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51.そして共に歩む仲間たち

ブクマありがとうございます!モチベーションの原動力です!

 ~ストライダーの話~




 山奥の掘立小屋のような場所で私は育てられた。父は猟師、母は家事、どちらの仕事も私は手伝っていた。



 [琴野美咲]、この世界に転生する前の私の名前。

 バスの墜落で乗っていた人は全員死亡。その中から私たちが選ばれた。クラス総勢35名と運転手に先生2人のうち、私たち6名を。



 初めて父さんの仕事に着いて行った時はただただ恐ろしかった。熊かと思えば足が2つ余計に生えた恐ろしい獣、魔物と呼んでいたが、父さんは巧みに罠や弓を駆使して奴の動きを封じ、ダガーでトドメを刺していた。


「今日はご馳走だ!!」


 嬉しそうに語った父さんがただただ怖かった。普段あんなに優しくしている父さんがあんな顔と動きだ出来るのかと。しかしこの世界で生きるには力が必要、女神のその言葉と得たスキル[索敵]を用いることで敵と味方の位置が手に取るように分かった。



 震える身体を抑え、父さんの教えに従い、私が10になる頃に1人前として認めてもらえた。教えることは何もない、そう言って父さんは私が産まれた時の話をしてくれた。

 母さんから産まれた時、赤子の私は光に包まれたのだと。それは世界を救う勇者の証なのだと。女性と産まれたからには本当は母のように女性らしく生きてほしかったが、止むを得ず、しかし責任を持って持てる技を全て継承させたつもりだと言い切った。


 私は世界への足掛かりを掴むため、父さんの昔馴染みのツテを辿って冒険者ギルドを訪れることにした…。




 ~ソーサラーの話~




 魔術学院の院長の息子として育てられた俺は、あらゆる攻撃魔法を体得することができた。スキル[魔導知識]によって魔法の習得速度や魔力量が桁違いになっており、そんな俺を院長たる母は勇者であり、かつ幼少から天才であった俺のことを誇りに思ってくれた。



 [二階堂修]、図書館に引き籠って勉強と読書の毎日だったが、事故によってこの世界に転生された。何故あれだけのクラスメートから俺たち6人が選ばれたのかと思ったが、女神曰く「少なくとも悪の芽生えていない人選」であったそうだ。確かにクラスの全員が全員素行が良かったとは言えないのも事実ではあるが…。



 不自由はなかった。食べ物は何でも与えられ、補助魔法は一切できない代わりに攻撃魔法は水が流れ込むように身に付いた。そして使える力を試したくなるのはごく自然、しかもゲームのようなファンタジーの世界といえば冒険者となること。

 母に修行の名目であると説得し、俺は冒険者ギルドへと向かうことにした…。




 ~メイジの話~




 アトランティス大陸の宗教団体最大の勢力を有するサンルナー教。

 太陽神と月花神の双子の女神を信奉し、その信者の1人である女性から私は産まれた。



 [日向愛]、身体が昔から弱く、毎年出席日数ギリギリであったが、幸か不幸か、修学旅行に行けるだけの体調を取り戻していた。そして女神と出会い、この世界で生きることを余儀なくされた。


 前世の両親には悪いが勇者という肩書はともかく、私は今の自分に満足している。健康体として生まれ、スキル[完全治癒]によってどんな怪我や病気も治すことが出来た私は聖女として崇められ、信者の数も日増しに増えて行った。女神の力とはいえ、こんな私が頼られるのは嬉しい。

 しかし1つだけ変わらないことがある。

 教団の信者を治療するために部屋にほぼ籠りっぱなし、それは前世の病院の1室にいた私とほぼ同じだ。窓からの景色もほとんど変わらず、もっと外に出て色々見て回りたかった。年頃の女の子らしく、遊んで、恋をして、たまに馬鹿みたいなことをして思い出を作りたかった。



 だから私は教団を抜け出した。


 模範囚というべきか、大人しく従順に周りの大人に従っていたから見張りもいなければ鍵を掛けられることもなく、毎日コツコツと旅支度をするのが楽しみになった。そして決行の夜、こそこそと神殿の窓から抜け出した。幸い元冒険者だった信者の話から、冒険者ギルドになれば世界が見れることを知っている。生きる糧も得られる。情報に聞いたギルドを目指し、まだ人々が夢の中に旅立っている間、私は1人異世界へと飛び出した。




 ~ウォリアー/ナイトの話~




 勇者にして兄妹に産まれた俺たちはすぐに両親から引き離され、王城に引き取られた。蒼の騎士団に鍛え上げられ、幼いながらも魔物との実地訓練も行ったこともある。少し離れた場所に凶悪な森があり、奥へ行けば行くほど強力な魔物が出現するそうだ。

 しかし奥まで行けた人間は過去1人もいない…。


 [上原仁][鈴宮麻子]、仲が良かったわけでもないが、何故か兄妹として産まれた時は互いに驚いていた。しかし事故から転生という形で救ってもらった手前、勇者としてこの世界の期待に応えようと努力することにした。俺は[憤怒]のスキルとグレートソードを駆使し、あらゆるステータスを向上させることでどんな相手だろうとスピードとパワーで打ち負かしてきた。

 対して鈴宮、いやカンナは[絶対防御]によって盾さえあればどんな攻撃だろうと防いでくれた。突撃する俺の背中を彼女はいつも守ってくれており、「相性抜群だね」と助けてくれる度に笑ってくれた。



 今日も強大な魔王との戦いに備え、訓練に励んでいると王女から「冒険者になる」よう命じられた。遥か昔、この国が滅びに直面した時、蒼い鳥と夢ねずみが使者の冒険者を引き連れて国を救ってくれたんだそうだ。以来、2日に及ぶ[降臨日]は今もなお根付いており、俺たちも勇者や騎士の立場を忘れてよく参加させてもらっていた。

 ようは冒険者が国を救ってくれたようなもの、ゆえに冒険者として修行に励めと無茶苦茶なことを要求されたが、正直幼少の頃から聞かされた[蒼の伝説]の中の冒険者に憧れていたのもあって、王女の提案という名の命令を素直に聞き入れることにした。


 カンナも王女の要請に納得し、早速2人して冒険者ギルドの門を叩くことにした。







 ~魔王復活の時~



 勇者たちが産まれる頃。




 暗い。誰もいない。そう思っていると引き攣るような笑みを浮かべた男がユラユラと近付いてくる。



「おお、お目覚めですか」


 誰だ、お前は。


「失礼致しました、私デボンと申します。魔王たる貴方様に仕えるためにこちらへ参りました」


 …魔王?


「左様です。先代魔王は討たれ、魔素が拡散してしまいましたが悠久の時を経てようやく魔素があるべき場所へ集合しているのです」


 余は…どうなるのだ?


「先代魔王様と同様の力、いやそれ以上の力を身に着け復活されるのです。理性が戻ったのでしたらもう間もなく肉体も宿ることでしょう」



 渇いたような不快な声で笑う中、再び眠気に誘われた魔王と呼ばれた者はその意識を再び奥へ奥へと追いやっていく。



 世界から絶え間なく聞こえてくる悲鳴や断末魔を子守唄にしながら…。

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