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84.魔王軍LIVE

「いかがですかな、我らが魔王城は?」


「部屋がでっかいね」



 その後、デモンゴは退出を命じられ、デボンが案内を引き継ぐ形になったがデモンゴのような城内の説明は一切ない。魔王軍の偉大さについて語っているだけの時間が流れ、再度デモンゴに案内をしてもらえないかと考えながら何処とも分からない場所へと案内される。


「お話を伺う限り、本日はあくまでも魔王軍の見学でいらしたとかで。申し訳ありませんが、我が軍はただいま都市の攻略のために出払っておりまして…もしもリッチ殿が加わっていただければ数倍、いえ、数十倍の戦力をもってしてこのような寂しい魔王城をお見せすることはなくなるのですが…」


「そんなもんかね。それより出来れば魔王と会っていきたいんだけど、問題ない?」


「魔王様、ですか。まだ完全に復活されてはおりませんが…リッチ殿の頼みとあらば何とか致しましょう。少しお時間がかかりますので手配を進めている間、リッチ殿には我が軍の力を是非ご覧になって頂きたく……デモンゴ」



 デボンが指を弾くと目の前の空間が歪み、アンデッドのライブ映像を視聴する時のような赤みがかった球状の物体が出現する。その中には人間が蔓延する1つの街が映し出されていた。

 画像は多少荒いが1つの都市を上空から映し出しており、町民らしき人影が必死に裏口から逃げ出しているのに対し、兵は次々に正門へと向かっている。都市を囲む壁の上から弓兵が構えており、その眼前には砂煙をあがっていた。



「ご覧ください。オーガにワイバーンの軍勢、圧巻でしょう」


 今にも涎が流れ出そうなほど嬉しそうに実況する男を冷やかに見ながらも、音声が聞こえてこないことからアンデッドライブの劣化版であると聞こえないようにため息を吐く。そして元同族である人間がこれから虐殺されるというのに、何一つ感じることがないことに気付く。アンデッドゆえか、この世界で人間として産まれた時の戦争への嫌悪感からか、あるいは自分が薄情だからか。恐らくその全てが当てはまるのだろうと、兵の抵抗をあざ笑うかのように魔王軍が街を蹂躙していく様子を見ながら考えていた。


 兵が心を合わせるように魔物を倒す姿に彼らが日々どれほど鍛錬に励んでいるのかを如実に物語っていた。しかし、1体倒すだけでも満身創痍であり、倒してもすぐに別の魔物によってあっという間に命を奪われていく。

 地上はオーガの群れが侵攻し、頭上はワイバーンの群れが1人、また1人と抓むように掴みあげてはゴミのように空中で放り投げていく。やがて都市が完全に陥落し、町民が無事逃げ終えたところで映像が途切れた。魔王軍もそれなりの打撃を受けたように見えたが、確認しようと覗き込むとそこで映像が途絶える。仕方なく視線をデボンに合わせると、満足したような表情でリッチを見据えていた。


「どうでしょうか、我が軍の圧倒的な強さは?」


「逃げた人間はどうするんだい?」


「放っておきます。いずれ他の人間の群れと合流し、また別の地にて我が軍に蹂躙されるだけですので」


「ふーん…あの都市の死体、もらってもいい?ついでに2つ街を破壊したって聞いてるけどソコにも死体が残ってるならもらっていいかい?」


「……軍の食べ残しで宜しければ」



 戦場の様子に興味が無さそうに、しかし死体にだけ興味を示す男に所詮はアンデッドかと内心あざ笑う。その死体好きの男は戦場の跡地を見て思うのは更なる軍備の強化。自己防衛のために軍事力を保有するのは馬鹿らしい気もするが、この世界では現状必要な力であることは否めない。傍から見ればアンデッド化なぞ許されぬ行為だが、男にもまた守りたいものがある。

 思考の海に没していると、デボンが顔を近づけてきた。


「お待たせしましたリッチ殿。魔王様の謁見の準備が整ったようですので……どうぞこちらへ」



 ツカツカと歩いて行く彼について行くと城内の最奥とも呼べる場所まで案内され、巨大な扉の中へと通される。デボンはリッチが入るのを確認すると深々と頭を下げ、そのまま扉がゆっくりと閉じられていく。

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