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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第三章 見知らぬ世界へ
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XXVII 巨人

 昼まで自由行動としていたが、皆の姿がテントの中にあった。

 ヤナギは刀を解体して整備しており、カエデは大杖に内蔵されている水晶体を磨いていた。俺とタイショーは横になっており、すぐ近くにタイショーの顔がある。


 俺も寝ているのは飽きたので、武器の整備をすることにした。魔力剣と特殊なドライバーを取り出し、ネジを外していく。外装はミスリルとよく分からない金属の合金で、製作者に聞いても配合率等は教えてくれなかった。内部は手出しが出来ない部位と、定期的に整備した方が良い部位がある。ブラシで細かい所を掃除して、魔力の剣身の根元を柔らかい布で拭いて終わりだ。

 次に水鉄砲を取り出す。これも同じドライバーでネジを外せる。内部はシンプルで、水を生み出す魔法陣と風を生み出す魔法陣が破損していないことを確認し、汚れを拭いていく。毒を送り出す部位の仕組みだけは分からないので、手を出さない。ポーチに繋げるとか、一体どうすればそんなことが出来るのか。


 暇な時間を潰して、残りの試験期間を過ごしていった。


 ******


 五日目の午後。今日がCランク昇格試験の最終日だ。

 あれから時間が過ぎ、他の冒険者達にも進展があった。女冒険者達は二頭の混沌大熊を討伐しており、男冒険者はまだ討伐出来ていないようだ。どちらも今日までに、討伐証明部位を持ってこなければノルマは達成しない。だが、別の加点があると聞いていたので、合格はするのだろうか。


 テントの前で焚き火をしていると、女冒険者達が戻ってくるのが見えた。顔は俯いており、悲壮感が漂っている。

「…くそっ」

「…見つからなかったね」

「今回がダメでも、次があるさ…」

 この女冒険者達は怪我らしい怪我は負っていない。低ランクで冒険者を燻らせている余裕は無いらしいし、そういう所で加点されて合格すると思うのだが。


 職員と女冒険者が話しているのを尻目に、野営セットを片付ける。夜に出発して、休憩を挟みつつ、ファーの街に戻るらしい。夜間の移動は危険だと思うが、これも採点箇所のようだ。街で再び混沌大熊の確認を行うらしいので、既に背負子に括り付けている。分かりやすいように外から見えるように首を括り付けたが、とびきりの異彩を放っている。団子のように頭部が連なっているのは、ある映画ほワンシーンを思い出す。加工しない限り、動いたり喋ったりはしないのだが。


 日が傾き始め、木々の影が濃くなっていく。そろそろ日没だが、男冒険者は帰って来ないのだろうか。混沌大熊が狩れようが狩れまいが、時間厳守は必要だと思うので、昇格は難しいのでは無いだろうか。


 馬車の近くで時間を潰していると、女冒険者の一人が話し掛けてきた。

「アンタ達…。イブキと言ったかしら?野営地から動かないと思っていたら、既に目標を達成していたのね。良い腕してるじゃない」

「そうですか?…アルビナ…さん、でしたっけ?」

「ええ、そうよ。敬称は必要ないわ。今は同ランクだけど、すぐにアナタ達の方が高ランクになるわよ」

「混沌大熊が一体足りなかったようですけど、アルビナさん達もCランクに上がれるんじゃないんですか?採点箇所は大熊の討伐だけじゃないようですし」

「…そうなの?パーティー全員での昇格は無理だと思ってけど、少しは希望が持てそうね。ありがと」

 女冒険者との会話をしたのは、冒険者をする上で多少の交友関係を築いていた方が良いと判断したからだ。自分達の情報をうっかり漏らしてしまわないように気を付けなければいけないが、それなりの見返りもあるだろう。冒険者しか知らない噂話とか有るかもしれない。


「(イブキ様、何かが来ますぞ)」

 ヤナギが睨む方向を見る。良く見えないが、土煙のようなものが上がっているのに気が付いた。耳を澄ますと、地鳴りのような音が聞こえてくる。その音は時間が経つにつれ、はっきりと聞こえるようになってきた。

 ──ズウゥゥゥンっ!ズウゥゥゥゥンっ!

「時揺れっ!?何なのよっ!?」

「これは…」

「…まさかっ!でも」

 ──ズッッダアァァァァンっ!

 木々をへし折りながら、ソレは姿を表した。一見、人のように見えるが、隣の木との対比でそうではないと気付く。ソレの正体は灰色の肌をした、一つ目の巨人であった。四つん這いで移動をしており、瞳には知性を全く感じない。巨人種等の亜人種では無く、普通に魔物だろう。


「あれは…グウィンさん!?」

 巨人に追われているのは男冒険者だ。どうやら巨人に追われたまま、野営地まで引っ張って来たようである。所謂MPKモンスタープレイヤーキル状態だ。もしかしたら、反ギルド組織の工作員なのかもしれない。そんな組織聞いたこともないが。

「た、助けっ。あ。」

 ──ズダァァンっ!

 男冒険者が小石に躓き、巨人の手の中に収まった。収まったというより、叩き付けて握ったので、形が残っているかすら怪しいだろう。

 巨人は立ち上がり、男冒険者を握り締めている右手を口に運んだ。巨人は光悦とした表情で、肉を咀嚼している。この男は、本当に何がしたかったのだろうか。


「アイツっ!鉄皮の巨人(ジレイ・ギガース)なんて連れてきやがった!一体何のつもりよっ!」

「っ!皆さんっ!馬車に乗り込んでくださいっ!クリントさんっ馬車を──」

 ──ズッダアアアアァァァァァンっっ!!

 巨人が大きく前に跳躍し、少し前に着地した。このままでは戦闘になるだろうが、余り手の内は晒したくない。どうしようか。

 巨人は女冒険者の一人を標的に決めたようで、手を伸ばす。その巨体からは想像出来ない速度で、女冒険者の腕を摘まんだ。この巨体だと、自重でまともに歩けないと思うのだが。…全部魔法だから、で解決するか。


「あ"ああああああああっ!!!」

 一番背の低い女冒険者が悲鳴を上げる。巨人が女冒険者を引き寄せようとしたその時、仲間の女冒険者が剣を振り下ろした。

「ナタリアを放せぇぇぇっ!!」

 ──パキンッ!

 巨人の指の付け根が砕け、切断される。ナタリアと呼ばれた女冒険者は巨人から解放され、地面に落ちた。摘ままれた腕を見ると、肘の部分が砕かれており、骨や肉がはみ出していた。

「ナタリアっ!しっかりしなさいよっ!お金貯めて楽するんでしょっ!?」

「…うん」

「歩いてっ!馬車まで気張ってっ!」

「…うん!」

「イアンナっ!神聖魔術の準備っ!」

 負傷した女冒険者にリーダー格の女冒険者が肩を貸す。神聖魔術の準備を命令された女冒険者は馬車へと駆け出した。


「ふむ、どうしますかな。イブキ様」

「俺達も撤退で良いだろう。手の内を明かしたくないし、ほら増援だ。俺達だけで相手をするのは面倒だ」

「うわー、同じのが二匹もっ!」

「適当に相手をあしらって、馬車へ行こうか」

 伸びてきた巨人の手を、ヤナギが斬り飛ばす。良く見ると、血が流れ出して来ない。血液が流れていないのだろうか。


 既に動き始めている馬車に飛び乗り、再び伸びてきた指先を蹴り飛ばす。巨人は斬り飛ばされた指に反応しており、斬られた指はキズ口に付けるだけで元通りになった。再生とは違うようだが、どんな仕組みなのだろうか。

 馬車の速度は増し続け、巨人がどんどん小さくなっていく。他の巨人達も合流したようだが、ゆらゆらと揺れるだけで追ってこなかった。奇妙な造形だが、どんな由来の魔物なのだろうか。ギルドで見た資料には、あの巨人の情報は無かった。恐らくDランクでは閲覧出来ないのだろうが。何故あの巨人はここまで来たのだろうか。


 床に寝かされている女冒険者の様子を観察した。

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