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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第五章 安寧ヲ乱ス者
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XLVII アルカ王国第三王女

「ぐぅっ。はぁ、はぁ、はぁ」

 五本の指を全て潰しても口を割らない。喋らない奴はとことん喋らないと漫画で見たことがあるような気がする。これ以上は時間の無駄だろうな。

「うーん。期待しないで聞くけど、王座への道を…」

「はぁ、はぁ。糞、野郎が。ぐぅ、はぁ、はぁ、死ね」

「……やっぱり駄目か」

 短剣を取り出し、胸に突き刺す。肺が傷付けばこのまま死ぬだろう。

 王座への道順も分からない。兵士も口が固くて交渉出来ない。ウロウロしていても、辿り着けるか分からない。八方塞がりだな。

 …そうだ、壁を破壊しまうのはどうだろうか?扉の反対側が城の中心だ。この壁を破壊して道を無理矢理作れば、王座へ着くかもしれない。そうと決まれば早速準備だ。


 兵士をポーチに回収し、樽を壁際に設置する。床や壁は固い石材だが、この近さなら俺が通れる穴くらい開けられるだろう。

 樽に手を置き、魔力を流す──。


 光が晴れると、大きな穴が開いているのが見えた。俺は爆風で半分壁にめり込んでしまっているが、成功だろう。威力は申し分無いが、俺ごと吹っ飛んでしまうのはどうにかしたい。体重増加の魔道具とか無いだろうか。

 壁から抜け出し、穴の向こうを確認する。


 穴の向こうも、この部屋と同じ様な造りの部屋のようだ。向こうの部屋を反転させたらこの部屋と全く同じ造りになるな。

 ふと、ベッドの向こう側に動くモノを見付けた。兵士でも寝ていたのだろうか。交渉をしようと近付いた。が、それは兵士では無かった。


 着ている物は鎧ではなく、桃色のドレスのような服だ。年は十代くらいだろうか。…ドレスを着た金髪の女、この女なら道順を知っていたりしないだろうか。

「うぅ…」

 女は呻き声を漏らした。腕を取り、無理矢理身体を起こさせる。

「おい、起きろ」

「ぅ、一体何が…」

「お、起きた。君に聞きたいことが」

「…!ひいっ!」

 女が身を捩り、逃げ出そうとする。当然そんなことはさせない。口を手で塞ぎ、静かにさせる。

「黙れ。…よし、質問に答えてくれたら危害は加えないから。ね?」

 そう聞くと、女は首が折れそうな程、何度も頷く。まあ、この約束を守れるかは質問の返答しだいなんだが。

「君は兵士では無いよね?何者だい?…手を離すけど、叫んだりしたら殺すから」

「ぷはっ。わ、わたくしは、アルカ王国第三王女、アドリアーナ・アルカっ、ですわ。わたくしに、一つでも傷を付ければっ、アナタこそタダじゃ済まないわよっ」

「アルカ王国第三王女、ねぇ」

 確か、周辺国の一つにこの名前があったはずだ。アルベージ帝国とは交易をしているとか。詳しいことは分からないが。

「それを証明出来るモノは?」

「そ、そこの引き出しの中、ですわ。王家の紋章が刻まれた、指輪が入ってますわっ」

「あそこか…。ほら、君も立つんだよ」


 引き出しを引くと、中には紋章が刻まれた指輪が入っていた。赤い宝石が嵌め込まれており、高そうだ。指輪の他にも髪飾りや手鏡が入っている。指輪をつまみ上げ、観察しようとした。


 その瞬間、女が指輪に腕を伸ばした。それを阻止する為に、腹を蹴り飛ばし、床に崩れ落ちる。

 指輪の宝石の中をよく見ると、魔法陣らしきモノが確認出来た。この魔法陣に助けを呼ぶ当てでもあったのだろう。指輪をポーチに仕舞い、ついでに髪飾りと手鏡もポーチに入れる。

 床で蹲っている女の側にしゃがみ、髪を掴んで顔をあげさせる。

「おい、変なことをしたら殺すと、言ったよな?」

「痛っ、は、離しなさい…」

「…指を潰すぞ?それが嫌なら勝手な真似をするな。分かったか?」

「ぅ…。王女、なのに…」

「王女とか、あんまり関係無いんだわ。…それで君、この城には何度か来てる?」

「…痛っ、痛い痛い!来てるわよっ!だから離して!」

「そうか。なら、ここから王座まで案内出来るか?」

「ぇ?案内…?」

「そうだ。案内してくれたら、生かしてやる」


 俺の行動原理は、思い入れの有無だ。台地では、復活(リスポーン)で幾ら死んでも蘇ることが出来た。その三年間で、彼らは裏切らないと分かっている。そして、外の世界では誰が味方なのかも分からない。敵の方が多いはずだ。

 そんな外と台地を比べれば、俺は台地の方に立つ。あそこが故郷のようなモノだ。

 王都に居る仲間、同郷の友人、二十年前の知り合った人間の子供も居るだろう。そんな人達に危害を加えるなら容赦はしない。

 だから、俺は。台地の住人を、殺したこの国を、許さない。どんなことでもする。それが台地の為になるのなら。


 この国の人間を全員殺してやりたいくらいだ。それは現実的に不可能なので、重要な役割のある人間だけに狙いを定めた。王や大臣と言った人間が動けなくなれば、国も麻痺するだろう。

 ここで暴れすぎても、台地の為にならない。全ての国と敵対するなら、三百六十度から攻撃されてしまう。それでは護り切れない。

 なので、この女は殺さないつもりだ。もっとも、つもりなので予定を変更するかもしれないが。


 ──コンコンッ

「アドリアーナ様、お話したいことが」

「セレナっ!助け」

「おい、黙れ」

 片手で首を締め、力を加える。殺さないと考えていたが、こうも言うことを聞いてくれないとは。学習能力というモノがないのだろうか。

「…?アドリアーナ様?失礼しますっ!」


 扉からメイド服らしきモノを着た女が入ってくる。侍女とかだろうか?

「アドリアーナ様!?今お助けしま」

「おっと、動くな。このまま窒息死するぞ?」

「ぅぅ…」

「なっ!」

 第三王女を盾にし、首元を侍女に見せ付ける。コイツに案内させると決めた時から、こういった面倒な事になるだろうとは予想していた。だが、結構早かったな。

 首に入れる力を強めてしまったからか、王女の足から液体が滴ってしまっている。ちょっとやり過ぎたか。


「何者ですか!?アドリアーナ様を離しなさい!」

「離すよ?用件が終わったら、だけどね」

「用件…?化物め!何が目的だ!」

「君にお願いしてないから。ほら、王女サマ。案内してくれるよね?」

「ぐぅっ!…けほっ、けほっ、はぁー、はぁー。…セレナぁ」

「アドリアーナ様!」

 話が進まない。座り込んで息を整えている王女の腕を掴み、無理矢理立たせる。そして首根っこを掴み直し、部屋から出た。


「けほ、こっち、です」

「アドリアーナ様!」

「おっと」

「セレナ!近付かないで!」

 部屋を出て早々、侍女が刃物を取り出した。スカートの中から出したように見えたのだが、どうなっているのだろうか。

 仕方なく右手に力を込めようとしたところで、王女が叫んだ。…おや?


「ですが!」

「近付かないでって言ったでしょ!」

「なっ!そん、な」

「……へぇ」

 王女の明確な拒絶。侍女にとってそれは相当堪えたようだ。まあ、恐怖から来る反応なのだろうが、今は便利だ。この国の兵士も皆こうだったら楽だったのだが。

「さあ、先を急ごうか」


「見付けたぞ、賊め!」

「待て!アルカ王国の王女が人質に取られている!下手に刺激するな!」

「だが、この進路は王座だぞ!?アルカ王国には悪いが、ここで始末してしまおう!」

「それは駄目だ!問題になるぞ!?エリーナ様に伝えて待機だっ!」

 ちゃんと王座への進路のようだ。当然の如く周りに兵士が集まっているが、後で纏めて爆破してしまおう。

 一歩進むごとに、周りの兵士と侍女が一歩進む。移動式結界で魔物を押し退けて進んでいるみたいで、面白いな。


 視線の先に、兵士の集団と、今までにない大きな扉が見えてきた。恐らくあそこが王座なのだろうが、一応王女に確認を取る。

「王女サマ、あそこが王座かい?」

「…そうです、わよ」

「いやぁ、素直で良いね。…どうしようか。よし、ご褒美をあげるよ」

「え?ご褒美…?」

 ポーチから飴玉、もとい微治癒効果の丸薬を取り出す。この国と交易しているのは問題だが、俺は別にアルカ王国には恨みはない。出来れば他国とは仲良くやりたいと思っている。それに、簡単にこの国を売ってくれたのだ。恩すらある。この国の兵士では、こんなにスムーズに王座へと辿り着かなかっただろう。

「ほら、口を開けて。…それは弱いけど治癒効果があるんだ。お腹を蹴飛ばしちゃったからね。ごめんね?」

「……甘い。…!痛みが。…なんで」

「うーんとね。君の国や君自身に恨みは無いんだよ。憎いのはこの国。この国が悪いんだ。君は悪くない」

「この、国?」

「そうだよ。君がこんな目に会ったのは、この国、アルベージ帝国のせいとも言える。…まあ、あんまり詮索はしないことだ」


 長い廊下を進み、兵士達の集団に近付いていった。

主人公くん頭おかしい…(畏怖)

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