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68.蒼の伝説

【蒼の伝説】



 あるところにずっとず~っと昔からどうくつに住む、


 それはそれは立派な魔術師がおりました。


 未来を見ることができた魔術師は、


 王子さまと村娘にカンジュラを作らせて土地に平和をもたらしました。


 しかし、ある時滅んでしまうことを予知してしまい、強い冒険者たち、


 そして王子さまたちを導いた蒼い小鳥と夢をまくねずみを使者として遣わせました。





 街を滅ぼそうとした邪悪なモンスターは使者の力でやっつけられ、


 カンジュラのお姫様は使者のおかげでずっと昔から好きだった


 ゲシュタルトの王子さまと結婚して、国に平和をもたらしました。




 蒼い小鳥と夢をまくねずみはいつでも国を守ってくれます。


 強い冒険者たちもいつまでもカンジュラを見守って幸せに暮らしました。




 きっと立派な魔術師もとても喜んでいることでしょう。


 慈悲深い魔術師にもっと喜んでもらうため、


 これからも祭りの声を遠くまで響かせよう。


 いつかカンジュラに再び足を運んでくれるその日まで。




 ~作者~ ティアラミル








「素晴らしいです!!」


 冒険者ギルドを出るやいなや、カンジュラへの道中に仕留めた魔物の素材を防具屋に売り、すぐさま本屋に駆け込んだクロナたちは大人から子供まで、いつまでも愛されるベストセラーの絵本を購入していた。


「さすがは我が主だ…しかし先程の素材のお金が全て消えてしまいましたね」


「生活よりも父上の伝記を入手することが大事です!」


「お金に余裕が出来たらみんなの分も買って帰りましょう!」



 印刷技術の普及していないこの世界で、本は希少な物品。さらにカンジュラの名産品として1冊金貨2枚、素材の売上金額は金貨6枚。金貨1枚で宿に1週間は泊まれるが、彼らは1人1冊購入したため、入国して数刻とたたないうちに再び無一文になっていた。


「冒険者として1から始めるには丁度いいですよ。とりあえず薬草取りの仕事を数枚持っているので今日はこれを終えて宿代にしましょう」


「お兄様!国旗見て!お父様は鳥だけっておっしゃってましたけどねずみさんもいるわ!」


「本当に!?」



 城の上を優雅にはためく国旗には、青い鳥の隣に青いねずみが佇む姿が追加されていた。


「それにティアラミルって多分お父様が一緒に冒険者をやっていたティアラさんとアミルさんですよね!?」


「やっぱりそう思う?ティアラさんはエルフだと聞いているし、もしかしたら会えるかも!?」


「綺麗なお嬢ちゃんたちはカンジュラの良さが分かっているようだね」


 絵本を購入してから店頭を離れずに【蒼の伝説】を熱く語る若者を見て、嬉しそうに店主の老婆が出てくる。そこから再び救世主が父親であることを隠したうえで論議が始まり、老婆は色々と親切に教えてくれた。



 老婆の名を出せば安くていい宿屋に泊まることができ、毎年春と夏の間で2日間[降臨日]という国を挙げての祭があること、そして救世主の話は恐らく何千年も昔の話であり、物語に登場するゲシュタルトは数百年前に滅びたと言うこと。城に行けば詳しい年数が分かるかもしれないがな、と付け加えた老婆はやれやれと首を横に振る。





 何千年前もの出来事である父親の話を寝物語のように聞いてきた。それまで一体父親は1人でどれほど長い年月を過ごしてきたのか、そして母親であるアウラと出会ったのはクルスたちを見つけた直後であったという彼はどのような心境で過ごしてきたのか。それでも父親は笑い、カンジュラの話を何度もせがんで楽しそうに聞かせてくれた。老婆の話を聞き、次は自分たちが父親に、そして母親や妹たち家族に語り聞かせる番だと改めて決意をする。



 老婆に礼を言い、彼らは依頼表を手に再び門へと向かう。

 余裕が出来たらゲシュタルトも是非見に行きたい、父親はきっとそれを望んでいると、これから起きるであろう冒険の数々に興奮しながら。









 その後、ギルドで邪魔をした冒険者くずれが増援を呼び、裏路地で2度と冒険者として活動できない程のトラウマに晒されたのはまた別のお話。



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