第三話 素直になれない人達
「さてと、じゃあそろそろ行くかな」
まるで買い物にでも行くように大崎爺さんは言った。
「そうか・・・まあ頑張れよ」
何人かが声をかける。流石にみんな普通に立って会話をするくらいには回復してきた。とは言え最後のシーンとしてはなかなかにひどいもんだ。
「ああ、みんなも飲み過ぎないようにな」
ほら、最後までこんなこと言われてる。
「さて・・・」
目を閉じたかと思うと驚くほどすっと消えた。ほんとにすっと消えるな。情がないのも理解できる。
「ウッ・・・オエッ」
「え?」
「オロロ・・・」
「ちょ・・・」
一斉に吐きだした。何事だ?
「あ~何とか間に合った・・・。」
いや、絵面的には何にも間に合ってないです。
「せめて最後くらいは明るく送りだそうと思ってな・・・みんなで吐きそうなのがまんしてたんだ」
全くこの人たちは。何をしても素直じゃない。あんまり寂しくないと言ったあの日、真夜中に酒を飲みながら涙を流していたことを知っている。
「・・・ゆっくり休んでください」
そう言って少しみんなから離れ、大崎爺さんの墓の前に向かった。
「・・・楽しんで生きてください みんな応援してますよ 吐きながらですけど ・・・ありがとうございました」
誰に聞かせるでもなく呟く。そこにはもういないことを知りながら。そして驚きながら。
一番素直じゃないのはおれかもしれない。結局本人に直接伝えることはできなかった。




