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88.廃都市の繁栄

 孤児院の開設は古びた倉庫を手入れすることであっという間に完成した。隣接していた家屋を寝室とし、倉庫には机こそなかったが業務に使用されていた巨大な黒板が壁にはめ込まれていた。すぐさまその空間を教室として扱い、教団による魔術や生活、教養に関する授業が一通り実施されていた。時折アウラや娘たちが様子を見に行くようになったが、聞いている限りは彼女たちを恐れることなくうまくやってくれているようだ。




 難民たちも予想外に逞しく働いてくれた。

 滅びた都で冒険者ギルドのマスターをやっていたハノワという男が、この地でやり直させてほしいと挨拶を兼ねて改めて提案をしてきたがゆえの働きでもあった。ギルドマスターのイメージはもっとゴツいイメージがあったが、見た目は30手前の色男であった。



「今は亡きワルダイ王国の冒険者ギルドマスター、ハノワです。この度は我々を受け入れてくれたことを心から感謝します」


「不死王リッチ=ロード、よろしく。断る理由もなかったし、のんびりやりましょ」


「はぁ…ところで司祭様に頂いた提案ですとリッチ、様の加護下にあるこの地で新たな生を営むようと伺っているのですが」


「みたいだね」


「その、行き場のない我らが」


「住んで営んでくれても構わんよ。ただし、アンデッドの徘徊と巨大なハーピーの存在に慣れないなら出てってもらう。人の出入りは自由だけど素行の悪い者、明らかに悪意のある奴や部下と俺の身内に何かしようものなら死者の隊列に加わってもらう……いいね?」



 顔色を青くしながらも懸命に頷き、その後は街が落ち着きを見せたら冒険者ギルドをこの街に建設したいこと、都市に関する悩みを可能であれば受けてもらいたい、といった話のなかで前者は自由にし、後者はハノワがまとめたうえで報告することを義務付けた。この会話によってハノワが実質国をとりまとめる立場となり、多忙となることが予想されるためもう1人補佐をつけるように助言した。

 突然のリッチの提案に一瞬呆然としていたが、やがて意識を取り戻すとこめかみを揉みながら呟き始める。


「一介のギルドマスターである私が市長ですか…」


「難民を率いたのがお前さんなら最後まで責任とれ。出来ることは手伝う」


「…承知いたしました。ありがたく肩書を頂戴いたします……早速ですが」



 この男が経営していたギルドはうまく軌道に乗っていたのだろう。次から次へと国作りのための議題と解決策を提案し、スムーズに会議は進む。


「ご提供頂いた農地からは瓦礫、そして魔物は食用に適さない部位を加工し、武具を作って売りましょう。鍛冶師もおりますし、女子供でも出来る作業です。売上はバランスよく食糧と農地を耕すための道具や種、畜産を購入するために使います」


「抜け落ちた嫁と娘たちの羽根って使える?魔力が宿ってるみたいで、部下の体内に放り込む程度にしか扱ってないんだけど」


「ハーピーの…ご家族の羽根ですか。恐らく風の魔力が宿っていると思いますが、うまくいけば装飾品や服の材料として利用できるかもしれません」


「じゃあまとまった羽根をソッチに投げるよ。あと徴兵とかやらんでいいからね。部下もおるし」


「ありがとうございます。おかげさまで都市の復興に力を注げます。ただ売りに行く道中の護衛が必要になりますし、今は冒険者を雇えるような余裕はありませんし…」


「先に言っておくけど、お前さん方が逃げ出した街から死人や馬と牛を回収したんだけど、死人に関してはこの街に住むための献上品だと思って諦めてくれ。荷台をアンデッド化した馬や牛に引かせれば常時俺の監視下にあるようなもんだから、何かあればすぐに部下を召喚するよ」


「亡くなった者たちに関しては承知いたしました。この国を今後とも守ってもらえるのだと、皆の者に伝えます。馬の件ですが、そうして頂けると大変助かります」


 こうして徐々に、そして素早く廃都市は国としての形を作っていき、やがて人が生活するだけの環境が整った。

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