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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第五章 安寧ヲ乱ス者
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XLV 殺戮

「…ニャ?何が…重い、ニャ…」

 ──ゴロッ

「…ニャ?お師匠サマ…?嫌ニャ!嫌ニャ!嫌ニャ!そんなの嫌ニャ!…何でこんなことに…」

「何でこんなことに、って君達が攻めて来たんじゃないか」

「ニャ。…お前が!お前のせいで!殺す!絶対に殺す!フーッ!フーッ!」

 猫女は立ち上がり、近くに落ちていた短剣を拾い上げた。あれは確か、お師匠サマとやらの武器だったか。大きく振り上げ、俺の心臓に向けて降り下ろされた。

 ──パキッ

「忘れたの?蛮族だな、ほんと」

 短剣は結界に阻まれ、猫女の動きが止まる。結界を貫通すらしない。握力も無くなっているのだろう。

 短剣を猫女の手の中から取り上げ、喉に深々と突き刺した。鮮血が吹き出し、地面を赤黒く染めていく。地面に倒れ付して痙攣していたが、程無くして命が停止した。


 猫女だったモノとお師匠サマと呼ばれた死体、それと誰のモノか分からない肉片を見下ろす。…魔法具がどうのこうの言っていたな。面倒だから、死体をポーチに仕舞って後で分別しようか。

 まだ息のある兵士の元へと歩いて行くついでに、肉塊をポーチに収納していく。…どうやら人間の死体は一枠で済むようだ。


 あらかた肉塊をポーチに仕舞った。兵士はどこか骨折でもしているのか動けないらしい。取り敢えず両足の骨を体重を掛けて踏み抜き、簡単に逃げられないようにしていく。流石に下とは違い、命乞いをしている者は居ない。腐った国の軍でも尊厳はあるようだ。

 息のある兵士全員の足を潰し、一人の兵士の前にしゃがみこむ。

「ねえ君。転移陣ってどこにあるんだい?」

「……魔物風情が」

「…これは交渉ではない、拷問だよ」

 落ちていた猫女の短剣を兵士の肩に突き刺す。刃が紫色をしているが、毒でも塗ってあるのだろうか。

「ぐぅ!ぅぅぅぅッ!」

 肩に刺さった短剣を抉るようにして、ゆっくりと抜いた。

「ぐあああああッ!!」

「それで、教えてくれる気にはなったかい?」

「グッ、魔物に教える訳がねぇだろ…!」

「…そうか。参考になったよ。どうも」

 兵士の喉を切り裂き、次の兵士の所へ移動する。兵士は自分の血液で溺れているようで、バタバタともがいている。

 …誰も彼も俺のことを見て、魔物だ魔物だと言ってくるがどういうことだろうか?そう考えて今の自分の姿を思い出す。…別に魔物呼ばわりされても困ることは無い。いや、メリットすらあるか。


 転移陣と言う名称からして、空間を越えて移動出来るモノなのだろう。絶対に放置していて良いモノでは無い。ただ、どんな形状をしているのかすら分からない。

 次の兵士の元へ赴き、同じ質問をする。

「転移陣ってどこにあるんだい?」

「…」

「ねえ、身体に聞いてみようか」

 同じ短剣を肩に突き刺す。その瞬間、前の兵士と同じ様に絶叫した。…この短剣は抜く時に肉を抉るような形状をしている。毒らしきモノも効いているのだろう。

「ぐうッ…」

「喋らない?…もう良いか」

 兵士に止めを刺し、別の兵士の方に歩いていく。あと三人か。口を割らなかったら薬物で狂わせるしか無いだろう。


「君は…話してくれるかい?」

 別の兵士の死体を抱いている、兵士の元に足を運ぶ。ブツブツと呟いているが、もしかして呪文だろうか。

「…彼の者の傷を癒せ『ヒール』彼の者の傷を癒せ『ヒール』彼の者の傷を癒せ『ヒール』彼の者の」

「君のソレ、死んでるよ?」

「かっ彼の者のっ、傷をおぉ…。うぅ…」

「君は、教えてくれるかな?」

「隊長…!ダルコさん…!皆…!うぅっ…」

「…まだ、君の他に二人だけは生きているよ?…ねえ、生きて帰りたいよね?そしたらやり直せるよ」

「ふ、二人…。うあ、ニコライさん、ラーヴルさん…!な、治さなきゃ、僕が、治してあげなきゃ」

「転移陣、どこにあるのか教えてくれるかな?そうしてくれたら、あの二人は生かしておいてあげる」

「あ、ああああっ!教えますっ!教えますからっ!」

「そうか。…言っとくけど、虚偽の内容を答えたらあの二人の命は無いから。例えば…そうだな。距離が離れすぎていたら、安全の為に三人に止めを止めを刺してから探しにいくからね」

「ひいっ!ほ、本当のことを話ますからっ!…あそこのっ、大きい家屋の中ですっ」

「へえ、ちょっと見てくるよ」


 村の中で一番大きな家屋、村長の家だったりするのだろうか。その中を覗くと、部屋の真ん中に大きな魔法陣が刻まれた石板が置かれているのが目に入った。家の外には、何も積んでいない馬車と黒い馬が置かれている。

 …この石板が転移陣なのだろう。さて、どうしようか。破壊しても良いが、あの国は懲りずに別の人間を送り出すだろう。俺が向こうに転移して暴れてくるのも良いかもしれない。

 ただ、これが罠だった場合は別問題だ。兵士に先行させれば使い方も分かるし、一人を残しておけば後で転移していっても兵士と間違われるかもしれない。

 そうと決まれば、早速後片付けと準備をしよう。


 大人しく主人の帰りを待つ馬の首筋に、拾った兵士の長剣を突き刺す。馬に恨みはないが、兵士に逃げられても面倒だ。足は潰しておくに越したことはない。二体分の馬肉がポーチに追加された。

 馬車や兵士の死体、そして武器らしきモノはすべて収納する。血が残っているが、これは仕様がないだろう。人間の死体なんてどうするのかと思うかもしれないが、色々使い道を思い付いている。


 粗方掃除を終え、息のある兵士の元へと赴く。先程から、情報を教えてくれた兵士が地べたを這いずって移動しているのが見えていた。何をしているのか暫く見ていると、どうやら負傷した兵士の元に向かっているようだ。自分の足を治してから動けばいいと思うのだが。

「やあ、元気そうだね」

「彼の者の傷をい……」

「何をしているんだい?」

「ひっ!」

「治そうとしていたんだよね?よし、待ってな。もう一人も連れてきてあげるよ」

「…えっ」

 困惑した顔で兵士は固まる。殺し合ってた相手からそんなことを言われるのはおかしい。まあ当然の反応だな。


 兵士の片足を掴み、引き摺って兵士を運ぶ。もう片足が変な方向に向いているが、別に構わないだろう。

「ぐうぅぅぅっ!貴様ァ、殺すなら殺せェ」

「まあまあ。落ち着いて」

 三人の兵士を一ヶ所に集める。さて、始めようか。

「回復魔術の君。一人を治しなよ。足とか折れてるだろうし」

「貴様ァ…何が目的だ」

「ほらほら、早くしないと気が変わるかもしれないよ?」

「に、ニコライさん!足をっ」

「俺はまだ良い。先にラーヴルの方を」

「あ、わ、分かりましたっ!」

 兵士が回復魔術を唱え、ラーヴルと呼ばれた兵士の足を癒していく。俺が引き摺って持ってきた方だな。

「彼の者の傷を癒せ『ヒール』っ。彼の者の傷を癒せ『ヒール』っ。ラーヴルさん足は動きますか?」

「ぐ、う。ああ。動く」

「では、腕の方も──」

 ──ドシャッ


「…え?」

「ぐあああぁぁぁああッ!」

「はーい。そこまででーす」

 ニコライと呼ばれた方の片腕を切り落とす。地面に落ちた肉塊を踏みつけ、もう片腕を狙って魔力剣を降り下ろす。

「貴様ァ!嘲笑いおってェ!」

「はい、君もだよ」

 憤慨したラーヴルが立ち上がって、俺に向けて拳を振り上げた。だが、負傷している人間の動作は全く素早くない。俺はその兵士の右目を狙って魔力剣の進路を変えた。

 ──ビシャッ

「ぐうあああああああっ!」

 右目だけでは無く、顔の半分程が血で染まる。ちょっと力を入れすぎたかな。


「な、なんで…」

「侵略者相手に、約束を守る訳が無いだろ」

 ニコライと呼ばれた兵士の残った腕を切り落とし、腕はポーチに仕舞った。転移陣の使い方を教わるのはラーヴルという兵士だけで良いか。

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