中編
中編です。
主人公、やはりツッコミっぱなしです。
「あの~、つかぬ事を聞きますが」
「なんでしょう」
どんと来い的な顔してるウサギ。
ウサギの表情が分かるほどスピリチュアルな人間では、けして無いけどなんて言うの、雰囲気?
「この国には、ウサギと人間がいるの?」
ウサどんが俺の質問にワロタ。ウサギに『HAHAHA』って感じで笑われた。
……まあ、よかろう。少しずつ流すことを覚えよう、俺。
「ウサギも人間も、ネコもイヌもおりますよ。もちろん馬もね」
雰囲気的にウインクしてそうな感じのウサどんです。
洒落っぽく言ったつもりなんだろうなウサどん。しかし、俺の関心は、そこに無い。
「え? ……全部しゃべるの?」
気になるのココ。当たり前。
「ええ。馬は、先ほど見ていただいた通り、ネコもイヌもしゃべります……まさか、サトシの世界では、ネコもイヌもしゃべらないのですか?」
言ってて途中で違和感に気が付いた模様のウサどん。真剣な表情になってる。……多分。
「基本、人間以外で意思疎通という意味では、しゃべる動物はおりません」
いや、ほら、俺の知らないしゃべる何かがいるかもしれないからね。
オウムとか九官鳥は、あれってオウム返しだし。意思疎通ではないと思うし。
「そんな……。では、やはりネコやイヌとも会話なさらないと?」
「しないっす。ネコとかイヌは、主にペットだったりします」
「ペット……というのは?」
おう! 落とし穴!! ペットの概念が無いのか。
まあ、こんだけしゃべっちゃうんじゃ、生物の立ち位置的には、同じかぁ。
あー、気分を害されない事を祈る。
「ペットというのは、飼っているイヌやネコの動物のことをいいます。飼い主としてその動物の食事の面倒や体調管理を行います。まあ、基本的には、可愛がるのが目的かなぁ」
なんだろう。説明する時、なんか丁寧語もどきになる。あと、気を使ってウサギもペットになる事は、今んとこ黙っときます。
そして、『飼っている』概念が伝わるか、そこは分からん。
「なんと不思議な……」
いいよ、ウサどん。流して。必殺『異世界だから』で、納得してくれ!
「イヌやネコに知り合いいる?」
ちょっとした疑問をぶつけてみる。
「はい、もちろん。ネコ族なら同じ伯爵位の友人が。イヌ族なら侯爵位の友人がおります」
「え!? 偉いの?」
おう、びっくり。イヌもネコも偉いらしい。ってゆーか『貴族』=『偉い』って図式になる辺り、思った以上に単純な自分にびっくりだよ。
しかし、気になる事がある。
……やはりモフモフなのか。気になる。
そんな、完全に思考が疲れだした俺を乗せて、馬車は街へ向かって走ってる。
**********
街の周りに城壁は、無かった。そして、しっかり街だった。結構でかそう。
「魔物とか出たりしないの?」
「魔物とは?」
「なんか凶暴な獣とか。人とかを襲ったりするヤツ」
小説とか漫画読みすぎか、俺。
「野生動物で我らを襲うものがいないとは言いませんが、魔物という生き物は、いないはずです。少なくも私は、聞いたことはありません」
おっと。ファンタジー的な状況では、無いらしい。
「もしかして、魔法とかは?」
「魔法? それは、おとぎ話ですよ、サトシ」
何、その大人が子供を見るような目。
しかも、しゃべるウサギにおとぎ話言われた。このしゃべるおとぎ話が!
……落ち着こう、俺。さあ、合言葉を。『異世界だから』。うぬ。
ん? ウサどんと俺が異世界転移してるのは、魔法じゃないの?
ダメだ。この話は、落ち着いてからにしよう。
馬車は、町に入ってすぐの大きな広場みたいな所で止まった。
「街中は、小さい馬車に乗り換えます。一度降りていただけますか、サトシ」
「了解」
ウサどんに言われて、素直に馬車を降りる。
「ユージン、ご苦労だったね」
「とんでもございません、旦那様」
おー、主従だ。なんかウサどんが偉く見える。
いや、偉いんだろうけどね。
「お待ちしておりました。旦那様」
うおっ! 黒ウサがいた。
あれ? 馬車には、乗ってなかったよね? 違う黒ウサ?
「アル」
ウサどんが呼んでる。間違いない。黒ウサ執事だよ。どゆこと?
「アルベルトには、馬で先に来てもらっていたのです」
びっくりした―。そういう事ね。
しかし、馬に乗るウサギ……。単身で馬に乗るウサギ……。
「旦那様、サトシ様、お疲れ様でございます。街中用の馬車を、こちらにご用意致しました。どうぞ」
「こちらへそうぞ、サトシ」
促されて少し歩くと、確かに小ぶりな二人乗り位の乗り物があった。
さっき乗ってきた馬車と違って、箱状ではないですよ。
見た目でいったら、人力車みたいな感じ。車輪は4つ。後方の左右の車輪が大きくて、前方の左右の車輪がちと小さい。座席部分の後方から蛇腹になった屋根というか、ひさし(?)が出てる感じ。
座席の後ろ部分の外側に台が付いてて、前方は、やっぱり馬に繋がってる。
さっきの馬車のお馬さんよりちょっと小ぶりなお馬さん。
「やあ、バレス。頼むよ」
「はい、旦那様」
この馬は、バレスっていうらしい。そんで、やっぱりしゃべるのね。
俺とウサどんが乗り込むと、黒ウサが後ろの台に乗りました。
え? そのための台かよ。
「バレス、教会へ」
黒ウサが、お馬さんに指示を出す。
「畏まりました」
馬車は、ゆっくり動き出した。乗ってるのは、俺とウサギが2羽。
……絵面がおかしい。俺的に。
サーカスにこんなんありそうやね。
思考が、失礼になるのは、許してつかーさい。声に出して言わないからさっ。
**********
馬車が止まったのは、白い壁に青い屋根の大きめな建物の前。
正確には、その建物の手前の門の前。
敷地は、鉄の柵で囲われてて、門の作りも同じ鉄の柵に見えた。
いや、正直この世界の材質なんて分かんないから、俺。
よく見ると門の柵には、装飾が施されてる。派手じゃないけど、そのおかげなのか素っ気ない感じはしなかった。
「開門願います!」
うおっ!? びっくりした―! 背後から黒ウサが、大きな声で叫んでびっくりしたよ。
そういう事は、先に言っとけー。俺の精神ゲージが見えてたら、今確実に目減りしたよ。
ちゅーか、ここに来て目減りしっぱなしだよ……。
黒ウサの声が届いたんだろうね。門が開いた。
馬車は、ゆっくりと門の中へ入っていく。馬車が入りきると、門がまた閉じていった。
……自動? って思ってたら、やっぱりウサギがおりました。
ウサどんでも黒ウサでもない別のウサギが。
まあ、そういう事もあるよね。大丈夫。そこは、今更だから、俺大丈夫。
「ここって警備が厳重なの?」
「いえ。正面には、解放されている出入り口があります。そちらは、自由に出入りできますが、こちらは馬車専用の入り口なのです」
ウサどんが説明してくれました。
「建物が作られた当時は、柵があったのですが、今では皆に解放されている場所なのです」
「ふ~ん」
補足説明付きました。が、俺の理解度を黒ウサに素早く見破られた模様。
「サトシ様。こちらは、神の家でございます」
「え?」
神の家? ……宗教? ってことは。
「はい。こちらが教会になります」
ウサどんが、にっこり(多分)しながらそう言った。
ほう、と感心していると、建物の真横に馬車が着いてたよ。
扉の前には、白が基調で立ち襟と袖の部分が青い衣装を着た人たちが立っていた。
うん。間違えてない。30代くらいに見える男と、……白いウサギが立っていた。
おう。混合チームですね。
そういえば、ウサどんとこのメイドさんも混合だったね。
「ようこそお越しくださいました、ルッケンバウアー伯爵」
「忙しいところに申し訳ないね」
教会の人、……神父さん? 牧師さん? が丁寧に挨拶してる。
まあ、ウサどん伯爵だもんね。
「とんでもございません。お世話になっている伯爵様をお迎えできるのは、何時でも喜ばしい事でございます」
白ウサさんが丁寧なお辞儀しとります。
そして、会話の間に黒ウサがテキパキ動いてます。
馬車の前に階段状の台を置いてくれました。さすが黒ウサ。無駄な動きが無いよ。
ウサどんに続いて馬車から降りると、すぐにウサどんが説明し始めた。
「こちらは、私の客人でサトシ殿とおっしゃる」
「初めまして、サトシ・タカムラといいます」
紹介されたので、挨拶はしないとね。
「初めまして、当教会の神父、マルケス・ルーと申します」
こちら人間の人のご挨拶。
「初めまして、同じく神父のエドガー・ルーと申します」
こちら、ウサギの人(?)のご挨拶。
神父だって。俺の小さい謎が解けました。
関係ないけど、神父さんズの立ち姿が、何とか合唱団的なものに見える。
そんでもって、白ウサさん……雄なのね。
あと、どうでもいいけど、ルー一族で構成されてるのかいな?
結論。別にルー一族ではないらしい。神父とか神母(ようはシスターかな)になると、神の下にってことで全員『ルー』になるんだってさ。
『ルー』の意味まで突っ込まなかったよ。もういいよ(←正直な俺の心の声……)。
神父さん達に案内されて教会の中を見学した後、大きな庭を抜けて別の建物までやって来ましたよ。
いや、気分的には、『The 世界●産』だったよ、俺的に。
へ~、ほ~って関心することしきりではありましたが、物の良し悪しまで分かりませんがな。俺、芸術に触れたのは、高校までの学校での美術くらいさ。
ハードル高いって。
……すんません。お腹一杯で正直右から左でした。すんません。
大事な事だから、とりあえず2回謝っといたよ。まあ、心の中でだけど。
という訳で、別の建物ですよ。
なんか、雰囲気が教会とは、ちと違う気がする。
建物としては、今見てきたやつより小ぶり。白というよりクリーム色の壁に、屋根はやっぱり青いけど、宗教的キラキラ感がないね。
なんか、宗教関係のものって、キラキラ感が俺の中にあるんだよね。
それこそ、芸術系に分類される感じの。(感想には、個人差があります。)
「ここは、何の建物?」
素直に聞いてしまえ。まあ、多分今から説明してくれるトコだったんだろうけど。
「こちらは、学びのシンシャになります」
「えーと?」
シンシャってなんすか?
「サトシの所には、ありませんでしたか?」
俺の反応の悪さに、ウサどんが首を傾げておりますな。
「サトシ様。こちらは、町の子供達が勉強を教わる場所になります」
黒ウサ殿、かたじけない。つまり、学校ね。
学校=シンシャっていうのかと思ったら、教会の敷地内だから『神の舎』で神舎ね。
学校は、12歳以上の子供が行く所で別にあるらしい。こっちは、近いところで小学校かな。
でもなんだろう。このこじんまり感が、学校っていうよりちょっと大きな塾って感じ?
って思ってたら敷地の何処かから『リンゴーン』って感じの鐘の音が響いてきた。
その後、建物の中からたくさん椅子を動かす音がして、どうやら授業が終ったらしい。
しばらくすると、建物の扉が開いて、わらわらと子供達が……、子供……。
……子供と子ウサギ達が、わらわらと出てきたよ。
まあ、だよねー。
「あっ、伯爵様だー」
「ほんとだ。伯爵様だー」
うお! モフモフ祭りだ!
「よく勉強したかな」
また『HAHAHA』って笑いながら、大人な余裕のウサどんが見れました。
そして、ウサどんに群がる子ウサギと子供。子供を差し引くと、モフモフまみれですな。
……何だろう、動物ふれあい広場的な俺の視界。間違ってないよ、俺。
しかも、よく見ると子ネコと子イヌもおりました。やっぱり、サイズは大きい気がするけど。
本当だったんだー。
子ネコと子イヌは、後ろ脚で立ってる。……立てるんだ。
しかし、人気者でした、ウサどん。さすが伯爵。
いや、伯爵様的な人のポジションがどうなってんのかは知らんがね。
なんで、教会だったのか聞いたら、ウサどん曰く。
「ここが、街で一番高台になるんです。ほら」
言われて振り返ると、確かに街並みがよく見えた。
やっぱ、ヨーロッパ的な写真で見る古い綺麗な街って印象だったよ。
「へー。思ったより大きいかも」
まあ、『町』でも『村』でもない『街』だしね。
**********
モフモフと景色を堪能した後に、街の中へ移動して馬車の中から見学した感じ。
歩くかって聞かれたけど、遠慮したよ。なんですかねぇ。心に余裕が、無いね。
思いっきり異世界だからね。あと、変なフラグは立てたくねー。
……俺が気にしてるのは、帰れるかどうかなのだよ。
お陰で、心に余裕が1ミリもござーせん。
後さー、俺さー、別にツッコミの人じゃないんだよねー、基本。
それが、ウサどん相手だとツッコミまくってるから。まあ心の中が、主に活動拠点だけど。
あと、ウサどんに限らずだけど……。
人間、心に余裕がないと、色々落ち着かないって気が付きました。
ごめんなさい。だから無事に帰してください。神様的などっかの誰か様。うぅ……。
だもんだから、街中はテキトーに眺めて通り過ぎたよ。
「着きましたよ、サトシ」
馬車が止まってウサどんに言われたけど、……ドコに着いたの?
俺、見上げました。ええ、文字通り。
何か、デッカイお屋敷の前に馬車止まったー。
「……デカ」
半分無意識で呟いちまいました。
てか、やっぱり……ドコ?
「我が家へようこそ、サトシ」
ウサどんが、にこやか(多分)に言いました。なんか自慢げに。
「…………は?」
えっと、さっきの郊外にワープした? 思わず周りを見回したけど、街中で間違いない。
異空間? いや、でも、最初に見た屋敷とは、ちょっと形とデカさが違う気がする。
「ようこそいらっしゃいました、サトシ様。こちら、ルッケンバウアー伯爵家本邸にございます」
黒ウサグッジョブ。さすがです。出来る執事は違うね。
そういう事ねー。最初の家って別宅かなんかだったんだー。へー。
……ちっ! 金持ちめっ!
「……お邪魔します」
とりあえずご挨拶。
「お帰りなさいませ、ジョシュア様」
門が開いて声が聞こえたから、思わずそっちを見た。
ちょっと、ジョシュアって誰だっけって思いながら。そうそうウサどんだーって思いながら、特になにも考えずにね。
「ギャーッ!!」
思わず叫びました、俺。
だって、トラがいたんだよっ!
逃げて、ウサどん! 食べられるから! いや俺もっ!
完全に、肉食獣だって。
**********
「どうしました、サトシ!」
俺のデカい声にそらウサどんも驚きますわな。
でもソコ違う! トラに驚いてあげてっ!
「ジョシュア様、こちらは?」
聞き間違いでなければ、トラが穏やかそうに言った。
……え?
「アゲート、ただいま。こちらは、私が異世界に行った時に助けて頂いた恩人のサトシ殿だよ」
ウサどん、会話してるし。
「おお! お客様ですね。ようこそいらっしゃいました、サトシ様。そして、我らが主を助けて頂き、誠にありがとうございました」
トラさんが、深々とお辞儀ナサイマシタ。
「……イエ、ナンノオカマイモシマセンデ」
この流れ……、お前もか。
「大丈夫ですか、サトシ?」
「ハイ。大丈夫」
今、俺の言語機能は、底辺で迷走中デス。
落ち着こう。ほら、合言葉を! 『異世界だから』って。
「えっと、こちらは?」
とりあえず、状況確認は大事。このトラさんの情報を求む!
トラさんは、後ろ足の二本で立ってます。体には、重くはなさそうな簡単な鎧(?)を付けてる。もちろん、下に服らしき布地も見えるよ。そんで、左手に長い棒を持ってる。
多分、棒術とかの棒なんじゃないかな。つまり武器だね。
「こちらは、ルッケンバウアー伯爵家の警備責任者で、私兵による騎士団の団長を務めるアゲートと申します」
黒ウサから、ナビ入りました。
そうですか。……団長さんデスカ。
「ルッケンバウアー伯爵家に仕える、バレステナ騎士団団長、アゲート・ゼル・アザルと申します。よろしくお願い致します」
トラさん、ご丁寧にどうも。
「異世界から参りました、サトシ・タカムラです。よろしくお願いします」
いや、よろしくする事がないと良いなと思いつつ、今はこれが精一杯です。すんません。
うぅ……、どっと疲れたよ、俺。
あと、バレステナって何て意味って聞いたら、街の名前だって。
どうでもいいけど、気になることが……、この国、小動物の方が、比較的地位が高いのか?




