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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第五章 安寧ヲ乱ス者
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XLVI 交渉

「ぐううううッ!貴様ァ!許」

「うるさい」

──メキッ

「がああああああッ!」

片方の足の甲を踏み砕き、二人の兵士に視線を向ける。

「君達二人は返さないよ?そこの君、ラーヴルと言ったか?お前は帰って、所属する組織に伝えろ」

「ぐうッ!はあ、はあ。ふざけるのも、大概に、しろ」

「別にここで全員殺しても構わない。だけど、一人くらい残した方が効果的な気がしてな。…今度攻めて来たら次はお前達だ、と伝えてくれ。よろしくね?」

まあ、嘘なのだが。あの国が懲りずに攻めてくる光景が、ありありと想像出来る。痛恨は、残さない。


「じゃあこの二人は貰っていくから。…一匹は生かしておいて、残りはどうしようかなー?」

わざとらしく大きな声を発し、その場を後にする。路地裏に進路を変え、二人に止めを刺す。声が出ないように喉の足を乗せ、体重を掛けていく。

こっそりとラーヴルを見ると、暫く放心していたが、やがて転移陣のある家屋へと歩き出した。片足を引き摺っている状態なので、歩みは遅い。

二体分の死体をポーチに仕舞い、消臭剤を頭から被る。そして、意識が向けられにくくなるローブを羽織り、ラーヴルの様子を確認した。


家屋の裏に回り、樽を置いて踏み台にする。窓があるので、そこから中の様子が確認出来た。

ラーヴルが足を引き摺って、家に入ってくる。入り口付近で止まり、背後に振り向いてから、顔を前に戻した。二人の兵士を心配しているのだろうか。

そのあと、ラーヴルが石板に足を掛け、魔法陣の中心に立った。

「………『転移』」

ラーヴルが"転移"と呟いた瞬間、魔法陣が強烈な光を放つ。光が収まると、そこにはラーヴルの姿は無かった。以外と簡単だな。


部屋に入り、魔法陣を観察する。このまま転移しても良いが、ヤナギ達に心配を掛けるだろう。そこで、書き置きを残すことを思い付いた。万が一があるといけないので、家屋から出て、白い布に文字を書いていく。内容は報復に行ってくるとだけ書いた。ちょっと雑だが、別に良いか。

布を畳んで、重石となる石を上に乗せる。気が付いて貰う為に、魔法陣の近くに置く。これで準備は完了だ。

魔法陣の真ん中に立ち、言葉を呟く。何があるか分からないので、短剣を握って転移することにした。

「『転移』」

魔法陣が強烈な光を放ち、視界を染めていった。


******


暫く息苦しい空間が続いていたが、やがて光が収まり周りの様子が見えてきた。薄暗い場所、地下だろうか?

「ニコライ!ダ……!無事かッ……!」

「おや、ラーヴルくん。さっき振りだねッ!」

魔法陣から降り、ラーヴルの喉を魔力剣で切り裂く。彼の他に、一人兵士が居る。咄嗟に槍を構えたようだが、無視して首を掴む。

「お前何者だっ──!」

この兵士も同じ様にして、二人分の死体をポーチに仕舞う。さて、どう動こうか。


部屋には窓が一切無く、壁も床も石造りだ。明かりは小さな蝋燭のようなモノで、幾つか設置してある。槍の兵士が立っていた側に階段が確認出来る。そこから上に行けるのだろう。

その前に、転移陣と蝋燭を持っていく事にした。転移陣は動かすと光が消えて、元の場所に戻すと元に戻った。この場所に仕掛けがあるのか、座標が決まっているのかのどちらかだろう。石板を丸ごとポーチに収納し、蝋燭も全て回収した。珍しいモノか分からないが、物質を奪うことは敵の戦力を下げるには効果的だろう。


石造りの階段を上がると、そこは広い廊下であった。少し先に行くと窓があり、そこからの光景は見覚えがあった。

ここは帝都の王城の中だろう。帝王は城の中心に居るモノだろう。適当な方向に宛をつけ、城の中心へと進むことにした。


「オイ、貴様。何者だ」

「…」

巡回中の兵士に見付かった。というより、あの地下室に向けて歩いていたようだ。兵士の数はざっと数えて二十人ほど確認出来る。乗り込んで正解だったな。

「賊か?まあいい、捕らえよ」

その言葉で六人の兵士が動く。纏まっている敵は爆破で良いだろう。ローブを脱ぎ、魔力剣もポーチに仕舞う。そして、そのまま兵士の隊列に突っ込んだ。

「面妖な面、魔人か?…自分から囲まれるとは、能の無い奴──?」

──ゴトン

虚空から出現した樽に手を置き、魔力を流した──。


光が収まると、そこは鉄片と血肉の海であった。樽に近かった者は人の形をしておらず、一番遠かった者でも剥き出しであった皮膚は抉れており、城内で兜なんて被っていなかったので当然、頭部も真っ赤だ。

廊下が広いのもあり、壁は破壊されていない。だが、床は熱で黒く焦げて抉れている。村で使った時は色々吹き飛んだが、石材が相手では分が悪いようだ。

形の残っている剣や死体を回収し、この場を後にする。爆音が聞かれていないはずもない。誰がが来る前に移動を始めた。


「おい、侵入者は見付かったか!?」

「いや、こっちには居なかった!」

「宝物庫と王座を警戒しろ!他は見回りだ!」

俺は今、倉庫らしき部屋に身を潜めている。ウロウロして、何人か兵士を殺したが、道に迷った。この城は結構入り組んでおり、道がよく分からない。兵士を殺す前に道を聞いておけば良かった。教えてはくれないだろうが。

このまま隠れていても、警備が強化されるだけだろう。美術品の価値など分からないが、家具をポーチに収納した。それを一通り終えたら、部屋出て歩き出した。


案の定というか、兵士に見付かった。敵が一人ならスーツの防御力でゴリ押ししているが、複数人居るなら水鉄砲で相手をする。丁度良い、この兵士に道を聞こうか。

「魔人?…アーノルド隊長に報告を…いや、ここで…」

「こんにちは」

「…人間の言葉を騙るな魔人め」

「失礼だ、なっ!」

兵士と距離を詰め、懐に潜り込む。しかし、兵士には半歩引かれて逆に長剣を降り下ろされた。

──ガキッ

「なっ」

長剣を掴み、魔力剣の剣身を展開する。そして手首に剣身をそっと当て、手首を切り落とした。地面に手が落ち、兵士は声を上げようとする。

「おっと」

「むぐぅぅぅぅ!」

兵士の口を手で塞ぎ、叫び声が漏れないようにする。…ここで拷問は出来ないな。適当な扉を選び、そこへ兵士を連れ込んだ。


今度の部屋にも、人は居なかった。しかし、手入れされた形跡は確認出来る。例えるなら、少し高級なホテルの一室だ。兵士でも寝泊まりさせているのかもしれないが、それにしては設備が整いすぎているな。

ここなら落ち着いて交渉が出来そうだ。早速交渉を始める。

「んぐぅぅぅっ!」

「あ、窒息してたね。ごめんね?」

「ぷはっ!はぁ、はぁ、はぁ」

「気絶はしてない、か。良かった」

「はぁ、はぁ。良かった、だって?はぁ、この悪魔め!」

「悪魔、ねぇ」

ただ普通に暮らしていた平凡な村を襲った国だ。従わなかった村を武力で制圧したり、他国との戦争も日常茶飯事だとか。この国の方が悪だと思うが。


「本題に入るね。王座への道順を教えてくれるかな」

「誰が貴様なんかにっ!おーい!誰」

「おい」

兵士の口を慌てて塞ぎ、床に叩き付ける。普通に聞いても駄目だな。…拷問には、指とか性器を切り落とせば効果的なのだろうか。そういうイメージがあるが。

「がはっ」

「余計な口を叩くな。お前の命は俺が握ってるんだぞ?」

「が、ぐっ。糞がっ」

「…やれやれ」

兵士の床に投げ出されている手を見る。片手は切り落としてしまったな。半分しか無いが、無くなったら足の指で代用しようか。

小指に足の裏を乗せ、体重を掛ける。叫ばれても困るので、当然口は手で塞いでいる。

──ミシッ

「ぐむぅぅぅっ!」

「…煩いなぁ」

──バキッ

「ぐうぅぅぅぅっ!」


叫び声が収まったので、手を離す。これで話してくれると楽なんだが。

「考えは変えてくれるかな?」

「ぐぅっ。誰が魔人なんかに…、教える訳が無い」

「…そうか、二本目だ」

交渉は長引きそうだな。

おや?主人公の様子が…

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