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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

……貴女のことが。

作者:柴野まい
バッドエンドです。
彼女とは幼馴染だった。
 といっても、対等な立場ではなく主人と召使の関係だったが。

 彼女が私を振り回したりもしたし、私が彼女を振り回したりもした。
 箱入りの彼女が、召使である私と一緒にいることを不満に思っていた者もいた。

 そんなやつらから嫌がらせを受けた。
 水をかけられたり、仕事を邪魔されたり。悪口を言われたり。

 だが、彼女のあの一言でそいつらは何もしなくなった。

「やめなさい」

 彼女が紡ぐ言葉には力があった。
 彼女が心配そうな顔をして私に問うた。

「大丈夫?」
 
 なぜか嬉しかった。
 私一人だけが彼女の気を引くことができる、そう思ったのだ。


 それから私たちは成長し、彼女は外見も中身も美しくなった。
 私の心は醜いままだった。

 私はずっと彼女を見ていた。
 彼女には私しかいない。
 そんな自惚れがあった。

 彼女に婚約話が舞い込んできた。
 相手の家は彼女の家格につり合う家だった。
 そして、彼女は結婚した。

 結婚相手の家にも私はついていった。
 それが彼女の望みだったから。

 正直、最初私は乗り気ではなかった。
 何故自分がそう思ったのかはわからない。

 だが、彼女を毎日見る事ができると思えばそんな些事はどうでも良くなった。

 彼女が結婚してから3年ほどの年月が経った。
 彼女には子供ができていた。

 そのあたりから、彼女は私を避けるようになった。
 私のことを悪魔でも見るかのような目で見た。
 私には全く心あたりが無かったのに。

 ある日、彼女は言った。

「もう、要らない」

 何故?と叫びたかったが、他でもない彼女の命令だった。
 だから。
 私は大人しく従った。

 それからは、彼女の家の近くで彼女を見つめていた。
 毎日、毎日、毎日、毎日、毎日。

 ある日、彼女の子供が家の敷地から出てきた。
 彼女の子供は家格に釣り合わない服を着ていた。

そして、子供は私に尋ねた。

「なんで毎日ここにいるの」

 私は何も言えなかった。
 理由なんて無かったから。

 彼女を見ていると心が落ち着いた。
 彼女が笑う姿を見ると、こちらも嬉しくなった。
 彼女が泣いている姿を見ると、こちらも悲しくなった。
 彼女が困った顔をすると、こちらも困った。

 この気持ちは何というのだろう。

 彼女と一緒にいた時間は楽しかった。
 何故だろう。
 何故私は解雇されたのだろう。
 楽しかったのに。
 彼女はどんな顔をして、私に要らないと言ったのか。
 覚えていない。
 いや、思い出さないようにしていたのだ。
 あの、悪魔を見るような顔で言われた事を。

 そんなことを思い出していると、子供は居なくなっていた。

次の日、彼女の家を訪ねた。
彼女は自分の部屋の椅子に座っていた。
彼女には笑顔がなかった。

椅子に座りながら、彼女は言った。

「私を殺しなさい。このままでは私はあの子に……!」

彼女は取り乱し、私に近づいてきた。
私は……初めて彼女の命令に従わなかった。

「私はもう貴女の召使ではありません。故に、私には従う理由がありません。」

そう言うと、彼女は驚いた顔をして顔を伏せた。
その目には涙が浮かんでいた。

その彼女の顔を見ると、とても、とても嬉しかった。ああ、この顔が見たかった。
私は彼女に問う。

「私が、貴女のことをどう思っているか知っていましたか?」

彼女はハッとしたような顔をして、こちらを見た。
そして、その端正な顔を歪めて首を横に振った。

「私は貴女のことを殺したいほど愛しています。でも貴女の命令で殺したくはありません。私は私の意思で貴女を殺したい。たとえ、貴女に差し違えて殺されても」

それは私の心の底からの言葉だった。
それを聞いた彼女は笑顔で言った。

「ええ、殺しなさい。貴方の意思で。……愛していたわ」

私はその言葉を聞くと、部屋の壁に立てかけてあったナイフを手に取り、彼女を……刺した。

彼女は笑顔で死んだ。

私は彼女が死ぬのを見届けた後、私もナイフで自害した。







その光景を見ていた子供がいた。
その子供は嗤っていた。
自分の小さな身体にある、無数の傷を撫でながら。
にやにやと、自分の母だったモノを見ながら。



……貴方のことが。
fin






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