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43.ミフネの備忘録

おまけです。

 私と姉は双子の姉妹として地方の貴族の元で生まれた。

 何不自由なく育てられ、魔術学院にも入れてもらえたが人見知りの私はいつも姉の後ろに隠れていた。その分、ミネアが全て代弁してくれたけれども。



 それでも終わる時は一瞬。

 魔族に領地を侵され、没落した貴族として両親は本家へ避難、もともと貴族暮らしが苦手だった姉はこの騒動を機に冒険者になることを宣言。正直気乗りはしなかったけど目的があるわけでもないし、護衛として門番であったボルトスも同行することになったので仕方なく着いて行くことにした。乱暴でも実力は確かだし、何よりも危なっかしい2人を放置できるほど楽天家ではない。




 無事冒険者ギルドへの登録を終えたものの、前衛が1人というのは心許ない。ギルドに辿り着くまでにも命懸けだったのだ。これからもそうならないとは限らない。

 仲間を増やそうと提案をするなか、すぐに前衛が加わった。ただの少年ではあったが、見た目にそぐわない背中の大剣、そして死人のような目をした彼をボルトスはすぐさま只者ではないと、放っておけばきっと死地へと赴くと、捕まえて強引にパ-ティ登録した。


 ティアラを仲間に迎える頃にはすっかり打ち解けていたように思う。少なくとも2人分の暴れ馬を私1人で管理しなくてよくなったのが冒険者になってから最も嬉しい出来事だった…いや、みんなと冒険が出来ることの方が嬉しかった、かな。



 珍しくアミルから彼女に話しかけていき、交渉の末、足手まといだと判断すればすぐに登録を解消すると進言していたけど、その後も私たちと距離を置きながら頻繁に身の心配をしてくれた。初めてエルフと接触できた喜びで姉と一緒に耳をしごき倒した時も顔を赤らめながらも無抵抗だったし、とても素敵な人なんだと思った。




 隠密を中心とした戦略で冒険者としてはそれなりに名が知れた時、救助依頼を受けた。アミルがお世話になった先生だったらしく、2つ返事で請け負っていたけど行く途中までずっと恐ろしかった。魔物どころか、生き物1匹いない空間に奥へ奥へと進む皆の気が知れなかった。それにこの森は以前アンデッドが大量発生した場所。嫌な予感しかしない。

 それでも進むことになった時は泣きそうになったが、仲間を捨てて逃げるわけにはいかない。何とか勇気を振り絞り、周囲を警戒しながら歩くと洞窟を発見した。








 目が覚めると洞窟の外で横たわっていた。

 みんな無事でよかったけど、いまいちティアラの言う事は要領を得ない。少なくともこの森に入った時から感じた恐怖は、そう簡単に始末できるものではないと思っていた。話を聞いていると可愛い動物さんが彼女の肩にいた。只ならぬ雰囲気が漂っていたけどティアラの使い魔っていうし、[可愛いは正義]。おまけに命を救ってくれたのならこれ以上難しいことを考える必要はない。





 ゴリアテが幸運の青い鳥に化けた。


 アミルは先生が亡くなって凹んでた矢先にお姫様を助けたらしい。休む暇もなく、彼女に協力することになって大変そうだったけど、青い鳥の使者って案外悪い気はしない。少しはアミルの気が紛れるかもしれない。旅支度を始めてから旅の間、珍しくゴライアスが私たちの所に来たので姉と一緒に撫で回した。一緒に寝る時も温もりがなかったのは使い魔だから仕方がないのだろうけど、ぬいぐるみだと思えばとても癒された。

 翌朝、馬車に乗った時もずっと私たちといたけど、しばらくするとティアラがチラチラと切なそうにこちらを見ていた。彼女の動物との黒歴史を考えればなるべく一緒にいたいんだろうなぁ、って思ってすぐに返してあげた。





 街についた。


 王子を探す名目ではあったけど、目の前の宝の山に目的を見失いがちの2人を先導するのは大変だった。それでもゴリアテを独占出来たので、胃に穴が開くような事態を避けれたのが幸いだった。






 王子を見つけた後、2人が一夜でラブラブになってた。


 視線が会う度に目を逸らすから、てっきり大人の階段でも上ったのかと思ったけどゴライアスは難しい話をしていただけって言ってた。

 …それでもこっそり私にだけ内容を教えてくれて、こっちが赤面しそうだった。





 ゴライアスが魔物の大軍を発見した。


 宰相の目論見だってすぐ思ったけど、足止めの話が出た時は心臓が止まりそうになった。それでも洞窟の時ほど嫌な予感はしなかったから素直に従った。

 でもいざ目の前にすると震えが止まらなかった。姉もずっと冷や汗が流れていたけど、アミルの目を見てると何とかなる気がした。それに今回は幸運の青い鳥がついてるし。




 死ぬかと思った。


 洞窟に続いて2度目だ。



 善戦はしてるし、アミルも頑張ってくれているけど魔力が底を尽く。そこに敵の指揮官が来た。


 何とか力を出そうとしたらミネアが倒れて、私も…





 気付くと馬車の中にいた。


 大将を倒したら敵は散って行ったとか。

 それでもこっそりゴライアスに聞いたら、2人の愛の奇跡に応えた使い魔の活躍によってマジカルに解決したって言われた。意味が分からないけど、洞窟の時も活躍してくれたみたいだし、嘘じゃないんだと思う。それに可愛いものは嘘を付かない。





 正式にゴリアテとゴライアスが聖獣認定された。


 それに加えて私たちも直属の衛士として迎え入れてもらえた。没落してその日暮らしになって、青い鳥に導かれて本当に夢物語みたいだった。




 …それでもメンバーが解散した時は悲しかった。

 泣かないように頑張ったけど、うまくいったか正直自信がない。それでも2人には幸せになってほしかったから、目一杯送り出した。ゴリアテたちもティアラと一緒に行っちゃったけど、2人のことは任せろって言ってたからきっと大丈夫。


 さよなら、2人とも。




 きっとまた会えるだろうから。




 その時までに胸を張って会えるように頑張るから。


 だからそれまで少しお別れ。




「ばいばい」

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