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この世界の台地で  作者: あの日の僕ら
第三章 見知らぬ世界へ
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XVII 海辺の村

 山を登って、右手に見えた集落に近付く。

 集落を囲う木製の壁は綺麗に整えられている。木製の小舟と言い、木工製品が特産品だったりするのだろうか。

 一部分だけ木壁がぽっかり空いている場所がある。ここが出入口だろうか。結界を展開している気配が無いが、魔物が活発になる夜中はどうするのだろうか。

 取り敢えず中には入らず、外から声を掛ける。

「すいませーん!」


 返事が戻ってこない。それどころか人の気配すら感じない。もしかして門番すら居ないのだろうか。

 集落の中に踏み入れる。近くの家屋を見ると、漁具らしき物が立て掛けてあるのが見える。家屋自体は壁も屋根も木造で、潮風に晒されている為か、一見ボロい。しかし、手入れはされているようで、張り替えた痕跡が随所に見られる。


 そうしていると、別の家屋から一人の男が姿を表した。全身は日焼けしており、肩には籠らしき物を下げている。年は三、四十才くらいだろうか。観察していると、こちらに向かって歩いてきた。相手も見知らぬ人物が村の中に居るのに気付いたのだろう。


「旅の方?こんな村に何か用ですかぁ?」

 男は少々訛った言葉を発した。どうやら言葉は同じらしい。今更だが何語なのだろうか。日本語に聞こえるが、そうではないだろう。

 まあ、今は置いといて、考えていた設定を話そうか。

「私達は探検家でして、ダンジョンの罠で飛ばされてしまったのです」

「はぇー、ダンジョンで。それは大変でしたなぁ」

「大きな街があればそこに行きたいのですが」

「街かぁ。ここからだと"ファーの街"が一番近いですなぁ。それでも馬で二日掛かるらしいですが」

「ファーの街、ですか?」

「そうさぁ。ここから北西に進むと…。途中に街道があるんでそこを沿って歩くと迷わず着きますなぁ」

「ありがとうございました。そこに行ってみようと思います」

「旅の方、これから行くのかい?」

「ええ、取り敢えず人の多い場所に行きたくて」

「もう夜になっちまうよ。村長に泊まれるか相談してやるから、ついてきな」

「…そうですね。ではお願いします」

 村人はそう言って村の中心にある一回り大きな家屋へ向かっていった。


「(少々訛りがありましたが、エルランド公用語でしたな)」

 ヤナギが小さな声で話した。

 エルランド公用語とは大昔に大陸を統一した際に、使用されていた言語だ。国が滅んでからもその言葉は使われ続け、今に至るらしい。大地と台地がいつ分断されたかは分からないが、以外と最近の出来事なのかもしれない。

「(イブキ、泊まっていくの?)」

「(泊まるかは、話を聞いてから決めようと思う)」

 ──キュ

 虚空からタイショーが顔を出す。大型の蛇なんて魔物と間違われるかもしれないので、隠れていてもらったのだ。本人は不服そうだが。


「村長ー、旅の方が困っているそうだよー」

 大きな家屋の中には、大きな机と何冊かの本が置かれており、髭面の大男が座っていた。例に違わずこの男も真っ黒に日焼けしている。

 何か書類を書いていたようで、その手を止める。

「ん?ハクザンか、怪我してるんだからあんまり働くなよ」

「そう言われましても、仕事をしていないと落ち着かないんでさぁ」

「治る怪我も治らなくなるぞ。…それで、旅の方と言ったか。よくこんな辺境に来たな」

「話を聞いていると訳ありらしくて、ここへ連れてきたのさぁ」


 村長と呼ばれた男が、こちらをジロジロと観察してくる。

「ふん、まあ害意はねぇな。ハクザンは戻って休んでろよ。いいか絶対働くんじゃねぇよ」

「分かってますよ、それでは」


 俺達を案内した男、ハクザンは村長の家屋から出ていった。

「アイツ絶対守らねぇな…。お客人、そこへ座りな事情を聞いてやる」

 地面から一段高くなっている場所、そこへ俺達は座った。


 この村長は見た目にそぐわず、周辺の地域から国々の関係を知っているようであった。

 この村の名前は"シャロ村"。アルベージ帝国領の南東に位置しているようだ。アルベージ帝国は軍事力にモノを言わせ、周辺の国々を纏め上げて誕生した国、だそうだ。

 アルベージ帝国はほぼ全ての周辺国と敵対しており、戦火は耐えないそう。幸いと言っていいのかこの村には価値が無いとされており、徴兵とかは無いらしい。

 聞けたのはこんなモノか。


 俺が話したことは、別の大陸のダンジョンを攻略中に、悪質な転移トラップを踏んでこの大陸に転移してきた、という内容だ。

 俺達が暮らしていた台地がどういう扱いなのか、分からない。下手に出ない方が良いと判断して、設定を作った。

 驚いたことだが、この大地にもギルドがあるそうだ。というか、台地のギルドは、転移してきた外界人によって創設された歴史があり、こっちの方が先に出来ていたようだ。話を聞いた限りではシステムは若干の違いがあるようだが。


「転移してきたってぇのは、災難なこったな。まあオレは全部信じている訳じゃねぇがな。騙そうとしている訳じゃねぇんなら、詳しくは聞かねぇよ」

 この男は案外鋭いようだ。嘘を見抜く手段があるのか、単純にカンなのか。あんまり辻褄が合わない嘘を付かないようにした方が良いな。


「空き家ならあるからよ、泊まっていけよ。見たところ荷物はねぇようだが、少しくれぇなら海産物を譲ってやれるぜ?」

「それは大丈夫だ。食糧なら持っている」

「そうかぁ?まあ、必要なら直接漁師に相談してくれ」

 台地には本物の海は無かったからな。海産物を仕入れるのも良いかもしれない。それにポーチがあるから手ぶらだったが、ダミーとして荷物を持っていた方が怪しまれないだろう。


「おい、シュリュウ!空き家にコイツらを連れてってやってくれ」

 村長が奥に向けて叫ぶ、するとふくよかな女性が奥から出て来た。この女性も日焼けをしているが、そこまで真っ黒では無い。外で作業を余りしないのだろうか。

「おや?旅人かい?珍しいね」

「あそこ使ってなかったろ。一夜だけだしな」

「じゃあ着いてきておくれ、直ぐに着くよ」


 ******


 女性に案内された家は、周りの家屋と造りは同じに見えた。しかし、家具は置いておらず、ながらく修繕もされていないようだった。

「ボロだけど、雨漏りはしないはずだよ。何か聞きたかったら村民に聞きなよ?じゃあ私は戻るからね」

 そう言って女性は去っていった。


 少し休憩にして、ダミーの荷物を用意することにした。しかし、一目見ただけで荷物と気付くような道具は、ポーチに入ってなく、村で買うか、作ることにした。そういえば金は使えるのだろうか。使えなかったら物々交換でも良いが。


「わはは!はやくこいよー!」

「まってよ、お兄ちゃんー!」

 子供が道を走り回っている。昼はほとんどの男性が漁に出ていて、村には女子供しか居ないようである。


「あれ?だれかいる」

「やっとおいついたよぉ」

 兄妹と思わしき子供が家屋に入ってきた。ここは長らく使われていないと聞いていたので、子供が遊び場にしていたようだ。


「俺達は旅人でな。この村に立ち寄ったんだ」

「へぇー、珍しいな!何もないのに!」

「あ、そうだ。君達この村を案内してくれないか?」

「えっ、おれたちが?」

「ああ、色々買い足したいもんでな」

「えーどうしようかなー」

「お兄ちゃん、あんまり…」

「そうだな。案内してくれたらこれをあげよう」

 俺は袖から出すフリをして、ポーチから小さい干し肉を取り出す。野営で食べたが、塩辛くて食指が進まなかったものだ。飴玉とかは駄目かもしれないが、干し肉なら普通の旅人が持っていてもおかしくないだろう。

「えっ、ほんとかっ?!いいぞ!」

「お兄ちゃん、私にもぉ」

「これは前金だ。案内が終わったらもう二個あげるよ?」

「ほんとかっ!…そろそろ父ちゃん達が帰ってくるよな。じゃあキミさんの家からね!」

 子供に案内を依頼して、走る子供の後ろを着いていった。

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