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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第四章 再び外界へ
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XXXIII 巫女

「カイギスさん。やっと六人揃ったんだァ、オレ達を集めた理由を教えてくれねえか?尤もらしい建前じゃなくなァ」

「…うん。そうだね、わざわざこんな所に呼んだ理由を話そうか」

 ただの集会では無かったようだ。別の理由でもあるのだろうか。


「…紅紫月の二十日目の事だ」

 今は橙月であるはずだから、二ヶ月前くらいか。俺がこの世界で目を覚ました日から十日前、だな。

「巫女は、しってるかい?」

「フム。知っているぞ。三国のどこかにいるとか」

「…その認識は間違っている。巫女は国に一人ずつ、三人いたんだ」

「…ブラフか」

 神託を授かれるという巫女。その存在以外の情報は一切無く、プレイヤー達は教会の発言力を強くする為の作り話だろう、という結論となっていた。


「巫女には、天神システィーク様からの導きを受け取る力がある。その予言は、大規模な天災や、複数の迷宮からの魔物暴走(スタンピード)の被害を最小限にすることが出来た」


「そんな巫女だが…、紅紫月の二十日に、三国の巫女が死んだのだ。それも一日の内にな。巫女は死なないという訳では無いのだが、同時に、しかも三人というのは長く生きてきた私でも前代未聞の事だ」


「次世代の巫女の育成を急いでいるが、何故か上手くいかない。その件以外にも、断絶の霧の消失、未知の魔物の侵入。そして…、君達の出現だ」

 竜王が俺達を見渡す。真剣な眼差しはただ視線を向けるだけで圧迫感が凄い。だが、直ぐにその圧迫感も鳴りを潜めた。

「元老院どもは世界の終わりだとか、神が死んだと言って塞ぎ込んでいるが、私はそうは思わん。…神聖魔術は使えるのだからな。君達を定期的に集めていた理由だが。外界に興味を持ち、この台地から出ていってしまうのを防ぐ為に、君達を拘束していたのだ。三国会議の結果、この国の主導でな」


 俺だけは竜王が干渉する前に出ていってしまったので、止められなかった、というところだろうか。巫女が死んでから姿を現した、居る筈の無い人間だもんな。巫女の死と関連付ける者も出てくる、か。

「おい、オレ達は容疑者ってことかァ?勘弁してくれねぇか」

「そうではない。君達は天神様の加護を持つ。巫女とは違うが、同じ天神様との繋がりなのだ。そこで元老院は、加護を持つ君達を国の盾に据えようと動いていたわけだ」

 巫女が死んだ理由は分からないが、神の加護であるポーチや地図が使えるのならば、似たようなモノなのかもしれない。未だにどんな原理で機能しているのか分からないが。

 このまま拘束されるのは避けたいな。台地も守りたいが、情報を集めるのも大切だろう。まだ行ったことの無い土地もあることだし。


「だが、私を含めた一部はそうは思っていない。現にイブキくんが自由に動いて集めた情報は、非常に有益だ。恐らく他の訪問者達も、強制せずに自由にしてもらったほうが良いのだろう」


「そこで、だ。私が三国を説得し、君達を自由にする。これはイブキくんの手柄ですんなり通るだろう。だが、非常時には戻ってきて欲しい。外敵の相手をする必要は無いが、君達の加護は有用だ。外界の民が友好的なら問題は無いが、万が一戦争になった時は兵站を担当して欲しい。それだけだ」

「矢面に立たされねぇなら良いがァ…」

「フム。我もこの台地には思い入れがある。兵站だけとは言わず、敵の排除も担当しようか?」

「それは有難いが、強制はしない。君達の出身は異界で、私達はこの台地で産まれ育った。本来なら私達だけで対処しなくてはいけない問題だからな。代わりといっては何だが、非常時以外の時は我々が君達のサポートをさせて貰う」

 俺は元々台地を、自分の知り合いや友人を守る為に行動をしてきた。それが国家公認になる訳だな。緊急時には戻ってくる予定だし、俺には全くデメリットは無い。


「非常時ということを知らせる方法だが、これを受け取って欲しい」

 竜王が後ろの配下から何かを受け取り、こちらに見せてきた。それは二つの大きさの違う、綺麗な青色をした結晶に見える。

「これは『召集の結晶房』という魔法具だ。ある迷宮から産出したモノで、中心の大きな結晶に魔力を通すとこの通りに色が変わる。色は一方通行だが、それだけでも便利だろう」

 魔法具というのは、ダンジョンで稀に見付かる魔道具だ。仕組みも解明出来ず、複製も出来ない代物で、俺も一つだけ持っている。魔法具、そこから転じて魔宝具とも呼ばれることがある。

 竜王が大きな結晶に魔力を流した瞬間、小さな結晶の色が変わった。青色だった結晶は真っ赤に染まっている。そして、緑色、黄色へと変化した。しょっぱい効果だと思ってしまったが、現代の携帯電話と違い、圏外というモノもないのだろう。色だけの通信手段だが、そこは工夫をすれば問題ない。


「色によって伝えたい内容を変えようと思うんだ。まだ決めて無いけど、後日送らせてもらうよ。受け取ってくれるかい?」

 俺にはデメリットが無いどころか、緊急時が分かるというのは普通にメリットだな。断る理由は無いが、皆はどうだろうか。

「私は受け取ります。友人も居ますから」

「私も受け取るよ。ここが自分の居場所だからね」

「我も受け取るぞ。我の出発点はここだからな」

「オレも受け取るぜ。護るべき女も居るからなァ」

「僕も!研究もまだまだ終わらないしね!」

「オレも受け取らせてもらう。家も立てちまったし、やっとパトロンも付いたからな」

 プレイヤーの全員が受け取る旨を示した。俺の考えは、自分でも異端だと思っていたが、全員即決するとは思わなかった。考えようによっては国に遣えるようなモノだ。悪くない条件だとは思うが。


 ******


 集会は解散となり、全員の姿は門の近くにあった。竜王までこんなところに出て来ているが、大丈夫なのだろうか。新人であろう門兵が、ガチガチに緊張してしまっている。

「案が練り上がったら使者に子結晶を持たせて送らせてもらうよ。イブキくんの馬車もその時に、ね」


 門を出て、本当に解散となった。王城で集会というだけでも緊張するのに、竜王まで出てくるとは思わなかった。巫女の死という不穏ワードも飛び出して来たが、俺が今ここに居ることと関係はあるのだろうか。普通に考えればありそうだが。

「オレは市場を見てくるわ、シアンはどうする?」

「僕はシガル王国へ帰るよ。実験途中で抜けて来ちゃったし」

「おう、気ぃ付けろよ。あんま速度出してっと事故るぞ」

「クランクさんじゃないんだし、大丈夫だよ。それじゃあ皆!またね!」

 シアンが沈みかけている太陽とは反対側へと駆け出した。もう日がくれそうだが、王都の外へ出るようだ。速度の早いゴーレムでも開発しているのだろうか。

「じゃあオレも市場を見てくるわ。今度研究交換でもしようぜ」


「オレは…どうしよっかなァ。プレゼントでも買って帰るか」

「…プレゼントって誰に?もしかして…」

「あァ、嫁にな」

「…奥さん、何人居るんだ?」

「あーっと、オーレリアとベニタとブレンダと──」

「すまん、もういい。奥さんが待ってるんだろ?早めに帰ってやれよ」

「おォ、そうだな。じゃあな、イブキ」

 日本なら問題になるであろうが、ここは異世界だ。一夫多妻という制度は、相手を養えるならば問題は無いし、アイツの所に居るのは訳アリばかりだ。その関係に口を出す必要は無い。


「なあ、イブキくん。ヤナギさんも帰って来ているんだよね?今から行っても良いかな?」

「ヤナギか?多分うちの商会に居ると思うけど」

「我も行っても良いか?魔物に刻んだ魔法陣というのを見せてくれないだろうか?」

「それは倉庫にあったかな…。誰かが移動させてなければあると思うけど」

「是非見せてくれ!無かったら普通に買い物して帰るから!」

「それなら良いけども」

 シズカとヤナギに接点などあっただろうか。それにコヨミが見たいという魔法陣も倉庫に残っているか分からない。ルティエラに預けたからな。


 二人を連れて、商会へと歩き出した。

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