかりにくいだろう。そして、ネオン様との話がついたら、兵を率いて、ガルバゴスを取り戻そう」


「そんなの、うまくいくのか? 」


「うまくいく、いかないのではない。うまくやるしかない」


「まーそうだけどよぉ・・・」



リンネとレイとライファはアルデン山脈登山を始めた。


「おい! どれだけ登ればいいんだよぉ? 」


「黙って歩けぇ! 」


レイを先頭に、リンネ、ライファの順で歩いていて、ライファはずっと文句ばかり言っている。レイはイライラしていた。


「なぁ〜この山、標高どれだけあるんだよぉ? なぁ〜女男! 」


「てめぇ! うるせぇんだよぉいちいち! 」


とレイは、大きな声でライファは言った。


「だから何mだよぉ? 」


「4000mぐらいだぁ」


リンネが答えてくれた。


「4000mだぁ! 」


「富士山より高いじゃねーかぁ! 」


「フジサンってなんだぁ? 」


とリンネがライファに聞いた。


「え・・・あっ間違えた。エンゼル山だ」


「え・・・エンザル山は、標高7777mあるはずだが・・」


リンネはあれという感じで答えた。当たり前に知ってる事だから。


「そんなに高いのかよぉ! 」


「おまえ何にも知らねんだなぁ〜」


とレイが言った。


「そ・・・そんな事はねぇ〜よ・・・でぇ、今何mだ? 」


「600mぐらいだぁ」


「ええ! こんなに登ったのに、まだ600mってぇマジかよぉ! 」



「おのれ、エイネンとレイを取り逃がしやがったか 」


「すみません。アント様」


そこは、ガルバゴス城の玉座である。


「申し上げます。コーテン様がご到着に御座います」


そう、伝令兵が言うと、コーテンが入ってきた。細身のスラっとした青年に育っていた。


「父上。今到着いたしました」


「コーテン。ネオン様はいかがであった? 」


「はぁ。ネオン様は・・・・」



すっかり夜となっていた。

アルデン山脈の森で焚火をしている、リンネとレイとライファであった。


「明日は、森林限界点を突破します。とにかく早めに突破しなければ、夜は相当冷えると思われます」


「うむ」


「おい、金目の物を置いていけぇ」


と、そこに山賊が現れた。山賊の1人がリンネの首に剣を突きつけた。


「なんだぁ貴様らぁ! 」


山賊は、10人ぐらいいて、リンネたちは完全に囲まれた。

レイは短剣を抜き、ライファも剣を抜いた。


「てめぇら・・・」


「動くなぁ! 動くとこのお嬢ちゃんを刺し殺すぞぉ! いいのかぁ! 剣を捨てろぉ! 」


「・・・・」


しかし、レイもライファもそんなにビビってはいない。リンネは強いからだ。

リンネはポカンとした顔をしながら話し始めた。


「山賊とは、食うものないのかぁ? 」


「え・・・はぁ! 何を言ってるんだぁお嬢ちゃんよぉ! 殺されたいのかぁ? 」


「だから、こんな山奥では食べるものもないのかと聞いているのだぁ。だからこうやって人を襲うのか? 」


「・・・・く・・・ハハハハハ。いいことを教えてやる。食うものに困っている訳ではない。おまえらが恐れをなしているとこを見て楽しんでいるんだぁ! ハハハハハ。さぁ〜金目の物を置いていけぇ。そうすれば、許す・・・かもしれないよぉー」


と変顔をして、威嚇した。


「なんだあれ・・・」


「スベってやがる」


「ス・・・スベってねーよぉ! 」


とスベったと言われ、山賊は怒っている。


「もういいぃ! このお嬢ちゃんを食べちゃおう。それがいいなぁ」


「食べるものがあるなら、人を襲う必要はないだろう。人を脅すなど、許せぬ罪である」


「はぁーなんだ・・・・」


リンネは手をつかみ、ひねった。


「イテテテテテ」


びっくりして、山賊はリンネから離れた。


「なにするんだぁ! てめぇ〜俺を怒らしてしまったみたいだなぁ。フフフフ」


「おまえ、兄貴は別名、ウルフと言われて恐れられているだぞぉ! もう知らへんでぇい! 」


と取り巻きの1人が言っている。


「何言ってるんだぁあいつ」


「知らねーよ」


とレイとライファがゴミョゴニョ言っていると、そのウルフと言われている山賊が、剣を振りかざし、リンネに襲い掛かった。


カチャーン


と言って、リンネとウルフと言われている山賊が斬り合った。そしてリンネが膝をついた。


「ほれ、言わんこっちゃない。兄貴に逆らうからこうなるんやさかい」


「リンネ姫! 」


ガタン


ウルフと言われている山賊が倒れた。


「兄貴ぃ! 」


「おのれぇ。おまえたちやってしまえ! 」


と言うと、取り巻きの奴らが襲い掛かろうとしたが・・・


「やめろ! 」


と女の人の声が聞こえた。

その声の先には、バンダナをつけた女が立っていた。


「なんだぁ、あの女。めっちゃ強そうな奴じゃねーかぁ」


とライファがレイに言ってるが、レイは何も答えない。


「お頭! 」


と取り巻きの山賊たちがその女に寄っていた。


「兄貴がやられましたぁ! あの女只者ではありません! 」


と言っていると、


バチン


「イテェ! 」


「無礼物! パグ! 」


と言って、バンダナの女は、その取り巻きの山賊を殴った。


「えええ! 」


とその取り巻きの山賊であるパグがびっくりしていると、バンダナの女はリンネに膝まづいた。


「すみません。リンネ姫。部下が無礼な行動をとりまして。こちら、姫の顔を知らないものですから、どうかお許しくださいますよう・・・」


「バシル? やっぱりバシルかぁ! 」


とリンネは笑顔で山賊の頭、バシルに近づいた。


「誰? 」


とライファがレイに聞くと、それを無視して、バシルに近寄った。


「バシルかぁおまえ! 」


「久しぶりだなぁ! レイ! 」


「なんだぁ? 」


とライファが驚いてる横で、ウルフと言われている山賊も起き上がってびっくりしている。


「バシル! そなた、行方不明になっていたと聞いていたが・・・」


「はい。色々ありまして、山賊になりまして」


「でも、おまえ、お頭って呼ばれてなかったかぁ・・・」


とレイはバシルの肩を抱いて喜びながら話している。


「色々とあってなぁ・・・」


「そうか、バシル。元気で何よりだぁ」


「はい。こんな形で、リンネ姫に会えるとは。そういえば、反乱があって、ルド王が亡くなられた聞きましたが。すみません。駆けつけられず・・・」


「よいそんな事は。バシルに会えてうれしいぞぉ」



13年前。

リンネたちは馬の騎乗訓練を行って、平野を走っていた。


ダダダダダダダダダ


「よいか、馬は、戦において、そうとう必要な戦術である。馬が戦を分けるとも言っていい。人馬一体。このように隊列を組んで、どれだけ早く攻め込めるかが、戦術となる。その為、猛スピードでも安定的に乗れなくてはならん。ランバル! 」


「え・・・はい」


ランバルはフラフラしていた。


「このスピードでフラフラしていては、奇襲などの戦略にはついていけんぞぉ」


「はい・・・・」


「バシル。うずうずしているようだなぁ! 行ってもよいぞぉ! 」


「いいですかぁ? はいぃ」


パン パン


バシルは馬を猛スピードで走らせた。


「私も」


「俺もだ」


とレイやサーベルやルフィサ、ガーディアンもついて行った。


「姫を置いていくとは、家臣としていかがなものかぁ」


とオンが言っているが、リンネはというと


「私も、追いつく! 」


とリンネも馬を飛ばして行った。


バシルのスピードに、レイやサーベル、ルフィサ、ガーディアンが猛追する。

しかし、バシルの速さにはなかなかついていけない。


「くそぉ! 待てぇ! バシル! 」


「やなこったなぁ! 」



リンネたちは、バシルの砦にいた。


「しかし、姫様と知らず大変失礼を致しました」


とウルフと言われていた山賊がリンネに謝っている。


ドカーン


「イテェ! すいませんお頭! 」


「おまえ! 姫に剣を向けるとはなんたる様だぁ! ワワチ! 」


「キャンキャン すいません」


とバシルに殴られて、子犬のように泣いている。ウルフと言われた山賊が。


「もうよい。バシル。私も気絶させるように剣の竿で叩いたから。すまなかった」


「いえ、申し訳ありません」


「しかし、バシル! 罪もない人からお金を巻き上げているとは許しがたいぞぉ」


「お金を巻き上げている・・・」


ワワチはしまったという顔で、そそくさと逃げようとしている。


「ワワチぃ! 」


とバシルが叫ぶと、


「キャンキャン! 」


と言って、バシルから逃げていった。


「すみません」


「そういえば、バシルのお父さんって、山賊だったと言っていたなぁ? 」


「よく覚えておられますねぇリンネ姫」


「忘れはせん。みんなのうわさになっておったが、バシルはなかなか話そうとしなかったからなぁ〜」


「グライト家の人間であった父は、家出して山賊になったのですから・・・」



グライト家は、由緒ある騎馬の一族である。

古代は、エンゼル山の北にある、アルグス山脈にて、狩猟を行っていた民族であった。山間の急斜面でも馬を扱える民族であった。

その後、食料を求め、アルグス山脈の下まで降りて来た。しかし、その辺りの地にはオルモン家がいた為、戦となっていた。類稀なる馬の扱いで、翻弄されたオルモン家を倒して、ナビル平野まで出て来たのである。その後、バルト家に忠誠し、ロイドの代からバルトからルーグラン家に従うようになっていった。

この大陸全土に響く騎馬を扱い、無敵の騎馬隊と恐れられている。

しかし、バシルの父ファルコンは、グライト家から家出したのである。優秀な兄である、現将軍であるカイデンと比べられ、小さい頃から不遇な扱いを受けて来た。それで16の時に家出した。山に入り、馬を扱って山賊たちを制圧していったのである。

ファルコンは、山から下りて来ては村を襲った事もある。その時にあった女を盗み、子を作らせた。その子がバシルなのである。だから両親には愛はなかった。父は他にも女性がいたのである。バシルは父が嫌いだった。

母は、育った村は父に滅ぼされ、親も父に殺されて帰る場所はない。だから母はずっと我慢していた。それを見たバシルはいつか母をここから救いたかった。だから山賊たちから学べるものは学んだ。特に馬術を身に着けていった。

8歳になったバシルは、母を馬に乗せて逃げた。しかし追いかけてくる父の弓に母は撃たれて死んだ。バシルは自分を責めた。そんな事をしなければ母は死ななかったのに。バシルはガルバゴスに下りて、盗みをしながら暮らしていた。そんなある時、兵に捕まる。しかし、バシルは簡単に捕まらなかった。盗みをしている子供として、指名手配されるも、逃げ切っていた。その力を代われ、エイネンは自分の元において育てる事にした。

そしてある日、リンネの家臣団のメンバーを探していたルドとオンに紹介し、オンの元で学ぶことになる。


そんなある日の事だった。

サーベルはうわさを聞いてしまう。

修道院にたまに来ている兵士たちの話を聞いてしまったのだ。


「あのバシルって子は、カイデン将軍の姪っ子らしいぞ」


「えーうそつけ! 」


「それが間違いないらしい。カイデン将軍の弟の娘らしいぞぉ」


「カイデン将軍の弟って、家出して山賊になったていう」


「あーそうらしいぜぇ」


サーベルはそれをみんなに話してしまった。


ある日、バシルが部屋に入って行くと、みんなが話している。

リンネは一番前の上座に座っていた。

バシルは部屋に入った瞬間に何かを感じ、何も話さず席に着いた。

その時、ルフィサがバシルにそのことを話し始めた。


「おまえ、カイデン将軍の姪なのかぁ? 」


とルフィサはバシルに聞き始めた。


「おいルフィサ!」


レイが止めるのも聞かず、聞いた。


「いいじゃねーかぁ別に。どうなんだよ?」


「・・・・・」


バシルは何も話さない。


「おい! 聞いてるのかよぉ! 」


「やめよぉ! 」


それをリンネが止めた。


「はぁ」


「話したくない事もあるだろう。だれの姪かなんか、今の私たちには関係ない。一緒に学ぶものでしかない」


「はぁ。すみません」


バシルはこの時、リンネの広い心に感動した。これ以後、バシルがリンネに忠誠を誓っていく。



「あの時、私は一生、リンネ姫について行こうと思いました」


と、現在のバシルの砦で話している。


「そんなぁ〜バシルにバシっと言われちゃうと! 」


ちょっとしーんとなった。


「おいスベ・・もごもご・」


スベってるとライファが言いかけたが、レイに口を抑えられた。


「おまえ、いらん事言うなぁ! 国がひっくり返るぞぉ! 」


とレイは、リンネに聞こえないようライファに言った。



次の日。

リンネたちは、ザクトリアを目指して出発した。

バシルたちも、道案内及び、援護を引き受けてくれた。

山賊たちの馬によって、山道を駆け上がっていく。


「これは楽だぜぇ・・・てぇ。あぶねぇー」


とライファが馬から落ちそうになった。頭が下になった時、下には何もなかった。

落ちたら5.600mは落ちていく。


「うわー! 」


「よっと」


と、ワワチに助けられた。


「あぶねぇから、しっかり捕まってろぉ! 」


落ちたら、間違いなく死ぬだろう。そんなところを馬で駆け上がり進んでいる。

山賊たちはさすがだ。それをいとも簡単に行っている。


リンネたちは、ネオンの所領地に入った。

バシルとは、そこで別れた。山賊が一緒では警戒されると考えたからだ。

ただ、バシルはリンネの命があれば、いつでも駆けつけると約束した。


「リンネ姫。いつでもお呼びください。地獄の果てでもバシルは参ります」


「ありがとうバシル」


「じゃなぁ! ワワチ! 」


「おう! ライファ、元気でなぁ」


バシルは部下を連れて、山へと帰っていた。



「頼もう! 」


レイはザクトリア城の閉まった門の前で叫んでいる。


「でっけー門だなぁ」


とライファが呟いたりしている間待つも、誰も出てこない。


「うん? 頼もう! 」


しかし反応がない。


「おのれぇ、なんと無礼な対応。 聞いているのかぁ! 誰か出てこい! 」


「声でけぇーよ。女男」


とライファはあまりにもデカイ声のレイに耳を抑え、言っている。


「だれがぁ女男だぁ! 今日という今日は殺してやる! 」


と言ってレイは短剣を抜き、ライファを追い回している。


「あぶねぇ! 冗談だろうがよぉ! 」


「はい・・・」


と追いかけっこをしていると、中から、やる気がなさそうな、兵が出てきた。


「あー・・・ううん。ネオン様にお目どり願いたい」


レイは気を取り直し、咳払いをしながら答えた。


「なんで・・・」


レイは貴様、ふざけているのかと思いながらも、こらえて話した。


「リンネ姫が来ていると伝えてくれるかぁ」


「リンネ姫・・・・うそー」


レイはイライラしている。


「・・・うそではないぃ! この無礼者ぉ! 早く通さんかぁ! 」


とレイが叫ぶと、兵は逃げるように走って行った。


「ふふぁい! ・・・」


「どうなってんだぁ! 」



とにかく、リンネたちはネオンに会うために、ある一室通された。


「どうぞ、リンネ姫。こちらにお座りください」


リンネ姫は上座に座らされた。


そこに、ネオンと妹のルイファンが来た。

ルイファンは久しぶりにリンネに会えて喜んで走って来た。


「リンネぇ! 」


「ルイファン! 」


2人は抱き合って再会を喜び合った。


「ルイファン無礼であろう。幼馴染と言え、姫なのだぞぉ」


と言いながら、ネオンは下座に座った。


「これはリンネ姫。お久しぶりですねぇ」


「ネオン。お元気でしたか」


「あー元気ですよ」


「ネオンにお願いしたいことがある。アルツイネは人々を苦しめており、奴隷化したり、今も罪のない人々を痛めつけているといます。どうか、私に力を貸してほしいぃ! 」


「お兄ちゃん。すぐに協力してぇ! 」


とルイファンが言うも、ネオンは口を抑え、リンネを見つめていた。


「そうですねぇ・・・」


「頼む! ネオン! 」


とリンネはネオンに頭を下げた。

その姿を見たネオンは、何かを上に立ったような気分にもなった。


「・・・も・・・もちろん協力しましょう」


「ありがとうネオン」


レイはライファも後ろで喜び、リンネも喜んだ。これで民衆の生きる道が見えたからである。


「お疲れになられたでしょう。ルイファン、リンネ姫を部屋にご案内しなさい」


「うん分かった。リンネ行こう」


「うん」


ルイファンは喜んでリンネと手をつないでいった。レイとライファもそれについて行こうとした。しかし・・・


「あー。君たちは別の部屋を用意してある。おい! 」


「はぁ」


リンネと離そうとしていることで、レイは不信を覚えた。


「ネオン様。大丈夫です。私どもは、リンネ姫の部屋の外の廊下で十分です」


「何を言っているですか。客人にそのような事はできませんよ。おい! 連れていけ」


ネオンの家来は、レイとライファの肩を押し、移動させた。



リンネは王宮の中へ行き、上へと案内された。しかしレイとライファは王宮の外側の地下へと案内された。そこは、薄暗い場所だった。


「なんだぁここは」


「おいどこに連れて行く気だよ・・・」


地下へと連れて行かれる。それは囚人が連れて行かれるかのようだった。レイは怪しく思い、兵士に問いただした。


「おい! どこへ連れて行くつもりだ! 」


「それは・・・・」


バターン

ヒュー


「うわー」


いきなり地面が開き、下へと落ちた。


「イテテテテ」


「おいここどこだよ! 」


2人が右の上を見ると、そこにある小窓からネオンが顔を出した。


「これは、久しぶりのメインイベントだぁ」


ネオンは薄ら笑いをうかべている。


「おい! てめぇ! どういうつもりだぁ! 」


ライファはネオンに叫んだ。


「私のペットが、腹を空かしていてねぇ〜」


「ペット? 」


「おいライファ! これはまずい。リンネ姫が心配だぁ! 早く出るぞぉ! 」


「出るってどうやって!? 」


「あそこだろう」


とレイが言う方向には、鉄格子があり、その先は通路になっていた。


そしてそこが開いた。


「開いたぞぉ! 行くぞ女男! 」


「待てぇ! 」


ライファが行こうとする、レイが止めた。


「なんかこっちに来る・・・」


「ええ! 」


その開いた通路の先から、ゆっくり何かが近づいてくる。


ガチャン ガチャン ガチャン


「なんだぁ? 」


ガーン


何か大きな手が通路の入り口の角を掴んだ。


そして、しゃんがんで出て来て、広い所に出ると、真っ直ぐ立ち上がった。


「・・・なんだあれ・・・人間かよ・・・」


全身鉄の鎧を着た男は、3m近くあった。仮面もかぶっているため顔も見えない。

持っている斧は、尋常じゃないくらい大きい。


「うおおおおおおお」


獣のような雄たけびを上げた。


「なんてぇでけー声だよぉ! 」


その声は大きく、地響きが起こる程で、レイとライファは耳を抑えた。


そして入り口は、また塞がれた。


「メインイベント開催だぁ。おまえたちが、私のペットを倒したなら、ここを通してやろう」


「なんだとぉ! 」


「貴様ぁ! リンネ姫はぁ! 」


「今は、妹と遊んでいるだろう。しかし、もう少ししたら殺すように部下に指示をだしている。急がないと姫の命はないぞぉ! 」


「貴様ぁ! 」


「うおおおおおお」


ガシャガシャガシャ


その怪物が、レイとライファめがけて走って来た。


「来るぞぉ! 女男! 」


怪物は斧をレイめがけてぶん回した。


ブーン


しかし、レイは飛び上がり、かわした。


その後も何度もぶん回すが、レイは素早くやけた。

しかし、よけているだけでは勝てない。しかしレイはよけることしかできなかった。


「おい! 攻撃しろよぉ! 」


デカいくせに早い。もしかしてこいつ・・・

とレイは考えていると、怪物は止まった。


「なんだぁ? 」


とライファが驚いていると、ライファを狙った。


ガシャンガシャン


「うわー俺かよぉ! 」


ライファは剣を振り回した。


ガコーン


剣が折れた。


ヒュルヒュルヒュル

ガチャーン


「マジかよ! 剣が折れちまった! 」


「おまえはあほかぁ! その鎧は刃を通さないんだよぉ! 」


だからこそ、レイは攻撃をしなかった。


「こいつは、鋼鉄の騎士だ! 」


「そんなの無敵じゃねーかよ! 」


「もういい! おまえは引っ込んでろぉ! うりゃー! 」


と言って、レイは短剣を持って、鋼鉄の騎士めがけて走り出した。


「あほはおまえだろうぉ! そんな事したって、剣は通じねーよぉ! 」


しかしレイは、鋼鉄の騎士の目の間で、消えた。


「うん? うわぁー! 」


ホラーみたいなシーンだった。


いきなり、ライファの足元に頭だけ飛んできたから、ライファはびっくりした。

鋼鉄の騎士は首がない状態で、立ったまま、手で首から上を確認し、ない事が分かると倒れた。


ガゴーン


「お・・・おおおう! やるじゃねーかぉ! 」


レイは鋼鉄の騎士の後ろ側に立っていた。

レイは、鋼鉄の騎士の真正面に来ると、すぐさま右にそれ、後ろに回り、鎧と仮面の間の部分を斬ったのである。

鋼鉄の騎士は視界が狭い。だから近くにくると、死角が存在するのである。レイはそこをついたのだ。


その時、鉄格子が開いた。


「おい! 開いたぞぉ! 急げ! 」


と言って、レイとライファが走って行き、通路に出た。


しかしそこにはたくさんの奴隷のような戦士がいた。


「なんだぁこいつら」


「ここは、ネオンの趣味でやっている、闘技場って所だろう。だから、そこに出る選手たちなんだろう」


「戦うのかぁ? 」


「構うなぁ! いくぞぉ! 」


レイとライファは選手たちの脇を越えて、リンネの元に急いだ。



その頃、リンネは、ルイファンと話していた。

しかし、先ほどから、様子がおかしい、ルイファンをリンネは気遣った。


「ルイファン、さっきからどうしたの? なんか変だよ」


ルイファンはリンネの手をとり、バルコニーにでた。


「ごめん! リンネ逃げてぇ! 」


「どういう事? 」


「もうすぐ、兵士たちが、リンネを殺しに来る! 兄は、アルツイネと通じている! リンネの首を持ってこれば、ルーレンの東方半分をやると言われているのぉ! だから早く逃げて! 」


と言って、ルイファンはロープを下につるし、バルコニーに縛り付けた。


「急いでぇ! 早く! 」


言われるがまま、リンネはロープで下に降りた。


部屋には兵士たちが来た。

ルイファンはバルコニーの窓を閉め、カーテンを閉めていた。


「ルイファン様。リンネ姫は? 」


「知らない。逃げちゃった! 」


そう言われると兵士たちは、来た方に走って戻り、リンネを探し始めた。


「リンネ姫を探せぇ! 」


リンネは、バルコニーからロープを下りると、そこは、中庭だった。


城の構造としては、地下が兵の宿舎。1、2階が、兵などの人たちが働く場所となり、玉座も2階にある。

その上は、ネオンたち、王家の人間の生活スペースとなり、今、リンネがいる中庭は、3階にあたる。ルイファンの部屋は5階だ。


リンネは中庭から、建物の中に入ろうとするが、その入った廊下には兵士たちがリンネを探している。

リンネは下に降りれるか見るが、さすがに飛び降りるには無理がある。



その頃、レイとライファは、城の1階まで来ていた。


「リンネ姫が逃げたぞぉ! 探せぇ! 」


と言いながら、兵士たちは城中を探索していた。


「リンネ姫が逃げたと。おい! 急いで、姫を探すぞぉ! 」


「おうぉ! 」


「私は、城の西側から上に行く。おまえは東から行け」


「分かった」



レイとライファは別れて、リンネを探した。


レイは柱を伝って上へと上がって言っている。


その下を兵士たちは探していた。



ライファは階段から、たくさん兵士が下りてくるため、なかなか上って行けない。


「どんだけ来るんだよぉ! 」


「貴様ぁ! そこで何をやっている! 」


ライファは兵士に見つかった。


「やべぇ! 」


と剣を抜いて、倒した。


「ここにいたらま・・・・そうだぁ」



リンネは中庭から動けないでいた。


「戦うしいかないのか・・・」


下行くためには、建物の中に入り、階段を下りたなくてはならない。

しかし、たくさんの兵士が行き来している為、身動きが取れない。



レイは、吹抜けを抜けて、2階に上がっていた。

しかし、2階は天井が低く、1階のように上をつたってはいけない。

その為、レイは見つからないように廊下を歩いていた。


「いたかぁ? 」


「まだいません」


「あっちも見てこい! 」


「はぁ」


進もうとした先に兵士がいた為、すぐさま身を隠した。

そして、いなくなった為、先を進んだ。



2階の廊下を歩いている兵士がいた。

それは、ライファである。

先ほど、倒した兵士の鎧を来たのである。


「おい! そこの奴! 」


後ろからライファは呼ばれた。

そこには上官そうな兵士がいた。


「リンネ姫は、見つかったか? 」


「・・・い・・・いえ、まだでございます」


「うん? 」


その兵士を近づいて、ライファの顔をじっと見てきた。


「見かけない顔だなぁ。新人かぁ? 」


「は・・・はい。そうであります」


「そうか、どこの班だぁ? 」


「え・・・どこの・・・班・・・・」


「どうしたぁ? どこの班だぁ! 」


しかし答えられない。班長の名前なんて知らないし、そもそも班長の名前を言うのが正しいかも分からない。西入り口班とかいうかもしれないし。とにかくまずい状況だ。


「貴様ぁ! 答えられないのか。もう一度聞く。どこの班だぁ! 」


どうしたらいい。戦うしかないのかぁ。


「おい! 貴様もしかして! 」


ライファは剣を抜こうと腰元に手をそえ、斬りかかろうとした。


「リンネ姫が、見つかったぞぉ! 」


「何! 」


「リンネ姫は、地下にいたぞぉ! 」


「おい! 行くぞぉ! 」


と言って兵士は走っていた。

危なかった。


「てぇ、あいつ見つかったのかよぉ! やばいじゃねーかぁ! 」


と言って、ライファも地下に急ごうとした。しかし


「おい! ライファ! 」


「え・・・」


呼ばれる声がして、後ろを見たら、そこにレイがいた。


「あ、女男! 」


「だからぁ! そろそろレイと呼べぇ! 」


バコン


「イテェ」


レイはライファを殴った。


「おい! そんな事より、リンネの野郎見つかったらしいぞぉ! 」


バコン


「イテェ」


レイはライファを殴った。


「無礼者! 姫を付けろ姫を! 」


ライファは殴られた頭を押さえている。


「地下にいると、流言を流したのは私だ。おまえが捕まりそうだったからだぁ」


「あーわりいぃ・・・でも本当に地下にいたら・・・」


「恐らくないだろう。ここには前、リンネ姫がルイファン様に会いたいと言われ、ついてきた時、来たから知っている。おそらく、ここの5階だぁ」


「そうなのかよ」



その頃、リンネは、戦おうと考えていた。しかし


「おい! リンネ姫は地下にいるそうだぁ! 」


「ホントか! 地下にいくぞぉ! 」


と兵士たちが、レイの流言を信じて、みんな地下に向かった。その為リンネの回りには兵士がいなくなった。


「どうしたんだぁ。私は、ここにいるのに・・・」


そんな、青〇テ〇マが流れそうなことを言っているが、兵士がいなくなったため、リンネは階段の方に向かった。



レイとライファは、身を隠し、兵士がいなくなった所で、上へと向かった。


「よし行くかぁ」


そして歩いていると、


「あれ・・・ライファ・・・」


「うん・・・おおお! 」


「リンネ姫! 」


と簡単に会えた。


「よくぞご無事でぇ」


「大丈夫じゃ。特にどこも痛めてはおらん。とにかく、ここはもうダメだぁ。みんなには悪いが、他をあたらねばならん」


「そうなりますねぇ・・・」


「あれ・・・」


「うん・・・」


そこに、兵士がいた。兵士は見るなり、大きな声をだそうとした。


「いた・・・」


シュン

ズサ


「ううう」


バタン


兵士が声をだそうとした瞬間、レイが素早く動き、兵士を倒した。


「話は後にして、早く行きましょう」


「であるなぁ」


「でも、どうする? 兵士がこんなにうじゃうじゃいたら」


そうライファが言っていると、レイはうなづき言った。


「私に考えがある」



「よっと! 」


キキキキ


と、レイは3階の中庭から、木に飛び移っている。

枝が湾曲して折れないか心配だが、レイは捕まって、左手をだした。


「リンネ姫。私が受け止めますから」


「本当に、大丈夫なのか」


とライファが疑っていた。


「では、いくぞぉ。レイ」


「はい」


キキキキキ


リンネが飛び移り、レイが受け止めた。

レイとリンネと木の太い部分まで移動した。


「おい! おまえも早く来い! 」


「本当に大丈夫かよ。じゃあいくぞ・・・」


しかし、ライファは飛ばない。


「おい! 何しているだぁ! 早くしろぉ! 兵士が来るだろう」


「分かってるよ・・・今行くから・・・」


しかし、ライファは飛ばない。


「おまえ、もしかして、ビビってんのかぁ」


「ち・・・違うわぁ! 」


「ククククク」


リンネは笑っている。


「てめぇも笑ってんじゃねぇー」


「だったら、早く来い! 」


「本当に大丈夫なのか・・・よしいくぞぉ! 」


ライファが飛び移った、そしたら枝が折れた。


ボキ


「あ、折れた」


とリンネとレイが声を揃えて言った。


ドカーン


「イテェ! だから嫌だったんだよ」


「おい! 大丈夫かぁ! 」


「大丈夫じゃねー・・・死ぬ・・・」




そんなこんなで、リンネたちは城外まで出て来た。


「どうするよぉこれから」


「ばかやろう! おまえ空気を読め。どれだけ姫が落ち込んでいるか」


ライファのKYな言動にレイはリンネに聞こえないように止めた。


「リンネ姫。大丈夫です。まだ案はありますから」


とレイは、励ますように言った。しかし、そんな案などなかった。


「では、どうすればよいレイ」


「え・・・それは・・・」


「どうするんだよ。なんかあるんだろう」


「てめぇ! 」


とレイはライファを睨んだ。


「そういえば、ここより南に行くと、港湾都市アルタイがあります」


「アルタイ。ルフィサか」



アルタイ城


「ルフィサ様。リンネ姫が、ザクトリアから逃亡されたの事です。もしかすると、ここアルタイに来るかもしれません。さすれば、首をアルツイネ王に差し出すことが宜しいかと」


と、ルフィサの側近である、ウルバが言っている。


ウルバは、ルフィサの父であるセドル将軍の時から仕えている。その為、口うるさい存在である。

2年前にセドルが急死し、1人娘であったルフィサが跡を継いだ。ルフィサの力を認めた、ルド王は将軍の職と港湾都市アルタイと、そのアルタイを先端とした所領であるグリブタイ半島を相続する事を許されたのである。

であれば、ルド王への恩恵もある。しかもルフィサはリンネに忠誠を誓っていた。しかし、ウルバの助言もあり、家を守る為に、今はアルツイネに従うしかなかったのだ。いつ何時、裏切りがあるかも分からない世の中、2万の兵もいつまで従ってくれるか分からない。若い女の将軍は、日々、苦労を重ねていた。


「リンネ姫、こっちに来ないでくれ」


「ルフィサ様、何を言ってるですかぁ! 今、リンネ姫の首を上げる事は、我がオーラル家にとって必要不可欠であります。この首を、アルツイネ王に差し出せば、その信用も得られましょう。ルフィサ様にはまだ、手柄がありません。だから、その手柄をたてねばなりません」


「分かっておる」


「分かっているのなら良いのですが。とにかく、兵に指示をだし、グリブタイ半島に侵入したら、すぐさまリンネ姫をとらえるように指示をだしましょう。 誰かいるかぁ! 」


「はぁ」


「国境近くに兵を配置しろぉ! リンネ姫を見かけしだい捕らえるのだ」


こんな感じである。ルフィサの指示がなくとも、勝手にウルバが進めていく状態である。でもルフィサはウルバに強くは言えないのである。まだ兵たちにはルフィサを不安がっているからだ。ウルバが支えているから、信用があるのである。



「すごい、兵の数だ」


「これでは、容易に近づけない」


リンネたちは、腰をかがめて、様子を伺っていた。

国境近くは、ウルバの指示で、たくさんの兵が配置されている。


「どうするんだよ。これじゃあ、ねずみ1匹入れないぞぉ」


「たまには、おまえも考えろぉ! このバカがぁ! 」


「誰がバカだとぉ! 」


「バカにバカと言って、何が悪い! 」


「なんだとぉ! 女男! 」


「だから、女男ではないぃ! 」


といつものように、レイとライファは言い合いをしている。


「レイ」


「はぁ」


「アルタイには、海から行けなかったか」


「行けます。近くだと、モルド岬に行けば船があると思われます」


「よし。ではそこから向かおう」


「しかし! 」


「なんだぁ? 」


「エルゲ海は、海賊も多くいる為、危険です。最近は海賊に襲われる事故が多発しております。アルツイネが、海上警備兵を、軍隊に回しているのが原因です」


「また、おまえらの家臣団とかじゃないの。その海賊王もさぁ〜」


「海賊王に俺はなるぅ! 」


・・・・・・


「またスベり・・・うぐうぐ・・・・」


リンネがスベったとライファが言いそうになったので、レイが口をふさいだ。


「ハハハハハハ。笑わせないでくださいよ姫! ハハハハ」


とレイが嘘笑いをしてフォロした。


「おまえ、絶対にスベッたって言うなよ。国がひっくり返るぞ」


とレイはリンネに聞こえないように言った。



リンネたちは、モルド岬から、船に乗ってアルタイに向かった。


エルゲ海は、広大な海であり、たくさんの魚が泳いでいる。

イルカの大群が船に横を泳いでいる。


「すげぇ! 」


船の動力は、風と人力である。海の男たちがたくさん働いている。

しかし、最近は奴隷だ。アルツイネがそうしている。


と船を走らしていると、3隻の船に囲まれた。

カンカンとかき鳴らし、ヒューヒューと騒いでる。


「おいなんだあれぇ! 」


「あれは海賊だぁ。リンネ姫。どうか、船内へ」


「必要ない」


レイが気遣うもリンネはをそれをいなし、海賊を見つめた。


「皆さん! 船内にお逃げください! 戦えるものは、どうか手をお貸しください」


「レイ、ライファ! 戦うぞぉ! 」


「おう! 」


「はぁ! 船長! どうか皆さんを、船内へと逃がしてください。私たちが海賊と戦います」


とレイが船長に言うと、船長はありがたく従った。


「ありがとう。あなたたちは? 」


「私たちは、兵士です」


「そうでしたかぁ」


海賊の船は、完全に我々の船を封鎖した。

海賊たちはカンカンとかき鳴らし、ロープを飛ばして、この船にひかっけた。

たくさん海賊がロープを伝って襲ってくる。


「レイ、ライファ! ロープを斬れ! 」


「はぁ! 」


「おう! 」


なんとかロープを斬る。それを手伝ってくる乗組員もいた。

しかし、海上警備兵は、軍隊にとられているので、海賊に対抗できるだけの勢力はない。


「怖いよ」


子供が泣いていた。


「大丈夫。私たちが守ってあげるかねぇ」


と、リンネは子供を抱きしめた。


「おい! どんどんと来るぞぉ! 」


海賊たちは次か次へと襲って来た。

海賊側は500人ぐらいはいた。こっちが戦えるのは10人ぐらいだった。


レイは素早く動き、何人か斬っていく。


ライファも何人かに囲まれながら、次々と倒していた。


リンネは2当流を屈指し、何人も相手にしている。


しかし、キリがない。


「おい! キリがねーよぉ! 」


「うるせぇ! 黙って戦え! 」


その時、リンネの横を、5歳ぐらいの小さな女の子が横切った。

海賊が攻撃してくるのに巻き込まれそうなったので、リンネは反転して、その子の盾になった。


ズサ


それによって、海賊の剣はリンネ右腕を斬りつけた。

リンネは血を流している。


それを見たレイは、リンネの方に向かって来た。


「リンネ姫! 貴様ぁ! 」


レイはリンネ姫を斬った海賊を斬って倒した。


「リンネ姫大丈夫ですかぁ! これはひどい・・・」


「大丈夫だった? 」


リンネは自分のケガより、女の子を気遣った。


それにより、海賊たちが大人数ではリンネとレイに襲い掛かった。


カキーン


リンネの剣が飛ばされた。


「リンネ姫! 」


レイが他と戦っていると、リンネは女の子を気遣っている為、海賊にやられそうになった。


ズサ


「おい! 大丈夫かぁ! 」


ライファが助けた。


「すまぬ、ライファ! 」


「おい! 女男! どうにかしろぉ! これじゃあ、時間の問題だぞぉ! 」


「てめぇ! 女男じゃねーだんよぉ! そろそろ名前で呼べぇ! 」


「今は、そんな事言ってる場合じゃねーだろう。なんか、打開策考えろよぉ! 」


と海賊と戦いながら、2人は言い合いをしていた。


「うるせぇ! たまにはてめぇで考えろぉ! 」


「そんな無茶言うんじゃねーよ! 」


「よい! 我に考えがある」


とリンネは右腕を抑えながら言った。


「海賊の者よく聞け! 我は、リンネ・フランテ・ルーグランである! すぐさま、戦いをやめよぉ! 」


「リンネ・・・リンネ姫だと・・・・ おまえたちやめよぉ! 」


海賊のリーダーであるフッカーが、戦闘を止めた。


「リンネ姫、何と言う事をぉ! 」


とレイが心配した。姫の名前をだせば、何されるか分からない。


「大丈夫だぁ」


「おまえが、リンネ姫だとぉ! 」


フッカーがリンネに近づき、顔を覗き込んだ。


「こんな、ガキんちょだったのかぁ! 」


「貴様無礼者ぉ! リンネ姫は20歳だぁ! 」


「20歳? 14歳ぐらいじゃねーかぁ! 」


「貴様ぁ! 」


「やめよぉ! レイ! 」


「はぁ」


「我を生きたまま、アルツイネに差し出せば、そなたたちも、海賊ではなく、立派な兵士となれよう。この海が正式に自分の者にしたくはないかぁ。ただし、この船にいる人たちを見逃せばだ。そうでない限り、貴様の首を頂く! 」


「なるほど・・・・おい! 姫をお連れしろぉ! 」


そう言うと、リンネの手を縛り、連れて行った。

リンネは目でレイにサインを送った。


「待てぇ! てめぇ・・・・・・ってなんだよぉ! 」


ライファがリンネを助けようとしたら、レイが回収した。


「バカかおまえはぁ! 」


「連れてかれるだろうぉ! 」


「貴様は、リンネ姫のお考えが理解できんのかぁ! 」


「考え・・・」


「姫は生きたまま、アルツイネに差し出せばとおっしゃられた」


「それが、どうした」


「お前はバカぁ! これで、奴らはリンネ姫を殺す事はできない」


「あーそう言う事かぁ」


「私は、隠れて、奴らについて行き、隙をみて、リンネ姫をお助けする。そなたは、先にアルタイに行って、地盤を固めておけ」


「地盤を固めるって何をすればいいんだぁ? 」


「おめーは、いちいち言わねーと分かんねーかぁ! どこまでバカなんだよぉ。まずは、アルタイの中で潜伏できる場所を探す事と、ルフィサが味方になってくれるのか、状況はどうかという情報を掴むんだよ。分かったかぁ! 」


「おう! 任せとけ! 」


「ホントに」


リンネ姫は海賊の船に乗った。

レイは、海賊にバレない様に海賊の船に飛び移った。


そして、船は無事にアルタイに向けて、走り出したのである。



海賊の船の中では、リンネは縛られ、海賊の頭である、いわゆる海賊王のフッカーの横にいた。

海賊の女性がリンネの傷を手当てしてくれた。


「すまない。ありがとう」


「え・・・はい」

傷の手当てをした海賊はびっくりしてた。まさかお礼を言われるとは。彼女の名前はリリシュである。


「フヘヘヘヘ。こんな所で、チャンスが回ってくるとはわぁ! 陸地に上がれるぞぉ! 」


「それは楽しみですね。頭。フフフフ」



レイは船の中に侵入していた。

レイが廊下を歩くと、前方から海賊が話をしながら歩いてきた。

レイはすぐさま、天井に張り付いた。

張り付くと言っても、手と足をのばして、両側の壁で支えている。


「いやぁ〜うちの頭って、ホント運がいいよなぁ。姫にあたるなんて、これで、俺たちも陸に上がれるぞぉ! 」


「でも、今の暮らしも悪くない気もするけどなぁ」


「なんでだよぉ! 」


「海上警備も厳しくなくなったから、海は俺らの天下だろう」


「確かに」


「だから、陸に上がる意味があるのかぁ」


「確かになぁ・・・」


そんな事を言いながら、レイの下を歩いて行った。


海賊が通り過ぎるとレイは、下りて、リンネがいそうな部屋に向かった。



船はアルタイに向かっていた。

ライファは甲板を歩いていると声をかけれた。


「あの・・・」


そこに1人の女の子がいた。年は15、6歳って所だろうか。


「先ほどは、ありがとうございました。どうしても父に言われて、持ち帰らなくてはいけないものがあったので、もし海賊にとられてしまうと・・・・」


「そうだったんかぁ。そりゃよかった」


「いえ。あの、先ほどの方は、本当にリンネ姫だったのでしょうか? 大丈夫なのでしょうか? 」


「あー、あいつ姫だけど、強いから。それに、女男も付いているしなぁ〜」


「女男? 先ほどの、黒髪小顔短髪の綺麗な方でしょうか? 」


「あーそうそう。綺麗とは違う気がするが・・・」


「だれがやかぁ! 」


「う! 」


「どうかしましたか? 」


「なんか、すげー恐ろしいものが・・・」


とレイが、鬼ように怒っている顔が出てきた気がした。


「何か、お礼をさせてください」


「いやぁ〜そうなんいいよ別に」


「そういう訳には行けません。私の父は、アルタイでは有名な商人なのです。色々とお助けできるかと思います」


「ホントに・・・」


ライファはレイに言われていた事聞いてみたら解決できるかもと考え、少女に聞いた。


「あのさぁ〜。なんか泊まれる事とかある? 」


「もし、宜しければ、家の離れが空いているので、アルタイにいる間は、自由に使って頂いて大丈夫ですよ」


「マジ! あのそれでぇ〜ついでで悪いんだけど・・・」


「はい」


「その将軍に会う事とか、その将軍について知っている人とかいないかなぁ? 」


「父に聞いてみます。もしかすると、父について行けば、お会いできるかもしれません」


「ホントに助かるゎ! あー、俺、ライファねぇ」


「あーすいません。申し遅れました。私はミルといます」


「宜しく」


「はい」



その時、レイは、リンネがいると思われる部屋から、曲がった所まで来た。

しかし、そこからは進めない。なぜなら、その部屋の前には見張りがいるからだ。

見張りは眠いのか、何度も何度もあくびをしていた。


「間違いないここだ」


レイは、見張りの目を盗み、ジャンプして、天井に張り付いた。

そして、見張りの後ろに下りて、頸椎を刺激し、気絶させた。


「リンネ姫。助けに参りました」


「レイ」


「今なら、抜け出すことも出来ます。裏側に小船がありますので・・・」


とロープをほどこうとすると、リンネはそれを拒否した。


「待てレイ! 」


「はい? 」


「私は、海賊を仲間にしよう思う」


「な・・・何を言ってるんですかぁ! そんな事できる訳・・・」


「こういう勢力は、味方につけておくべきだと思う」


「しかし、いかにして・・・」


「所領を欲しがってはいる。そこにかけてみようと思う」



食事の時間。

リンネは、食卓に招かれていた。

この部屋は広めの部屋で死角もたくさんある。その為、レイも部屋の中にいた。


「すみません。姫。窮屈な思いをさせてしまって」


「かまわない。そなたも信じられないだろう。いつ逃げ出すか、分からないからなぁ」


「さあ、どうぞお召し上がりください」


そこには、海老や貝、マグロなど、海の幸が心狭しと並んでいる。


「フッカー。そなたはいつもこんな事をしているのかぁ? 」


「こんな事とは、船を襲う事かぁ。そうじゃなきゃー生きていけないからなぁ。ルド王もそうだったろう。俺らを滅ぼそうとしただろう」


「それは、そなたたちが、罪もない人々を襲うからであろう! 」


「だったら、俺らはどうやって生きて言けばいい! 」


「私の仲間になると申すなら、このエルゲ海を、そなたの所領として、認めよう。この海での自由な行き来、漁など認めよう。海上交通料も、そなたらの自由にすればいい」


「本気で言ってるのかぁ! 」


「本気だぁ! ただし、私に協力し、アルツイネと戦う事。人々も襲わない事が条件だ」


「だったら、答えはNOだ」


「なぜだぁ? 」


「今のあんたを見てて、仲間になれないだろう。どう考えても、アルツイネには勝てそうにないし、てことは、この海は自由に使えるって保証もないだろう。それに、今はこの海は俺らのものと同じだ。はっきり言って、あんたの父親が王だった時よりも、今の方が居心地がいいんでねぇ〜」


交渉決裂だ。レイは物陰から隙を伺って、姫を助けようと考え、行動を起こし始めた。しかし、


「ちなみにだが、アルタイの将軍ルフィサは、我が家臣である。であれば、アルタイは、我が手にあるといえるが、いかがか? 」


レイは行動を止めた。リンネがここまで交渉上手だとは思わなかった。


「アルタイは、このエルゲ海にとっては、大きな都市だ。そこから行き来する船はたくさんある。そこから海上交通料をもらい、漁でとれたものをアルタイで売れれば、相当の財を得られよう。痛い所をついてくるなぁ姫・・・しかし、危ない賭けをしたくないのも私の性分」


「この世の中で、成功している人間は、皆、賭けをしていると言える。将軍になった者も、一番危険な所に、自分の身を置いてこそであろう。アルツイネに私を差し出せば、何かしらの恩賞にはつけよう。ただ、私が今言ったような事を得られようか。それにエルゲ海だけじゃないかもしれん。なぜなら、私に味方している者など、今はほとんどいない。だから、切り崩した時、得られるものも大きくなるというものである」


「フン。しかし、ルフィサ将軍は、本当に、姫の家臣なのでしょうか。昔はそうでも今は違う。ほとんどのものがそうでしょう。それはアルツイネとて、そうでしょう」


「であるならば、私を監視し、見ればよかろう。もしルフィサが私の味方として戦うならば、そなたも私の味方となればよかろう」


「よし。いいだろう。カイン。リリシュ。そなた2人は姫について監視せよ。そして我に報せよ」


「分かりました」


リンネの交渉術は見事だ。しかしルフィサとは仲間になってはいない。

そこがネックではある。

しかし、真田幸村の父、真田昌幸も、そういう状態で、上杉と北条の間を渡り歩き、領地を守った事がある。まさにそれと同じ立ち回りである。



ライファは、アルタイに到着した。

ミルについて、ミルの家に向かった。


「どうぞぉ」


茶色のレンガ上の大きな家である。

ミルの父は、アルタイで1,2位を争う商人バロックである。

世界各国から、商品を仕入れ、このアルタイで取引している。


「あ、ありがとう」


家の中も洋風なお部屋で、大きな暖炉が目を引く、温かみのあるお部屋である。

家具1つ1つはライファが見た事ないものばかりである。


「すげーなんだこれぇ! 」


「こちらは、スパーリンのランプでございます」


「スパーリンってどこだよ? 」


「ずっと、西方の国でございます」


「この鏡のこれはなんだぁ! 」


「こちらは、アグレステリアから仕入れた、化粧台になります」


「アレ・・アグリト・・・」


「アグレステリアです。赤や桃色、黄色の綺麗な建物が立ち並んだ、運河沿いの町はとても綺麗な場所なんです。田舎の町には、風車というものがあります」


「ふ・・・ふうしゃ・・・」


「はい。排水ポンプの役目として使われているです」


「??? 」


ライファは何を言ってか分からなかった。


「あーすいません。どうぞぉ。お座りください」


すごく高級そうな1枚板のテーブルの椅子に座った。


「今、父は出かけておりますので、また帰ってきたらご相談します」


「ありがとう。ミルちゃん」


「ええ・・・いえ・・・」


と、ちゃんづけされて、ちょっとほほを赤らめた。

年頃で、いいなぁと思う人に、ちゃんづけされてドキッとしてしまった。



「では、私はアルタイに向かおうとしよう。なぁレイ! 」


「あー? 」


リンネはいきなりレイを呼んだ為、海賊たちがびっくりして構えた。


「おまえぇ! どこにいやがった! 」


「ずっといたぞぉ。誰も気づかなかっただけだぁ」


「なんだとぉ! 」


海賊たちが警戒しはじめたが、


「やめよぉ! 」


とフッカーが止めた。


その時、5歳ぐらいの小さな女の子が連れられてきた。


「頭! メイナ様を無事保護いたしました」


「おう! よかったよかった。いきなりいなくなるから、パパは心配したんだぞぉメイナ」


「ごめんパパ・・・・あれ、お姉ちゃん・・・」


メイナはリンネを見つめた。リンネもメイナに気が付いた。

この子は、海賊との戦いの時に、リンネが盾になった女の子だ。


「あれ、あの時の子。よかった。無事だったんだねぇ」


リンネは笑顔でメイナに近づいた。


「メイナ、リンネ姫に会っているのか? 」


「うん、船で、斬り合いしている時に、お姉ちゃんが助けてくれたんだよ」


「まさか、姫が娘の命の恩人だったとわぁ・・・これは従わなければならんかぁ・・・」


「そうだぁ! リンネ姫に忠誠を誓えぇ! 」


とレイがフッカーに言った。


「貴様ぁ! 」


と他の海賊がレイに剣を向けた。レイも短剣を抜き構えた。


「やめよぉ! 」


リンネとフッカーが重なるように止めた。



「こちらが、離れの部屋です」


アルタイでは、ライファがミルに離れの部屋に案内されていた。


「おーすげー広いじゃねーかぁ! 」


「はい。部屋はこちらの大広間だけじゃなく、2階建てで、5部屋はあります。お風呂やトイレも完備しておりますので、十分に生活できると思います。ただ、姫様にこんな所を使って頂くとなると、申し訳ありません」


「大丈夫だよ。あいつは喜ぶと思うぜぇ! ありがとうなぁミルちゃん」


「あ・・・いえ・・・」


ミルは少しほほを赤らめた。


「ただいま! 」


「あー父が帰って来ました」


ミルは、小さいときに母をなくし、父と2人暮らしである。



リンネたちは、小船に乗り、アルタイに向かっていた。

カインが船をこぎ、リリシュはずっとリンネを見つめていた。


「よいかぁ! 私たちはまだ信用した訳ではない。お頭からは、おまえらを見張れと言われている。ちょっとでもおかしな事があれば、ずぐにでもお頭に報告をする。よいなぁ! 」


「貴様ぁ! 言葉遣いに気を付けろぉ! 」


「やめよレイ! 」


「はぁ! 」


「分かった。そなたの思うようにしてくれて構わない」



「ほう。そうであったかぁ」


ライファはミルの父である。バロックと話をしていた。


「そうだからよぉ〜。将軍に会う時に一緒に連れてってくれないかぁ」


「それは難しいかもしれん。ルフィサ将軍は、アルツイネ王に従っておられる。リンネ姫がと繋がっているとなると・・・・」


「お父さん。なんとか助けてあげてぇ! 私の命を助けてくれたの」


「うん・・・・とにかく、ルフィサ将軍の元には連れていけん。連れて行ったら、私の立場が危うくなる」


「お父さん! 」


「まー娘の命を助けてくれたという事もあるから、離れは自由に使ってくれては構わない。ただし、私たちは、姫である事は知らない事にしておくからねぇ」


「あー」


ライファは落胆した。これでルフィサに会う事ができなくなったからだ。

他の案を考えたいが、バカなので思いつかない。



小船が、アルタイに到着し、リンネたちが到着した。

リンネは道を歩くが、どこに行けばいいか分からない。


「あの野郎。港には目を向けとけってのに」


「まー私たちも特に連絡をしていないからわからないだろう」


リンネたちは港湾都市をライファを探してウロウロしていた。


「おい! なんで、将軍が迎えに来ない。家臣だったら迎えに来るだろう」


「そ・・・それは、リンネ姫がそのように将軍に指示をだしているから。表向きはアルツイネの味方だからなぁ」


「そうなのかぁ・・・」


「いらっしゃい! この壺は、ドイルマイソンの陶器で、遠くシルクロードを抜けて来た1点ものだよ。今なら、2500ルーブで販売しているよ」


「ライファさん。すごいです。すぐに上手くなりましたねぇ」


「ホントに。ミルちゃんの教え方がいいから」


ライファとミルは、市場に店を出して、物を売っていた、

バロックの商品は業者へ売るのが当たり前だが、このように市場で一般の人にも売る事もあるのだ。


「はい! そこのお姉さんもいかがですかぁ? 」


とライファが売っていると、そこにリンネたちが来た。


「あー」


とレイが気づいた。


「あのバカ。何してるんだぁ! 」


とレイがライファの方に走っていた。


ミルと仲良さそうに話すライファを見て、リンネは、何か嫌な気持ちになった。


「おまえぇ! 何しているだぁ! 」


「うん・・・おー女男! 」


バコーン


「イテェ! 何するんだよぉ! 」


「おまえ、地盤固めはどうなった! 潜伏先は、ルフィサの情報はぁ! 」


「フン! ない訳ないだろうがぁ。俺を誰だと思ってるんだよ」


「ただのバカだろう」


「ちげーよ。 ライファさんだぞ! 」


と、違うの世界の芸人のネタみたいに、服の襟を持って言った。


「うん・・・・」


バチーン


「この話の中では、ツッコめねー奴だなぁ! 」


と最近人気の、大雨の時に、空から落ちてくる名前の芸人みたいに言った。


「ライファさん・・・・痛そう・・・・」



そして、リンネたちは、ミルの家に来ていた。


「まさかこんな所、姫様にお会いできるとは・・・」


バロックはリンネに跪いている。


「私が今の財を気づけたのも、ルド王がこのような国を作って頂けたことからである」


「会った事あるのか? 」


「いやない」


「ないんかいぃ! 」


「会ったとか、会ってないとかは関係ない。日々感謝する事。自分の努力だけではない。何かが関わっているんだよ」


「よい。皆、同じテーブルに座ってくれ」


「おう座ろうぜぇ! 」


バコーン


「イテェ! 」


「てめぇーは、無礼すぎるんだよぉ! 」


と、みんながテーブルに座っていないのに、ライファだけは、気にせず、座っていたので、レイが殴った。



「ルフィサは、アルツイネに従っているそうだ」


と、1つの部屋で、リンネとレイとライファは小声で話していた。

外では、カインとリリシュが中を伺っている。


「それは、なんでだ? 」


「さあ〜」


バコーン


「イッテェ! 何するんだよぉ! 」


外では、その音だけ聞こえて、カインとリリシュはびっくりした。


「なんだぁ? 」


「なんの情報も得てねーじゃねーかぁ! 」


と続けて、レイは怒っている。


「しょうがねぇだろう! おのおっさん。連れていけないって言うから! 」


バコーン


「イッテェ! 」


「おまえがリンネ姫の事話すからだろうがぁ! そりゃー警戒するだろうぉ」


「じゃあ、なんて言えばいいんだよぉ?! 」


「そんな事も分からねーのかぁ! 城で働きたいから、紹介してくれとか。ルフィサの知り合いだとか、なんかあるだろうぉ! 近づく方法は! 」


「あーそっか」


「どこまで、バカなんだよぉ! 」


「とにかく、レイもライファ。引き続き動いてくれ」


「はぁ! 」


「おう! ・・・で何をすればいいんだぁ? 」


バコーン


「てめぇは何を聞いていたんだぁ! 」


外ではカインとリリシュが、その殴る音が聞こえてびっくりしている。


「あいつらの関係図はどうなっているだぁ?・・・・」


「さあ?・・・」



次の日、レイは城の裏口などの侵入できる隙を伺っていた。

城は7mぐらいの城壁で囲まれていて、なかなか入る事は難しいが、レイはくぼみなどを見つけて、中へと入って行った。



ライファはミルから城で働いている人を紹介してもらった。


「ありがとう。ミルちゃん」


「いえ。そんな・・・私が何かのお役にたてたのならば、うれしく御座います」


とほほを赤らめながらミルは答えた。


そう話しながら、運河沿いを歩いて、橋を渡ると、レンガ調の横長の建物の中に入っていた。どこかの工場かと思われがちだが、ここは家である。いわゆる長屋という、アパートのような所である。

アルタイは、面積の割りに人口がいる為、人口密度が高い都市である。

その為、こういうところに人が密集して住んでいる。

ミルのようなお金持ちでないと、なかなか離れがあるようなスペースはとれない。


カンカン

と扉についた鐘を鳴らすと、中から、男性が出て来た。


「あーミル。どうぞお入りください」


通されて入ると、すごく狭い部屋である。6帖ぐらいの中に、ベットや机が並んでいる。

ライファとミルはそのテーブルの椅子に座った。もうギュギュづめである。


「どうも。私はお城で門番をやっているスナルと言います。今日は非番の為、家にいました」


「あー。俺はライファって言って、城で働きたいと思っているもので・・・」


「そうですか。でも残念だけど、今はお城で仕事は募集していないんだ。僕らとしては人手が欲しいが、なかなか人件費も払えられないから、これ以上は雇えないらしい」


「マジかよ! でもしょうがねーかぁ・・・」


と思ったが、帰ったら、間違いなく、レイにめちゃくちゃ怒られて、ボコボコにされると思ったので、少ない脳みそで考えた。そして出した答えは。



「あほかぁおまえは! 」


バコーン


とライファはレイに怒られ、殴られた。


「イテェ! 」


「門番をやるときに行くから、こそっと通してくれぇ。それで怪しまれたら元も子もないだろうぉ! 大事な突破口を1つ潰しやがってぇ! 」


レイは相当怒っている。城で働いている人間とのつながりは大きい。それを潰したことに相当怒っている。


「これでも色々考えたんだよぉ! 」


「考えるなぁ! あほぉ! 」


「じゃあどうしたらいいんだよぉ! 」


「おまえは、私が動けと言うまで動くなぁ! 」


「あーそうかよぉ! わかったよぉ! 」


と言って、ライファはそっぽを向いてすねた。


「もうよいレイ」


「はぁ。すみませんリンネ姫。私がやはり行くべきでした」


「まだいい方法はいくらでもあろう」


「リンネ姫。私がルフィサに会って来ましょうか」


「レイがか」


「はい。知らない中ではないですから」


「なんだよぉそれ。そんな方法があるなら、最初からそうしろよぉ! 」


バコーン


「イテェ! 何するんだよぉ! 」


「おまえが、ヘマしたから、城に忍び込む危険な方法しかなくなったのだろうがぉ! 」


「あー俺のせいかよぉ! もういいよぉ! 」


「だからやめよぉ2人とも! 」



レイとライファが大きな声でケンカしている為、その声は外に丸聞こえだった。


「そう言う事かぁ。これはお頭に報告させばぁ」


カインがそれを聞き、それをリリシュに話した。


リリシュは、夜陰にまぎれて、フッカーの所に戻ろうと、運河沿いを走っていた。

しかし、

ヒュー


「貴様、どこへ行く? 」


リリシュの前に人影が見えた為、立ち止まった。


ヒュー


そしてその人影は一瞬でリリシュの後ろに回り込み、首筋には短剣が突きつけられた。

動けばこのまま殺される。

その後ろにいるのはレイだった。


「お・・・おまえ・・・」


「おまえらのお頭の所か? 」


「おまえら、うそつきやがって、ルフィサ将軍は、味方ではなかっただろう。現状は城に入る事もできない」


「だったら、なんだぁ。それをおまえらのお頭に報告しに行くのかぁ? 」


「そうだぁ! だから離せぇ! もうおまえらの命はない」


「ないのは、おまえの方だぁ」


ヒュー

ズサー


レイがすごいスピードで動くと、リリシュの長い髪が、一瞬で斬られ、ボブヘアーぐらいまでになった。


「て・・・てめぇ」


「可愛くしてやったぞぉ」


「くく・・・」


「勘違いするなぁ。おまえらが、私たちを見張っているのではない。私がおまえらを見張っているのだ」


と言いながら、2本の指を自分の目に指し、その後、その指をリリシュに向けた。

監視しているとのサインである。


「わかったら、勝手な行動は慎むだなぁ」


「お・・・おのれ・・・」


しかし、リリシュは何もできなかった。格の違いを見せつけられたからだ。

これ以上反抗すれば、間違いなく殺される。

そう思うと、リリシュは、おとなしく、宿舎に帰った。



次の日。


「お、おまえ、髪の毛切ったんかぁ! そっちの方が可愛いぞぉ」


と、ライファは素っ頓狂な事を言っていた。ライファは昨日の事は何も知らない。


「く・・・」


それを言われてもリリシュは、何も言えなかった。


ライファが去った後、カインはリリシュに話しかけた。


「大丈夫だ。あのバカはどうって事ない。問題はあの短髪の女だ。2人で同時に別方向に行けば、どっちかは、お頭の元にたどり着ける。そうすれば、奴らの終わりだ」


「そううまくいけばいいが・・・」


しかしもうリリシュはビビっている。レイの恐ろしさに。



その日夜。アルタイ城。


「それじゃ ウルバ」


「はい、お休みなさいませ。ルフィサ様 」


ルフィサは、玉座から自分の部屋に戻ってきた。


ベットに座ると、声が聞こえた。


「ルフィサ」


「何奴! 」


と言って、近くにあった剣を右上の天井に飛ばした。


カーン

ググググ


そこにいた人影が逃げて、そこに剣が刺さった。


「もしかして、レイか」


「そうだぁ」


「下りてこい」


サァ


レイはルフィサの前に下りた。


「おまえは、相変わらず、ちょこまかとしよって」


「おまえもためらいのない殺気。怖すぎだぞぉ」


「フン」



13年前


リンネたちは1対1で、木刀で格闘をしていた。

コーテンとガーディアン。バシルはリンネと、サーベルはランバルと、そして、レイはルフィサと戦っていた。


ランバルは力でぶん回していた。しかし、サーベルはそれをよけて、ランバルの頭に食らわした。


「どうだぁ。ランバル」


「フフフ。痛くも痒くもないわぁ! 」


しかし、コブになっている。


「うそつけ! 」


「ホントだぁ! 」


リンネが木刀を振り回すと、それをバシルがすべて受け止める。


「うりゃー」


カン カン カン


リンネは後ろに下がり、そのまま斬りかかった。


しかし、バシルも動きを見て、受け止めた。


「おい! バシル。遠慮するでない。かかって来い! 」


「いえ。遠慮なんかしておりませんよ」



ガーディアンとコーテンは向き合っている。


その時、コーテンがふらついた。

そこを、ガーディアンが見逃さなかった。


「そこだぁ! 」


しかし、その瞬間、コーテンは横によけ、木刀を首につきつけた。


「私の策の勝ちのようだなぁ」


「武術は、調略ではないぞぉ。コーテン」


ガーディアンの木刀はコーテンのお腹にそえられていた。


「ハァハァハァ」


「どうしたぁレイ! 」


「死ねぇ! 」


カン カン カン カコーン


レイの木刀は、ルフィサにはじかれ、飛んで行った。


「く・・・くそぉ! 」


剣術でルフィサに勝てる奴はいない。


「レイ」


「はぁ。オン先生」


「相手の土俵で戦いすぎだぁ。自分の土俵に持ちこめ」


「はぁ。もう一度だぁ。ルフィサ」


「何度やっても同じことだぁ! おりゃー」


ルフィサが斬りかかると、レイは高くジャンプして、ルフィサの視界から消えた。

そして、ルフィサの肩にレイの木刀が撃ち込まれた。


ドゴーン


「ううう」


ルフィサはうずくまった。


「やりやがるなぁレイ。もう一度だぁ! 」



「それで、リンネ姫につけという話か」


現在のルフィサの部屋でレイとルフィサは話していた。


「そうだぁ。ルフィサ」


「残念だが、断る」


「おまえ、北斗七星の忠誠を忘れたのかぁ! 」


「忘れておらん」


「じゃあ、なぜだぁ! 」


「生きる為だぁ」


「生きる為・・・」


「我がオーラル家は、2000年以上続く家柄。私の代で終わらすわけにはいかない」


「その為、忠誠も義も捨てたの言うのかぁ! おまえみたいな若い奴に将軍職を与え、オーラル家の領地を守ってくれた方は誰だぁ! ルド王であろう! 」


「・・・・」


「そのルド王の忘れ形見、リンネ姫に忠義をするのが、恩義というものではないのかぁ! 」


「そうかもしれん。ただ、ルド王に便宜をはかってくれたのも、アルツイネ王である事もある。だから、恩義といえば、アルツイネ王にもあるのだ」


「しかし奴は裏切りではないかぁ! それを武門に生きるおまえが、許せる事かぁ! 」


「上の者に忠義をはかる。それが武門である」


「だったら、その上の者とは、リンネ姫、他においておらんだろうぉ」


「しかし、お家や家臣を守る為には、武門に恥じる事もしかたがないのだぁ。だから、そなたはリンネ姫を連れて、ここを出てくれ。これ以上、武門に恥じる事はしたくない! 」


「それがおまえの本音かぁ! 」


「・・・・そうだぁ・・・」


「いかがいたしますたか? ルフィサ様」


ルフィサとレイの言い合いの声は外に漏れていた。

その為、ウルバが駆けつけて来た。

だから、レイは部屋を後にした。


「いかがいたしました? 」


とウルバがルフィサの部屋まで来た。


「なんでもない」


「左様でございますか」


ウルバは首を傾げて、部屋を出て行った。



「よしあいつがいない。リリシュ、今がチャンスだ」


カインとリリシュは家中を見渡し、レイをいない事を確認した。


「これで2人同時に行けば、奴が気づいても、どっちかは、海に出れるだろう。海の上なら、俺らの方が上だ。これでお頭に報告できる。そうすれば俺らの勝ちだ」


「分かった。行くぞぉ! 」


レイの目を盗んで、カインとリリシュは別々の方向に走って行った。



海近くまで、カインは走ってきていた。


「やっぱり、女男の言う事当たるなぁ」


とそこには、ライファがいた。


「おまえ・・・」



リリシュは遠回りしながら、港の裏口辺りに来ていた。

リリシュは回りを見渡していた。


「もうすぐだ。もうすぐだ」


リリシュはレイがいないか、ビクビクしながら走っていた。


「よし船があった」


リリシュの前には小船があった。

そして、乗り込み、急いで移動させた。


「入り江を抜ければ、こっちのものだぁ! 」


「残念」


「えええ」


リリシュは回りを見渡した。

そうすると闇の中に、小船の帆の上に人影が見えた。


ヒュー


そして飛び降り、リリシュの前に現れた。

レイだ。


「言っただろう。私がおまえたちを見張ってるって」


リリシュは汗をかきながら、体を震わせながら、剣を構えた。

最後の悪あがきだ。



「ふん。おまえかぁ。そこを通せ。通せば、命だけは見逃してやる」


「おまえ、俺より頭悪いだろう」


「フン。通す気はなさそうだぁ。だったら殺すのみだ」


と言って、カインは剣を構え、ライファに飛び掛かった。



「うおりゃー! 」


リリシュはレイに飛びかかっていた。


しかし、ひらりひらりと、レイは簡単にかわしていた。


「ハァハァハァ・・・おらぁ! 」


カーン

ボチャン


レイが短剣で、リリシュの剣を吹き飛ばし、海に水没した。


「ハァハァハァ」


もう終わりだぁ。リリシュは思った。


「おまえ、こんなとこにいていいのか。今頃、カインが船に乗って、お頭の所に行ってるぞぉ。ヤバいんじゃないのかぁ。やられるのはおまえたちのほうだぞ」


「知ってるよ」


「え・・・だ・・・だったら・・・」


「そいつの所には、ライファの奴に行かせている」


「大丈夫なのかぁ。あいつで」


「確かになぁ。あいつはバカだぁ」


「だったら、私にかまってる暇ないんじゃねーかぁ」


「あいつは、バカだけど、どこで身につけたか知らないが、相当強いんだよ」



「ハァハァハァ」


カインは、左腕を斬られて、汗と血を流して膝をついていた。

ライファはカインの前に、余裕で立っていた。

レイが言う通り、ライファはバカではあるが、相当に強かった。


「おのれ・・・」


「おまえらも運がねぇーなぁ。女男に逆らったら、こうなっちまうぞぉ。これが、選ばれた奴らなのか知らねーけどなぁ」


「うおおお」


とカインはライファに飛び掛かった。しかし、


カーン

ヒュルヒュルヒュルヒュル

ズサ


剣が飛ばされ、地面に突き刺さった。


「フー。やめだぁ。やめ。おまえを殺す気になれねーやぁ。お頭の所に行きたいなら、行けぇ! でもこれだけは言っとく。リンネには指1本触れさねぇーからなぁ。リンネを殺そうとするなら、その時は、覚悟しろよぉ」


カインは驚いていた。跪きながら、腕をおさえながら、死を覚悟したのに、ライファは殺そうとしなかった。


「そんじゃなぁ〜」


と言って、ライファは剣をしまって、去ろうとした。


「おい! 待てよぉ! 」


「なんだよぉ! まだなんかあるのかよ」


「なぜだぁ。なぜ殺さない」


「だって、おまえ別にリンネを殺しには来ない気がする。なんかそんな気がするからだぁ。それは、おまえの所の、お頭がそうするのか、わかんねーけど。なんとなくなぁ」


「なんとなく・・・・」


「はぁ〜はぁ。もう眠いから寝る。じゃあなぁ〜」


カインは驚いた表情でライファの後姿を見ていた。



レイは短剣を鞘にしまっていた。


「殺してもいいけど、なんか、あのバカは絶対に見逃してるだろうと思うと、私もおまえを見逃す事にした」


「はぁ・・・なぜだぁ? 」


「分かんねーけど。おまえはもう何もしない気がするから。だったらおまえを殺す必要はない気がする。私はリンネ姫に逆らう奴は全部片づけて来たけど、おまえはそいつらとは違う気がするから。だから、もう行け! もうおまえを私の見張りからは外してやるよ。ただ、また現れて、リンネ姫に危害を加えるなら、その時は殺すけどなぁ。以上! 」


と言って、レイは去って行った。


リリシュもまた、そんなレイの後姿を見つめていた。



その後、カインとリリシュの消息は不明である。

ただ、海賊の所へは戻っていないとの事である。




第7章 アルタイ城を陥落せよ



「ルフィサは、リンネ姫にお味方したいとは思っているようですが、お家を考えると、アルツィネに味方しざる負えないそうです」


「であれば仕方がない事であるなぁ」


「しかし、それでは・・・」


「今の私にはついていけないという事だ。そうすれば、お家を守れないと思ったからだ」


「しかし、家臣は、将の為に命を預けるものに御座います。私は、将の為、お家も我が命もすべて差し出す覚悟に御座います。」


「だから、その将に命を預けれないと思ったんだろう」


とライファが言い始めた。


「だから、てめぇは! いつも無礼であろうぉ! 」


「だから、人間性はもちろんの事、それと、上に立つものは、下のものに夢を見させなければならない。ここにいたら、この人について行けば、安心できる。努力すれば得たいものが得れるとか、自分が求めたものが手に入るとか。でも今のこいつにはそれが見えないんだろう」


「貴様ぁ! リンネ姫を侮辱する気かぁ! 」


「やめよぉ! レイ」


「そうじゃねーよ。俺はリンネにはそれだけのものを持っていると思うよ。だからここにいるんだろう。でもルフィサは、今のこいつにはそう思えないんだろう」


「そういう事かぁ・・・」


バコーン


「イテェ! 何するんだぁ! 」


「てめぇの分際で、偉そうに語るなぁ! 」


「いいだろうが別にぃ! 」


とレイとライファが言い合っている横で、リンネが、自分が将として、未熟である事を痛感していた。いつもレイに支えられているだけだと感じていた。


「レイ。いつもすまない」


「な・・・何を言っております! 家臣として、当たり前の事でございます」


ガコーン


「てめぇが、いらん事言うからだぞぉ! 」


「なんだよぉ! 」


「レイ! 頼みばかりですまないが、ルフィサに会う事はできないかぁ」


「ルフィサにですかぁ? 」


「そうだぁ」


「分かりました。必ずや、リンネ姫と会えるように致しましょう」



レイとライファは家の外で話していた。


「リンネ姫を頼む。私は、バシルとガーディアンに応援頼もうと思う」


「分かった」


「戻ったら、城攻めを行う」


「はぁ! おまえバカなのかぁ! 」


ガコーン


「イテェ! 」


「バカはおまえだぁ! 」



レイはそのまま旅だった。



そのレイを待つ間、リンネは窓から、ライファとミルを見ていた。


ライファとミルは、洋風家具を磨いていた。


「すいません。ライファさん。いつも手伝ってもらって」


「いいだよ別に。ちょっと興味もあるしさぁ〜。これはどこの奴なんだ」


「こちらは、ハクスフルク家、御用達の家具です」


「ハクル・・・ハグス・・・わかんねぇーやぁ! 」


「まー」


「ハハハハハハハ」


とライファとミルが仲良くしているのを見て、リンネは窓からのぞくのをやめた。



そして、食事の時間。


リンネは長テーブルの一番の上座に座っている。

その右横の前にライファが座っている。


「うおー。ミルちゃん。めちゃくちゃデカイエビじゃん! 」


「はい。こちらは、尾勢エビです。今日の朝とれたものだそうです」


「めっちゃうまそー。いただ・・・・あー」


「構わん。先に食べよ」


いつもなら、リンネより先に食べると、レイに無礼者と言ってぶん殴られる。

でもレイはいない。


「やりぃ! いただきます! うめー! 」


「ハハハハハハ。そんなに急いで食べなくても、エビは逃げていきませんよ」


とミルはライファを見て、笑っている。


「私も頂こう」


「どうぞ。お召し上がりくださいませ」


「うむ。おいしい」


「いやぁ〜。俺、やっぱり結婚するならミルちゃんだなぁ。だって、こんなうまい飯が毎日食べれるからなぁ。なぁリンネ! 」


「あぁ! 」


リンネは怒った口調で答えた。


「なんだよ・・・」


「なんでもない」


とリンネは膨れていた。しかしライファにはなぜか分からない。


「なんかキレてるのか? 」


「ううう、キレてないわぁ! フンだぁ」


と言って、ライファから逆に向いた。すごく怒っていた。要するに嫉妬である。

しかし、ライファはなぜか分からない。


「変な奴」



数日後、ガーディアンとバシルに、バシルの家来、ワワチとバグとともに戻ってきた。


「リンネ姫。ご無事でなによりです」


「そなたらもなぁ」


「おい、連れてくるなら、山賊全員につれていこいよ。2000人ぐらいいるんだろう」


と、ガーディアンとバシルがリンネに挨拶している、後ろの程で、レイとライファは話をしていた。


「バカかぁおまえ。それじゃあ、警戒されて、本当の戦になるだろう」


「でも戦するだろう?」


「まーそうだけどぉ」


「イミフ! 」



その夜のアルタイ城


「申し上げます。ルフィサ将軍に、書状が届きました」


「なんだぁ? 」


玉座にはルフィサ、その横には、いつもながらウルバがくっついている。


「私にか」


「はい」


伝言した兵は、ルフィサに書状を渡した。


「うんうん・なるほど・・・」


「いかが致しましたルフィサ様? 」


「だれか、書状を持って来たものがいるのか? 」


ルフィサはウルバの質問に答える事なく、伝言した兵に聞いた。


「はい。何やら、あまり身なりのよくない男でして」


「なんだそれは! そんなものの書状を受け取ったのかぁ貴様は! 」


「す・・・すみません! 」


「ルフィサ様、いけません。そんなものは追い返すべきです」


しかし、ルフィサはウルバの言う事に耳を貸さず、伝言した兵に指示をだした。


「分かった。と伝えよ」


「な・・・何をぉ! 」


「承知致しました」


ウルバが怒っているが、将軍であるルフィサがそう指示をだしたので、それに従い、戻って行った。


「なりませんぞぉルフィサ様! 一体、書状は誰からのですかぁ! 」


「私の、旧友だ」


「旧友・・・まさか、リンネ姫に繋がる者ではありませんよねぇ〜。そんな事がアルツイネ王にバレたら、我がオーラル家はお取り潰しですぞぉ! 」


「大事ない」


「大事ないかどうかは、このウルバが判断致しまする。ルフィサ様! 」


「私は、疲れた。もう寝る」


と言って、ルフィサは席を立って、奥へと下がって行った。


「なぁ・・・ ルフィサ様! ルフィサ様! 」



アルタイ城。門

次の日の昼下がり。


「ルフィサ将軍にお会いしたい。私たちは古い友人である、ガーディアンとバシルである」


「その者たちは」


その後ろには、山賊のような格好をしたライファと、ワワチ、バグ、そして深くフードを被ったリンネがいた。


「私の家来だ」


とバシルは答えた。


「書状が、ルフィサ将軍に行っているはずだ。その書状の中で、今日の夕方に会いにいくと書いた。それで、ルフィサ将軍は、分かったと答えたと聞いている。そうだなぁワチチ」


「へい! そうです! 」


「そうですかぁ。ではこちらへ」


門番はそのままリンネたちを通した。



兵がルフィサに伝言しようと兵が走っていた。

しかし、その兵は呼び止められた。


「おい! 止まれ! 」


「はぁ! 」


そこにはウルバがいた。


「通した奴らは、どちらにいる」


「はい、客間の控室にお通ししました」


「そうかぁ。案内せよ」


「はぁ! 」



ウルバは、扉の隙間から中を伺っていた。


「あれは、賊であろう」


「恐らくは。しかし、ルフィサ将軍の古い友人なので、丁重に扱うよう、指示を受けております」


「そうか・・・うん、なぜ、あのフードをつけた奴が、一番上座にいるのだぁ? あのバンダナをつけた奴が、一番上なのではないのかぁ? 」


「はぁー。そうでねぇ・・・」


「そうですねぇ〜ではない! よく調べよぉ! 」


「はぁ! すみません」


その時は、リンネは熱かった為、フードを外した。

それを運悪く、ウルバに見られてしまったのである。


「なぁ・・・あれは、まさしく、リンネ姫・・・・」


ウルバは、そこにまさかの人がいた為、扉を閉めた。


「すぐさま、カルバン副将を呼べぇ! 」


「は・・・はぁ! 」


「後、この事は、ルフィサ様には、内密しよぉ! 」


「はぁ! 」


そう言われて、兵は走って行った。


「わしにも運が向いてきたかぁ」



しかし、ウルバの想いは儚くも簡単に散った。


先ほど、指示を受けた兵は、急いでカルバン副将の元に向かった。

ヒュー


「うん? 」


その兵は何か、鳥かなんかが、通り過ぎるのを感じたので立ち止まり、振り返った。

そしたら、兵の後ろにはレイがいた。


ズザー


「うう」


バタン


レイはその兵を、見えない所に移動し、すぐさま移動した。



ウルバはリンネたちの様子を伺いながら、カルバン副将の到着を待ったが、いつまで待っても来ない。それもそのはず、レイが倒してしまったからだ。


しかし、遅いと感じているのは、ウルバだけではない。リンネたちもだ。


「遅ぎねーかぁ」


「確かに。おいワワチ! 」


「はい! 」


「ちょっと見て来い! 」


「俺すっかぁ! 」


「そうだよ。おまえだよ」


「ここって大丈夫なんですかねぇ。ちょっとでも動いたら、殺されたり・・・」


「確かにそうかもしれねーなぁ」


「えええ! だったら無理すっよぉ! 」


「てめぇ! お頭の言う事が聞けねぇーかぁ! 」


「いえ、そう言うわけではぁ! 」


「だったらすぐいけ! 」


とワワチはバシルに蹴り飛ばされ、見に行った。


「キャンキャン」



ワワチが外に出ると、そこにウルバがいた。


「おいおっさん! 」


「おっさん? 」


ウルバは、賊みたいな、下級の人間におっさんと言われて、イラっとした。


「まだ、将軍に会えないのかぁ? お待ちくださいって言って、30分くらいたってるぞぉ」


「そうなのか、では、私が案内しよう」


「ホントかぁ! おっさん! ちょっと待っててくれよ」


そう言って、ワワチはリンネたちを呼びに行った。


ウルバには考えがあった。ルフィサの所には案内しないで、カルバン副将の所へ案内しようと考えていた。そうすればどこかですれ違う。そこで始末しようと考えていたのである。


「お頭! そこにいるおっさんが案内していくれるそうです」


「・・・・そうかぁ・・・」


「行きましょうお頭! 」


「なんかおかしくないかぁ? バシル」


「私もそう思った。バグ。おまえも、姫と同じようにフードを被れ。この中で、背格好が一番姫に近いのはおまえだ」


「了解であります! 」



リンネたちが出てくると、フードを被っている奴が2人になった。

それを見たウルバは、警戒した。


「では、こちらです」


ウルバが歩き出し、ついて行った。



その頃、カルバン副将は撃ち落され、近くにいた5人ばかりもやられていた。


そこにレイが立っていた。


そこから、見える、宮殿の渡り廊下をウルバを先頭にリンネたちが来ていた。



ウルバが来ると、そこには、なぜか普通にカルバン副将が立っていた。


「カルバン副将ではないですかぁ! 」


「これはウルバ殿・・・」


とレイは身を隠して、すごく低い声で話した。


「あれ、カルバン副将、こんな声であったかぁ」


「そ・・それは、少し風邪をひいていまして・・・」


「そうですかぁ・・・・」


その時、レイは、石をライファに飛ばした。


「イッテェ! 誰だよ! 」


リンネたちは、ライファの方を見た。

レイはライファに気づけとサインを送っているが、ライファは気づかない。


「あいつ、気づかねーじゃねーかぁ」


「カルバン副将、兵はいかがしました? 」


「兵であれば、300程は、そこに」


と話しながらも、サインを送っていると、バシルが気づいた。


「あ・・・」


レイはサインで、ウルバを捕まえるように指示をだした。


「であれば、その兵で、こいつらを倒し・・・・なぁ・・・」


「動くなぁ! ルフィサの所へちゃんと案内しろぉ! 」


バシルは剣をウルバの首にそえた。


「貴様ぁ! こんな事して、ただで済むと思うなよぉ! カルバン副将、こいつをやってくだされ! 」


しかし、カルバン副将はそのまま倒れた。レイが固定していただけなので、レイが固定をとれば倒れるだけである。


「ど・・・どういう事だぁ! 」


「とにかく、おまえは黙ってルフィサの元に向かえぇ! 」


ウルバはおとなしく、ルフィサのいる玉座に向かった。

その間、バシルに刃を突き付けられたままである。


バコーン


「イテェ! 」


「なんでおまえは気づかないんだよぉ」



玉座にはルフィサがいた。


「ルフィサ様ぁ! 」


「ウルバ!・・・・レイ・・・バシルに・・・ガーディアン」


そして、玉座に入るなり扉を閉めた。


「どういうつもりだぁ! 」


「悪いがルフィサ。このアルタイは、我々が乗っとる事にした」


とレイが言った。


「もし聞けなければ、この側近は殺すしかあるまい」


「レイ。おまえらの方が危うい立場である事は間違いないんだぞぉ! ウルバは殺したければ、殺せばいい。その瞬間に、たくさん兵がここに流れ込み、殺されるのはおまえらの方だぁ! 」


「ルフィサ様ぁ! どうかお助けをぉ! 」


「ルフィサ! 」


その時、リンネがルフィサを呼んだ。


「この声は・・・」


リンネはフードをとり、ルフィサの前に近づいた。


「リンネ姫・・・」


「ひさしびりだぁルフィサ」


「おひさしぶりです。リンネ姫」


「ルフィサ。頼む我に力を貸してくれぇ! 」


「リンネ姫・・・・すみません。それは・・・できかねます」


「お家が大切であるのは、私も一緒である。しかし、一番考えなければならないのは、人民の事である。こうしている間にも、奴隷として苦しんでいる人々いる。それを私とともに救ってはもらえぬかぁ! ルフィサ! 」


「なりませんぞぉルフィサ様! 今この時、リンネ姫につけば、ここに何10万という兵が押し寄せましょう。そうなれば、オーラル家はお取り潰しとなりましょう。だから、負けてはなりません。早く兵を呼び、この者たちを倒すのです」


「てめぇ! 」


バシルはウルバの首を絞めた。


「ウウウウ」


「やめよぉバシル! 」


それをリンネが止めた


「はぁ」


「ウルバが言う通りであろう。我につくだけの魅力がないのであろう。私は、このライファに言われた。将とは、下のものに夢を見させなければならないと。安心してついていける人間であればならん」


「生意気な事を」


とレイがライファをけなすように言った。


「バカにしてんじゃねーよぉ! 」


「しかし今の私にはそれがないのであろう・・・・ルフィサ! 我と勝負せよぉ! 」


「はぁ! おまえ何言ってるだぁ! 」


「そうです。リンネ姫! 」


とレイとライファが止めるも、リンネは2当流の剣を抜いた。


「リンネ姫・・・何をおっしゃっているのですかぁ」


「私は、そなたには1回も勝てなかった。だから、今日、この場で勝つ。そうしたら、我についてくれぇ! 」


「いや・・・・それは・・・」


「リンネ姫! なりません! 」


「うるせいレイ! 私は戦うと言ってるのだぁ! 」


「レイ。もうダメだぁ。姫がこうなったら、だれも止めれん」


とガーディアンが何かを思い出すように話した。



13年前。


「今度は、我がルフィサと勝負する」


「私とですか・・・いえ私は姫とは・・・・」


「ルフィサ! 私には簡単に勝てると思っただろう、だから戦えないといいやがったなぁ! ゆるさん! 」


と言って、リンネはルフィサに飛び掛かった。


しかしルフィサはリンネの攻撃をすべて受け止めている。

でも反撃はしない。


「ルフィサ! 攻撃してこい! それとも、我には簡単に勝てるから、本気で戦えんと申すかぁ! 」


「いえ、そういう訳では・・・」


「ルフィサ! 」


「オン先生」


「リンネ姫と本気で戦え! ここでなら姫を本気で倒しても構わん。ルド王にもそう言われておる」


「わ・・・分かりました。」


「行くぞぉ! ルフィサ! 」


カーン



「ハァハァハァ」


リンネはボコボコにされ、膝をついていた。

やはり、ルフィサに勝てるわけもなかった。


「もういっちょ! 」


「もうやめましょう姫! 」


とルフィサが言うが、リンネは聞くそぶりもない。


「ならん! 我がもう1回と言えば、もう1回だぁ! 」


「うりゃー! 」


しかし、ルフィサは、何度も何度もリンネを倒した。



夜もふけていた。しかしリンネは諦めるそぶりもない。本当に頑固な姫である。


「もういっちょ! 」


「今日はここまでぇ! 」


とオンが言った。しかしリンネは言うと。


「何故じゃあ! 我はまだできるぅ! 」


だれもがもう無理だと思っていた。体中傷だらけ。知らない人が見たら姫だって、100人が100人思わないだろう。


「行くぞぉルフィサ! うりゃー! 」


バタン


しかし、リンネはその場に倒れた。本当は立ち上がる事さえ限界なのである。



それからリンネは何度も何度も、ルフィサに挑んだ。しかし1度も勝てる事はなかった。



「私は、そなたには1度も勝てなかった。でも今日、ここで勝つ! 私が勝ったら、我につけ! もし私が負ければ、この首をアルツィネに献上しろぉ! 」


「何を言ってるんですかぁ姫! 」


そう言って、止めるレイを横目にライファは。


「よっしゃ! やれリンネ! 」


バコーン


「おまえは何を言っているんだぁ! 」


「イテェ! 」


「分かりました。では、今木刀を持って来ましょう」


「よい! 腰にある真剣を抜け! 」


「な・・・何を言っているですかぁ! 」


「うるさいぃ! 」


「ちょーわがまま姫だ」


「もういい。レイ。好きにさせてやれ」


「しかし、ガーディアン。真剣で戦ったら・・・」


「おまえは、リンネが負けると思っているのかぁ! 」


「なんだぉとライファ!  」


「リンネは負けねー。きっと! 」


そう言っているとリンネは剣を構えてルフィサの前に立った。


ルフィサも困ってはいたが、剣を抜いた。


「どうなっても知らないですよ。リンネ姫」


「構わん! うおおお! 」


リンネはルフィサに飛び掛かった。


カン カン


と相手の攻撃を防いでいると、ルフィサの剣がテンポが早く、向かってくる。

リンネは咄嗟に、かわした。


「やはり、ルフィサの方が全然上だ」


「当たり前だろう。ルフィサに勝てる奴なんて、見た事ないし」


カン カン シュー


ザバーン


「うわぁー」


ルフィサが右に大きく振った時、リンネの左にふらつき、その後、振り落とされた剣が、リンネの治ったばかりの、左肩にかすれた。


リンネは左肩をその場にうずくまった


「リンネ姫! 」


「うううまだぁ! 」


と言ってリンネは立ち上がり攻撃するも、その後、何度も斬られた。


リンネもかわしてはいるから、重症は避けているが、もうボロボロである。

やはり、ルフィサは、1、2位を争う剣豪。リンネには無理があるのか。


「リンネ姫! これ以上はもう! 」


「ルフィサ! まだ終わってはいない! 」


「しかし、これ以上は! 」


とルフィサも、さすがに主君を斬るなどあり得ないのである。武門にも恥じる行いをしている事が耐えられないのである。しかし、手加減したり、ワザと負ける事も許されない。だって、それでリンネが認めるはずもないし、それも主君に対する軽蔑であり、武門に恥じる行為である。でも勝つ事も許されない。勝つ事は、それは今のリンネから考えると、殺すことになる。

だから、願うは、実力で自分に勝ってほしいと、ルフィサはリンネに願うのである。しかし今の状況でそれも難しい状態なのだ。だから、ルフィサは戦うのをやめるよう魂胆するしかなかったのだ。


「であれば、我を殺せ! それがこの戦いの終結であろう」


「そんな事は致しかねます! 」


「えええい! 我を愚弄するかぁ! 」


カーン


リンネは2当流をばってんにして、ルフィサの剣と重ねている。


「分かりました。リンネ姫。その姫お覚悟に感服いたしました。私は姫に忠誠を誓いまする。だからもうおやめください」


と言って、ルフィサは剣を置き、土下座して、リンネに頭を下げた。


「ルフィサ・・・よく決断した」


とレイはルフィサを褒めた。バシルもガーディアンも納得である。

ライファでさえ頷いて、それでいいと思った。

しかし、リンネだけは違った。


「頭をあげ! 剣を持て! そして今一度、我と戦え! 」


「何を言ってるんですかぁリンネ姫! 」


レイはあまりのリンネの言動に大きな声で叫んだ。


「我とそなたの戦いはまだ終わっておらぬ。我が勝つか、そなたが勝つがもう一度勝負じゃ! 」


「だから、リンネ姫の勝ちです! それが分からないのですかぁ! もうルフィサは戦えません! 」


「ならん! 立って戦うのだルフィサ! 」


「どこまで、わがままやねん」


と忘れさられていた、ウルバがツッコんだ。


「どうしても戦わなければなりませんか? 」


「ならん! いくぞぉ! ルフィサ! 」


しかし、傷だらけのリンネは痛々しくはある。それを見たら戦えないが、ルフィサも戦士だ。


「では、リンネ姫参りますよ! 」


「来い! 」


カン! 


「リンネって、なんで二刀流なんだぁ? 」


とライファがポツリと言った。


バコーン


「イテェ! 」


「黙ってろ! 」


と、そんな漫才は置いといて、二刀流であった事を思い出したリンネは、二刀流の利点を生かした。

1つの剣で剣を抑えれば、片方は防げない。


カン カン

カキーン


ルフィサが剣が、リンネの右手の剣にはじかれ、左手の剣を、すぐさま首筋に刺した。


「・・・あ・・・・」


もう誰もが決定づけだろう。

これは完全なる勝利だ。

これによって、アルタイはリンネの手によって落ちたのである。


「なんか、忘れられてないか! このウルフを」


「なんでやねん! 」


とワワチとバグが忘れられていた。


つづく

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