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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第四章 再び外界へ
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XXXI 待ち合わせ

 三日後、プレイヤーとの集会の当日だ。何故か集会場所が城内なのだが、良いのだろうか。出来るだけ一人で来て欲しいとレンに注文されたので、今日は一人だ。そして、商会から購入した薬草でポーションを作って来た。どんな"職業"のプレイヤーかは分からないが、回復手段は多くても困らないだろう。レン以外の同郷の人だ、少し緊張するな。


 白い石材の壁が見えてきた。この王城は王都の中央に君臨しており、低い壁がその周囲に張り巡らされている。内部の正確な造りは分からないが、ゲーム時代に何度か招かれたことがある。青と白を基調とした内装だった覚えがある。二十年前のことなので、変化があるかもしれないが。


 城門の両端に立つ兵士に声を掛ける。兵士の鎧も青と白の金属で、陽光を反射して美しい。普通に芸術品として売れそうなくらいだ。

訪問者(ほうもんしゃ)の会合で来ました。イブキです」

「ハッ!招待状はお持ちでしょうか!」

「はい、…これですね」

 袖から出す振りをして、ポーチから一枚の紙を取り出す。これはレンから貰った物だ。流石に王城へは顔パスでは入れない。招待状には文字がビッシリと並んでおり、印やサインらしきモノが書かれているが、要約すると入城を認める、という内容だ。

「…ハイ!確認が取れました!そちらの兵が会場まで案内いたします」


 城内は記憶と余り相違は無かった。綺麗な内装だな。

 案内された部屋の前に着いた。意匠が施された大きな扉を開くと、小さな円卓が部屋の中央に配置されているのが目に入った。席は六席。そして、席の一つにはレンが座っている。

「よォ!来たか、イブキ」

「…お前だけか?」

「そんな訳ないだろ?全員この国に居る訳じゃないんだ。まだ集合時間じゃないしな」

「…そうなのか?」

「まあ座れよ。雑談でもしてようぜ」


 円卓の端には、豪華な装飾が施された剣や、この場に似つかわしくない色とりどりの飴玉が置かれている。この飴玉は俺がポーチから出した丸薬で、ゲーム時代にNPC向けに開発した物だ。現実となってから味見をしてみた所、甘くて美味しかった。効果は余り高くないが、戦闘の前に予め口に含んで置けば良いのではないだろうか。

「…お前あんまりコイツを使ってないだろ?」

「俺には剣の才能なんて無いからな。野営時の着火くらいだが、重宝しているぞ?」

「まあお前が良いなら良いが…。たまには本来の使い方をしてやってくれ」

「機会があったら使わせて貰うよ」

「…使わねぇだろうなァ。ほら、メンテナンス終わったぞ」

 レンから真っ赤な剣を受け取る。これは炎の魔剣だが、俺は焚き火の着火材に火を付けるくらいにしか使っていなかった。ゲーム時代でもそんなに使っていなく、よく燃える昆虫類の魔物に対してに使用したくらいだ。この魔剣だが、使っていれば当然傷付き、刃も磨り減っていく。自動回復なんて都合のいい効果は付いていないので、製作者であるレンにメンテナンスをしてもらっていたのだ。何かよく分からない液体やヤスリを取り出してしたが、それらは使わずに返された。


「上手いなァ、コレ」

「甘いけど一応薬だから。食べ過ぎんなよ」

「なんでコレ売り出さねぇんだァ?」

「効果が薄いしな。材料費も高くつく。ぶっちゃけ本物の飴玉を舐めてた方が良い」

「あァー、そうか。まあ、そうだよなァ」

 丸薬を口の中で転がしながら改善点を考える。うーん、貴族が物珍しさで購入していく姿しか見えない。実用性がないな。

「失敗だな」

「オレは代用できる材料さえ見付ければ良いと思うんだがなァー」

「材料か…。外の世界にあるかなぁ?」


「そういや、この1ヶ月で何か作ったか?」

「試作品はな。やっぱゲームより現実だぁな。感覚が全くちげェ」

「ゲームより良い品質で作れそうだよな」

「まァ、それは良いが、作りすぎて箱が溢れそうなんだよな…」

 この世界をゲームだと思っていた頃は不便なことが多かった。触覚も無いし温度も感じない、嗅覚も味覚も未実装。現実と変わらないのは視覚と聴覚だけだ。

 ただ、魔力の感覚はゲーム時代と同じだった。温度とは違うが、暖かく感じられる粒子が動くイメージで、この世界でも難なく扱えた。思えば温度が感じないはずなのに暖かいなんて変だったな。それだけしか再現出来なかったのだろうか。

「この前ちょっとダンジョンに潜ったんだけどなァ?めっちゃ寒かったからなァ」

「ふぅん」


 ──コンコンッ

 ──ここが会場でございます

「お、来たな」

 会場の扉がノックされる音が響く。どうやらプレイヤーが到着したようだ。もちろんプレイヤー全員には話したことが無いので、全く知らない方の可能性もあるが。


「すまない、遅れた。む?新顔か?」

 二人の人間が扉から入ってきた。一人は黒髪黒目の女性だ。特徴的なのは花柄の和服を着ている点だ。その和服は歩きやすくする為か、丈が短くなっている。

 そして、二人目は真っ黒なローブで全身を包んでおり、大きなとんがり帽子を頭に乗せている。帽子の隙間から、白髪と紅眼が覗いている。

 二人とも見たことがあるな。

「初めまして。イブキです」

「イブキ…?ああ!"毒術師"くんだね!」

「フム?噂より随分マトモだな。もっと禍々しい奴だと思っていたんだが」

「そこは…まあ」


 二人が椅子に着き、お互いに自己紹介をする。まあ、お互いに知っていたようだ。呼び名がちょっとアレだが、記憶されていたというのは嬉しいことだな。

「改めて自己紹介をしよう。私はシズカと言う。システム上は裁縫師だが、剣士を名乗っている」

「"剣姫"でしたよね?逸話は有名じゃないですか」

「私はそこまで出来た人間ではないのだがな」

 ゲーム時代、最高位の"一騎当千"と言う名前のクランがあった。生産職を推奨しているゲームシステムだったが、別にプレイヤーは魔術が使えなかったりする訳ではない。そして、戦闘を極めた者達が集まるのが、その"一騎当千"であった。


「"剣鬼"とも呼ばれていたがな。呼び捨てで呼んでくれて構わない」

 "剣姫"。またの名を"剣鬼"。この二つ名は、大規模な魔物暴走(スタンピード)が起きた時に付けられた。

 また、その時に着ていた服装が大鬼(オーガ)の変異種の厚皮で作った服。今着ている花柄の和服、を着けていたのも関係している。それと、その服を作る為に、幾つものダンジョンで一時的に大鬼(オーガ)が消えたことも関係しているのだが。


「フッ、では我の自己紹介をしてやろう。我の名はコヨミ!システム上は錬金術師だが、その正体は大魔導師よッ!」

「知ってますよ!コヨミさんも有名ですよねっ!」

「我も呼び捨てで良いぞ。まあ、まだ二つ名は付いておらんが、直ぐに全世界へとその名は轟くだろうなッ」

「殲滅力だけで言えばピカイチだと聞いています。確か六属性使えるのでしたよね?」

「フッ、この世界には習得していない魔術もあるだろう。何か見付けたら教えてくれ」


「私はイブキと申します。調薬師一筋でやって来ました。ポーションが御入り用なら作りますよ!」

「フム。"毒術師"なんて二つ名を持つから、てっきり毒ばかり作っているものだと」

「毒と薬は表裏一体ですからね」

 俺が"毒術師"なんて物騒な二つ名を持っているのは、小さな魔物暴走(スタンピード)が起きた時に、大量の毒物をばらまいてしまったら、周りに付けられたのだ。

 その時に使った毒は、直ぐに無毒化するので環境に重大な悪影響はないと判断してつかったのだが。使っていた毒の種類が融解毒だったのもあるかもしれない。


「なァ?イブキ、どうだ?」

「どうだ、ってお前…。教えてくれても良かったんじゃねえか?」

「それじゃあ面白くねぇだろォ?」

 こんな有名人が来ているなら、俺が外に行かなくてもどうにかなったのではないだろうか?最も、冒険したかったから大地に降りたのだが。


 ゲーム時代のこと等を雑談しながら、残りのプレイヤーを待った。

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