XXXII 王城
──コンコンッ
暫く雑談をしていると会場の扉がノックされた。外界の魔術について話していた所、コヨミが食い付いてきたのだ。詳しいことは分からないので、困ってしまった。
「遅れてすまんな」
「あれ?もしかして!」
入ってきたのは、銀髪の大男と青髪の青年だ。青髪の青年は見覚えがあるな。
「シアンか!」
「そうだよ!イブキ!いやー嬉しいね」
「ん?お前ら知り合いか?」
円卓の六席が全て埋まり、新しく来た二人と自己紹介をし合う。
「オレの名はクランクだ。今は錬金術師。よろしくな」
大男はクランクと名乗った。銀髪に黒目、そして筋肉の鎧。クランクとは面識は無いが、とこかで聞いた気がする名前だ。確か…。
「あっ、蒸気機関を再現した方ですか!?」
「…ぅむ。それはオレだが…」
「クランクさん、それ定着しませんでしたよね?」
「あんまり言うなよ、シアン。魔力なんて便利物質があるからな…」
製作者クランク、という名前をゲーム内の売店で見たことがあった。それも結構安い値段で。物好きは買うかもしれないが、魔法陣で良いやとなってしまうのだろう。
「手軽な燃料さえあればだな…」
「知っていると思うけど、シアンだよ。イブキとは岩窟のダンジョン以来かな?」
「確か、そうだね。異世界で再会するとは思わなかったな」
シアンは青髪青目の青年だ。作業服のような服装で、試験管が幾つも刺さっている。シアンとは序盤のダンジョンで知り合って、それ以来の関係だ。
「さて!シアンの情報だとこれで全員だなァ!」
俺の自己紹介を終えた所で、レンが立ち上がった。そして、皆を見渡しながら声を出した。…その口振りだと、プレイヤーが六人だと知っていたのだろうか。
「六人だと分かっていたのか?」
「まあ、オレ達も半信半疑だがなァ。シアンが思い出した、らしいぞ?」
「シアンが、か?」
「他の皆には話したけど、改めて言うね。…バランスをミスって、自分のゴーレムに潰されそうになったんだけどね?走馬灯みたいに、思い出したんだよ」
「走馬灯?」
「うん。それで、神様に以来?されたのを思い出したんだ。ちょっとぼんやりとだけど、台地を護ってくれって」
神様に以来とは。というか、自分のゴーレムに押し潰されてはダメだろ。
「オレ達も半信半疑なんだがなァ。でもこんな世界だ。有り得そうだろ?」
「我も何らかの使命を持って、この世界に送り込まれたのだと思うぞ」
「では改めて、第三回"訪問者の会"を始めるぜェ!」
「わー、パチパチ~」
レンの声に合わせて、シアンが合いの手を入れる。というか、三回目なのか。
「初回は台地の変化について、第二回は外来種について、そして今回は外の世界についてだ」
「空席も埋ったことだしな」
「…なあ。そういえば、なんで王城なんだ?」
「初めはオレの屋敷だったんだがなァ、竜王が干渉してきて、な」
竜王、それはこの国の王であったはずだ。竜と人の合わせた様な姿をしており、戦闘力も高かった。俺が外に降りてから動き出したのだろうか。
「イブキ、地図とか持っているんだって?」
「色々聞きたいけど、後で良いか。…よいしょっと」
ポーチから外界の地図や魔物図鑑の写しを円卓に置く。台地の住人の為に書き写して来たのだ。出し惜しみする必要は余り無い。
「へえ、台地の周りに生息していたんだね」
「フム。登ってきたら、霧が消えたことに気付いたのだろうな」
黒炎蜥蜴は積極的に討伐され、数を大きく減らしたらしい。もう気にするほどでは無いそうだ。
「我は魔術を漁りたいなぁ」
「落ち着いたら、ね?魔術は逃げないわよ」
一通り写しを見終え、策を話し合う。まだ、こちらの存在はバレていないはずなので、色々手段はあるはずだ。
「友好的なら良いんだけどな…」
「全方位から攻められる可能性も無くは無いだろうな」
「まァ、まだ保留だな」
「外界って広いねえ」
「そうなんだよね。良い移動手段とかないかな?」
「…ん?そうだなぁ、バイクはどうだ?」
「え?クランクさん、バイクって言いました?」
「作ったんだよ。どうだ?」
「うーん。でも怪しすぎますよね、ソレ」
「あっ、じゃあぼくのゴーレムでどう?馬車を牽かせたり…」
「馬ゴーレム?どんな形状?」
「前に使ってたお古なんだけど…、ここに出すね」
シアンが扉付近に立ち、一体のゴーレムを取り出した。ソレは大きな馬の形をしており、白銀の馬鎧を纏っているように見える。
「馬力はあるんだけど、燃費が悪いんだよね…。どう?」
「有難いけど、貰って良いのか?なんか高そうだし」
「そんなに高くないよ。生体部品も使ってないし、使わないから処分しようとしていた所なんだ」
「それじゃあ貰うが…。なにか欲しい物とかある?」
「…そうだね。防御力強化のポーションが欲しいんだ。ほら、僕って潰されそうになったし。自分で作ってもあんまり品質高く作れないから」
防御力強化のポーションなら、先日作ったのがある。俺は使わないし、これで交換して貰えるなら安いな。
──コンコンッ
軽く物々交換をしていた所、扉がノックされた。プレイヤーは六人全員が揃っているが、誰が訪ねてきたのだろうか。
──私だ。入るぞ。
「失礼する。六人が揃ったと聞い──うおッ!」
部屋に入ってきたのは、赤と白で彩られた鎧を来た男だ。鎧の袖や顔に鱗らしきモノが確認出来る。そして、背中にコウモリのような翼、腰から伸びる太く青い尻尾。もしかしなくても──。
「お、君が最後の訪問者か。君は確か…毒術師、イブキくんだったね」
「え。覚えていらっしゃるのですか?」
「当然だよ。一度でも引見した者はしっかりと覚えている。王がボケていては民が着いてきてくれないからね」
「こ、光栄でございます!」
「ふふ、そんなに畏まらなくても良いよ。それで、君は外界に自分から行ったんだってね。何があるか分からないのに、凄い度胸だ」
「いえ、自分が行きたくて行っただけですので」
「お、これは地図かい?ちょっと見させて貰っても良いかな?勿論恩賞を与えよう。何か欲しい物はないか?」
「とんでも無いです!こんな情報ちょっと調べれば直ぐに分かる物ですよ!」
「何、タダでと言うのは良くない。貰ってくれ」
「は、はい…」
"竜王カイギス"はゲーム時代でも、滅多に謁見できない人物であった。多くのプレイヤーは、対応出来ない規模の魔物暴走が起きた時にしか見ることが出来ない。そして、その時の姿は"竜化"と言われる状態で、人よりも竜に近い姿となっている。レア度は通常時の方が高いのだ。ただ、一瞬だけ研究用に血が欲しいと思ってしまったが流石にダメだろう。
「んー。コレはシアンくんの作品だね?何でここに出ているんだい?」
「イブキに上げたゴーレムなんですよ。脚が欲しいとかで」
「イブキくん。もしかして、これは外界で使うのかな?」
「はい、そうです。かなり広くて」
「そうか。…馬車は持っているのかい?」
「いえ、帰ったら用意しようかと…」
「よし、最高の馬車を用意してあげよう。外見は目立たないようにするから、安心してね」
「あ、有難う御座います」
どうやら馬車を貰えるようだ。有難いことだが、"外見は"と言うワードが不安だな。
「エイデス。魔導人形のサイズを測ってくれ。シアンくん、この子を動かしても良いかな?」
「はい、ここに魔力を注ぐと起動します。そして、ここで機能の切り替えです」
「へえ、かなり本物に近い動きだね」
竜王の後ろから一人の男性が顔を出した。竜王の体格で見えなかったが、後ろに配下がいたようだ。まあ、一人で王が歩き回る訳がないから当然か。
「イブキくん。見ても良いかい?」
「は、はい!どうぞ」
「ちょっと失礼して。…ふむ」
竜王が円卓の上にある書類に手を伸ばす。パラパラと捲っているだけだが、写しとか取らなくていいのだろうか。
「はい、返すよ」
「えっ、早いですね」
「記憶力には自信があるんだ。詳しく書いてある良い書類だね」
「カイギスさん。やっと六人揃ったんだァ、オレ達を集めた理由を教えてくれねえか?尤もらしい建前じゃなくなァ」
「…うん。そうだね、わざわざこんな所に呼んだ理由を話そうか」
すっごいダルいです…
夏バテですかね




