事件 2 河西慎
慎の胸はドキドキしていた。
こだまになにがあった?
どうしたらいい?
事件2 河西慎
学校に行くと宇佐美こだまの姿はなかった。
どうしたのだろう、そう思って休み時間にメールを送る。
けれど、こだまからの返信はない。
午前中で学校は終わり、慎は自転車を走らせてこだまの家の前までいく。
中からはいつも通りのラジオの音が流れていて、何にも変わらない。
何人かの人が運動しているのか、リズミカルに器具の音がしている。
ここまで、勢いで来てしまったが、呼び鈴を押しそびれていると後ろから声がかかった。
「あらら、慎ちゃん。どうしたの?こだま?まだ帰ってないと思うけど。一緒じゃなかったの?見てきてあげようか?」
と慎が何か言う前に宇佐美ひかりはドアを開けると中へ消えた。
口と手が一緒に動くって点では、こだまと同じだ。
心の中で笑った。
「慎ちゃん、ごめんね、こだままだ学校から帰ってないらしいわ、学校で会わなかった?」
学校?
慎はあわてて
「いや、忘れた事があったから追いかけてきたんですけど、じゃどこか寄り道でもしてるんですかね。たいした事じゃないので、大丈夫です。ありがとうございます」
急いで自転車に乗る。
「和樹くんによろしくね。あと怒られちゃってごめんって言っておいてねぇ」
背中から甘い声が聞こえていた。
やっぱり気にしているんだな、あんな兄貴だけどあんな綺麗な人だけど恋人なのかな。
そんな事を考えながら坂道を自転車に乗っていた。
風が強かった。
汗もひいて、さらさらと乾いていくのがわかる。
もうすぐ青々した緑の葉がぎらぎらした太陽に照らされて、すべてのものが成長する夏がやってくる。
自分も成長できるんだろうか。
取り残されている気がして慎は立ち上がって自転車を止めた。
受信メールの画面を眺めてみる。
その日が終了日だったので学校も夏休みに入るから、この先こだまに会えるのはいつになるかわからなかった。
メールの返信もなくて、電話もない。
だけど、しつこく連絡するのも気が引ける。
気になって気になってしかたがないのに。
家に向かう足が迷ってためらっていると、呼び出しの音楽が胸に響いてきた。
こだまからだ。
次回11日23時 アップします
ひかりの出来事が始まります。