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181.新たな始まり、物語の終わり

ブクマ、ありがとうございます!

『無冠の王だって触れ回ってんのに、なんで全部俺に話しが流れてくるんかね』


「レオルたちの戴冠式までやったのに今更何言ってるの?」


『あれはグレンにハメられたんだ!』



 クレセント王国に会議があるので出席するようにとグレンから通信を受け、何の疑いもなく転移すると盛大に歓迎するエファルトに王握手を求められる。

 何が彼を喜ばせているかは理解できなかったが、雑談をしながら場所を移せば、煌びやかに飾られた大広間へと出た。


 そこにはすでに花嫁と花婿姿のレオルやソフィア、そして全身を真っ赤に染めたフィントの直立した姿を、多くの人々が歓声によって迎えていた。

 ようやく結婚式が持たれていることに気付くや、そのまま前へ前へと押し出されると彼らの眼前に立たされる。


 ーリッチさん、お願いしますね?


 ー…お願いって何を?


 ー何も聞いていないのか?


 ー本日の結婚式の仲人、それに私たちの戴冠式も担って頂けるとグレン様から提案されていたのですが


 ーはははは、あの野郎



 かつてカンジュラを救った日に任された即席スピーチを思い出しながらも、その後は滞りなく全ての式を終えることが出来た。

 その頃には精魂ともに疲れ果て、もはやグレンに文句を言う事すら忘れていた……









 ティアラの報告を聞きつけ、瞬時に王城へと転移するとティアラが慌ただしい様子で彼らに視線を向けた。

 部屋を行ったり来たりしながら髪をいじり、エルフの長にして君主であるフィントのお目付け役の威厳はどこにもない。

 彼女が落ち着くのを待つ間もなく、アウラが平手を放つと呆然とした彼女がやっと口を開いた。


「こ、子供が、ソフィアとフィントの子供がもうすぐ産まれそうなんだ!」


『…お前さん1度産んだ経験あるんだろ?何をそんなに慌ててるんだい?』


「痛みのあまりに気絶してしまったんだ!私は知らん!!」


「ん~、私も卵しか産んでないから人の子が産まれる大変さは分からないかな…クルスたちも呼んだ方がいいかしら?」


『産まれてからでいいよ』


 ティアラの不安を気にすることなく、淡々と会話を繰り広げていたロード夫妻であったが、2人で対応する旨を伝えるとさらに不安そうに見つめ返す。

 しかしレオル一行の一員が出産する度に呼び出され、他にも幾度もの出産現場で立ち会わされた事から、知識や経験に関して誰にも引けを取らないレベルに達していた。


 その事実を伝え、怪訝そうに見つめていたティアラがため息を吐くと、アウラが周囲を見回しながら不思議そうに口を開く。


「そういえばリウムたちは?それにレオルだけでも呼ばないと」


「リウムたちには彼女らの子供たちが騒がないように見張っててもらっている。レオルはここの所ずっとフィントたちに付き添っているよ」


『ずっとソフィアちゃんたちといたの?』


「あぁ」


『…ま、気長に待ってなよ』


 ティアラの頭を撫で、アウラと共に扉を潜るとそこには苦しそうにしているソフィアとフィント、そして心配そうに2人の手を握るレオルの姿があった。

 まるで救世主が来たように喜びを隠さない彼に近付いて行くと、アウラにはソフィア、フィントはリッチが面倒を見ることを告げる。


「ぼ、僕は何をすれば」


『2人にエールでも送ってて』


「大丈夫よ。私とリッチが来たからには何だってうまくいっちゃうんだから」


「ほ、本当か!?」


「だ、だから大丈夫だって…問題ないって言ったでしょう?私たちは子供を産むことに専念するだけよ」


 根拠のない自信を示す彼女たちにプレッシャーを感じながらも、妊婦の傍によると出産の準備をコツコツと始めていく。

 やがて彼女たちの声も悲鳴に代わり、落ち着かないレオルを尻目に冷静にロード夫妻は遺憾なく経験を活かした。






「……おぁー!おぁー!おぁー!」


「あああぁぁーーー!」


「産まれたのかっ!?」


 ハーピーの雛たちの産声と違い、うるさく、力強い泣き声が部屋中に木霊するとティアラが間髪入れずに室内へ入ってくる。

 フィントとソフィアの腕には、新たに誕生した生命が彼女たちに全てを預け、その様子を泣きながらレオルがリッチたちや彼の妻に感謝をしていた。


「ふふふ、ほらね?大丈夫だったでしょう?」


「…死ぬかと、本当に死ぬかと思った」


「2人ともよく頑張ったね…リッチさんとアウラさんもありがとうございます!」


 それぞれが赤子の誕生に祝福を唱え、やがて彼女たちの泣き声が落ち着くと[名付け]の話に移った。

 レオルとその妻たちは迷わずアウラに名付けを依頼するが、たまには別の人がと辞退する彼女の視線が流れた先はティアラ。


 しかし彼女はかつての夫、アミルに名付けを禁止されていることを悲しそうに告げると、必然的に注目は冥王へと移っていく。


 突然の指名に居心地悪そうにしていた彼であったが、ふと赤子を見下ろすとその目は険しいものに変わる。

 徐々に顔を赤子たちに近付け、母親たちもまた気まずそうに身体が強張るも、2人の女児らも息を呑むようにピタリと泣き止む。



 不思議そうにその様子を眺める一同であったが、リッチの深層心理を理解する者は誰もいない。

 やがて深いため息を吐きながら仰け反り、後頭部を掻きむしるアンデッドにソフィアが恐る恐る話しかけた。



「あの、どうかされましたか?」


『…ん?なんでもないよ……なんでもない』


「それで?リッチは名前を思いついたの?」


「ふふん、ゴリアテとゴライアスを超える名が付けられるかな?」




『……じゃ、ゲッカとヨウ…でどうかな』

『U N D E A D-全盛期なう-』は本編にて完結とさせて頂きます。

書き終えた充実感2割、反省が8割、と心残りはありますが、それでも初投稿として沢山の勉強をさせてもらえました。

また、これまで読んで頂いた方々、ブクマや評価、感想を書いて頂いた方々、誠にありがとうございました。まだ書きたい作品は沢山ありますので、再び皆様の目に触れる機会があることを楽しみにしています!

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