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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第四章 再び外界へ
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XXXV 剣士

 内庭へと戻る為に通路を歩いていると、拍手木(ひょうしぎ)を打ち合わせるような音が聞こえてきた。音の間隔は不規則だが、音の発生源が近付いている気がする。ヤナギとシズカが何かやっているのだろうか。


 内庭に着いて目に入った光景は、何かが高速で移動している光景だった。目を凝らすと、その何かは木刀を持ったヤナギとシズカだということが分かった。こんな動きを出来るというだけで人物は限られてくるのだが。

 どんな過程で模擬戦をすることになったのかは分からないが、互いに笑みを浮かべながら戦闘をしている。戦いが楽しいなんて俺には余り理解出来ないが、当人達は楽しいのだろう。

「我では目で追えんな…」

「俺にも良く見えないよ。それが普通だって」

 もし俺が歴然の剣士とかであったら、この光景から学べるモノがあるのだろうが。今ここにいるのは、生産職二人と後衛職とヘビ(精霊)だ。ただ、精霊の高スペックな身体を持つタイショーだけは視認出来ているのかもしれない。


「む、見ておられましたか。お声を掛けて頂ければよかったのですが」

「なんか楽しそうだったからな。急いでもないし」

「いやぁ、久し振りに全力で動いたよ」

「何をシズカ殿。まだ身体強化も魔宝具も使ってないのでは?」

「それはヤナギさんもじゃない」

「フフ、そうですな」

 本当に仲が良いな。髪色が違うが、端から見ていると孫とお爺さんのようにも見える。ゲーム時代だとは思うが、どこで会っていたのだろうか。


「なあ、二人はどこで会ったんだ?何度か会っているような口振りだけど」

「…確か、ルティエラ商会が出来て、儂がギルドの修練場に赴いた時、でしたな」

「そうだね、初め精霊だとは思わなかったからね。心配になって声を掛けたんだ」

「そこで何度か顔を合わせましたな。居合も、教えていただいたのはシズカ殿です」

 そうだったのか。刀っぽい剣を持たせて使い方は余り説明して居なかったのに、刀の使い方をいつの間にかマスターしていたのはそんな理由があったからのようだ。

「コイツの実家は代々剣道の家系らしいぞ。剣の才能があるのだな」

「へえ、そうなんだ」

「あれ?何かコヨミとイブキくん仲良くなってない?」

「…そうか?」


 ******


 コヨミとシズカは、一晩うちの商会へと泊まった。そして翌日に王都を出ていった。シズカは出発ギリギリまでヤナギと模擬戦をしていたようだが、コヨミは何もしていない。強いて言えば魔力回復ポーションを買い足していたくらいである。外界と比べれば土地が狭いので事故などなく、すぐに聖国へと着くだろう。


 もうそろそろ外界へと降りた方が良い日にちだ。俺が外界で受けたような制限のある依頼は、期間が長かったので大丈夫だとは思うが。急にペースが落ちて怪しまれるのも厄介だ。まあ、まだ竜王から何の連絡もないので出発出来ないのだが。

「それでは紹介します。私の雇い主に当たる人物のイブキさんです。皆さん、失礼のないように」

 今日は傭兵と調薬師の皆に俺を紹介してもらうことにした。やっと、だが。

 ルティエラの上司と言われて従業員がざわついているが、別に気にしなくても良いと思う。経営はルティエラに預けてあるし、口出しする気などないので何も変わらないのだから。


「しょ、商主。表に…王家の馬車が」

「王家が?」

「あ、俺が出るわ」

「オーナーが言っていた報酬ですか?」

「そうだね。じゃ、行ってくる」

 王家の馬車がこんな所に出てくる理由は限られる。九割集会の件だろう。傭兵の受付から外に出る。すると旧商店の方に停まっている馬車を見付けた。白と青の装飾が目立つ馬車と茶色を基調とした馬車の二台が並んでいる。野次馬が集まっているので目立ちそうだな。


「イブキだな。カイギス王から託けを預かっている」

「あ、はい」

 御者の男性へと声を掛けようとした所、派手な方の馬車から一人の女性が声を掛けてきた。名乗ってなどいない筈だが、俺が分かったらしい。あの王の使者は有能なのだろう。使者が馬車から降り、俺に向き、口を開いた。

「『約束の報酬だよ。頑張って来てね』以上だ」

 …それだけ、なのだろうか。もう少し激励の言葉とか合っても良いと思うのだが。あの竜王らしいといえば、竜王らしい伝言だが。

 そして、今更気付いたがこの使者は魔人種だ。珍しいな。魔人は有用な能力を持っている人材ばかりで、国や大きな商会主が積極的に勧誘している。うちの商会には居ないが、それだけ珍しい存在ということだ。

「そしてこれが子結晶だ。この紙に指示の種類が分けられているので見ておくこと」

「はい、有難う御座います」

「そして報酬がこの馬車だ。馬がいると聞いているが、繋いで見てくれ」

 やっぱりこの馬車が報酬であったようだ。色も地味目だし、外観は文句がないが。内装が気になるな。


 取り敢えず言われたようにする為、ポーチから馬ゴーレムを取り出した。

「うおっ!」

「え?」

 馬ゴーレムを取り出した所、使者が大きな声を出した。ポーチがあるこということを竜王から聞いていなかったのだろうか。

「…申し訳ない。続けてくれ」

 馬ゴーレムを起動して、微調整しつつ、馬と馬車を繋げた。


「どうやら問題ないようだな。では帰還するぞ!」

 王家の馬車は城へと戻っていった。馬ゴーレムは停止さえすれば馬車と一緒にポーチへと収納出来る。問題は内装だ。馬車の横にある扉を引き、中へと入った。

 内装が派手だと思っていたが、全くそんなことは無かった。外観と合わせても自然な色合いで、黒い腰掛けや明かりの魔道具まで付いている。地味だが家具はしっかりと高級品らしく、腰掛けに手を置くと少し沈む。普通に良い仕事するな、竜王。

 馬車をポーチに収納し、商会に戻る。そして、出発の準備を進めた。


 ******


「オーナー、いってらっしゃい」

「ああ、行ってくる」

「皆さん、オーナーを頼みます」

「ええ、この爺の目が黒いうちはイブキ様を守ります」

「任せといてよっ!」

 ──キュッ!

 今日、再び外界へと向けて旅立つ日だ。次に戻ってくる日は未定だが、なるべく早目に帰って来たいな。


 ──わふっ!

「クロも良い子にしてるんだよーっ!」

 カエデは拾った狼と遊んでたりしていたらしい。一か月の時を越え無事に仲良くなったようだ。クロは魔狼だが、尻尾をブンブン振る姿は野生を全く感じない。


「じゃあ出発するぞ!」

 馬を起動し、馬車へ乗り込む。御者は必要ないので御者台には誰も居ないが、台地を降りたら必要になるだろうな。

「フカフカだねっ!」

「竜王が用意してくれたモノなんだ」

「照明の魔道具に、…断熱の魔法陣が仕込まれてますな」

「そうなのか?気付かなかった」

 ──キュキュッ!

 王都を出て、台地の端へと進んで行った。


「すぐに着いたな」

「徒歩よりずっとはやいね!」

「これは移動が楽になりますな」

 ──キュッ!!

 タイショーがいつもより大きな鳴き声を出した。君馬車の中で寝ていたからね。この中で一番得しているのは、タイショーだろう。

 馬の横腹に手を置き、魔力残量を確認する。…たっぷり魔力をいれてきたのに、もう半分ほどしか残っていない。シアンが燃費が悪いと言っていたが、思っていたより悪いな。その分、本物の馬が維持出来る速度を超えていたし、幸い俺は調薬師だ。これを見越して魔力回復ポーションを多目に用意して来たので大丈夫だろう。

「ありがとな。下に降りたらまた頼むよ」

 首を俺の手に擦り付けてくる馬に声を掛けて、機能停止する。無駄に細かい動きをするが、必要あるのだろうか。

「よし、降りるか」


 枯れた森の黒い地面に足を着け、歩き出す。ここは木々が邪魔で馬車が出せない。広い所に出たら馬車を頼ろうか。

今回文章おかしいです。

寝不足プラス空腹で執筆なんてするものじゃないですね。

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