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99.歓迎式典

 歓迎式典の当日。



 提案を申し出たハノワに全てを任せ、住民たちやアンデッドの無料貸し出しによって無事開催を行うことができた。廃墟の外観は相変わらずであったが、それを覆い隠すかの如く色とりどりの垂れ幕や露店が所狭しと道なりを並んでいた。当初は式典ということも相まって緊張の面持ちをしていた住民たちであったが、数日前より噂を聞きつけた買い付けの商人、なかには王族に先んじて偵察にきた外交官まで、実に様々な人間が訪れてくれたことで式典の雰囲気に彼らも大分慣れてきていた。馬車を下りた貴族や王族の集団、もの珍しさやギルド名目で集まる冒険者、開催前日より度々訪問している者まで、どこの店も客で賑わいを見せていた。いずれももの珍しいそうに露店の商品に目を奪われており、店員も口八丁に色んな物を買わせている。

 かつての廃都の面影はどこにも見受けられないほどの活気に都市は満ち溢れていたが、それでも何を企んできたのか知る由もない邪な人間が潜伏しようと城門を潜り抜けようとした矢先に……



「リッチ様。[悪意]を発する方々を片っ端から捕えるのは如何なものかと…」


「門の前にわざわざ立札まで設置させたんだぞ?」


「しかし…」


「俺がルールだ」



 渋るハノワに招待状に書かせた古都ファムォーラの法とも呼べるべき事柄は、3つだけであった。



 ー都市に住まう領民ならびに魔物への危害を一切禁ずる

 ー悪意をもつ者は直ちに拘束し、命の保証はないものとする

 ー都市への出入りは[誰であれ]自由である



 以上。


 この3つの法を守れぬ場合、いかなる者も罰則の対象としていた。もっとも悪意といえば拾ったお金を自分の物にする、なども該当するといえばそれまでだがあくまでも感知していたのは犯罪レベルであった。アンデッドの視界には全ての生命は魂となって映し出されており、魂の穢れ具合によって犯罪を犯すことが確定的に明らかな者は誰であろうとその場でアンデッドに捕獲される。罰則は主にアンデッド化一択にして裁定者は不死王に全権限が渡されており、それ以外の式典の運営を全てハノワが請け負う形で事件が起こることもなく平和に事は進む。


 当然相手が誰であろうと罰則は適用され、王族であるという理由だけで金を払わずに店を出ようとする者、献上品としてよこせと商品を奪おうとする貴族、店員を脅して値切ろうとする者まで、城内に入ってからの粗相も度々見られたがお決まりの「私を誰だと思っている」発言が響き渡ると同時に彼らは続々と巡回するアンデッドに拘束され、抵抗する術もなく城内へと担ぎ込まれていった。[死人に口なし]、文字通りの処置に全ては丸く収まり、拘束された者の従者は目を丸くして当人が連れ去られる姿を呆然と眺めることしかできなかった。

 多少の揉め事はあったが、アンデッドによって全て粛清されていくことで住民たちも安心して商売に精を出すことができていた。



「それにしても人多すぎないかな」


「各国の住民の依頼で我が国の名産品を持ってくるようにとわざわざ冒険者ギルドに発注までする者が続出しているようですしね、ギルドマスターの皆さんに手を回してもらった甲斐がありました」


「まぁ式典がうまくいってるようで何よりだけど、俺の記憶だと冒険者っての荒くれ者が……早速いるし」


 空にはアウラたちハーピーが楽しそうに人の往来を眺めており、街中には通常よりも数は減らせども警備のアンデッドがリロともども各地点で警戒にあたっていた。大部分は入場前に捕えてはいるが、入場してからの悪事の芽生えも当然発生する。

 都市内に魔物が徘徊する様子に驚くのが大半であったが、なかには招待状に書いてあった通りだと黄色い声を上げる者や感心する者、住民が何事もないかのように振る舞う姿に安全であると認識してもらえたりと、想像していたよりも訪れた人々の反応は悪くはないものであった。



 さすが異世界を逞しく生きる者というべきか…しかし逞しすぎる者もいる。

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