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黄昏の転生者(ストレンジャー) 旧:雷霆の騎士  作者: 林檎亭
3章 ユミル王立士官学園 第二片
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理想と現実と理想


 前世で友達と海とかプールとか行かなかった事が、まさかここで影響してくるとは。アニメでは女の子同士が水を掛け合ってキャッキャしてたけど、まさか男同士でするわけにもいかないよな。あとすることと言えば……泳ぐ?

 とりあえず提案してみる。


「泳ぎ方知らねぇんだけど」

「え、そうなの?」

「泳ぐ機会なんてこれまでなかったからよ」

「そういえばそっか」


 義務教育で水泳がある日本とは違うのだ。そりゃ泳ぐ必要性がなければ、泳ぎ方なんて知らないだろう。そんな事も失念していた。


「ソールは泳げんの?」

「一応」


 前世でのこともあるし、こっちでもスカジに水泳はやらされた。しかも服を着たまま。


「なら教えてくれよ」


 エインの提案に対し、こちらとしては断る理由もないので頷く。水遊びも思いつかないし。




 エインの手を取って、後に引っ張りながらバタ足を教える。元々の運動神経はいいので、すぐに様になってきた。

 水に対しての恐怖心とかもないみたいだし、これならすぐに泳げるようになるだろう。

 にしても、なんかエインとだけ遊んで終わりそうな気までしてきたんだけど。不満ってわけじゃないけど、やっぱりアニメと違って現実はこんなもんである。

 そう悟りを開きかけた時、離れた所から声がした。


「おーい、ソールー! エインー!」

「シシリー」


 声のする方へ自然と顔を見けると、その光景に息を呑んだ。

 こちらへと駆けてくるシシリーは真っ白なワンピースタイプの水着に身を包んでおり、その中で目立つのが張り裂けんばかりに盛り上がった双丘だった。水着に窮屈に押し込められたそれは、圧倒的な質量をもってその全てを圧し潰さんばかりである。年齢の割に大きいとは思ってたけど、まさかここまでとは……。将来的にはスカジにすら匹敵するかもしれない。さらにそればかりでなく、普段から武術科で鍛えているだけあって、引き締まる所はしっかりと引き締まっている。身体の各部位は太すぎるわけでも細すぎるわけでもなく、見事に調和が保たれていた。

 いや、いかん。

 シシリーは妹みたいなものだ。

 邪な目で見ちゃいけない。

 僕は頭を振ると、笑顔でシシリーに手を振った。笑顔が引き攣ってないことを祈りつつ。


「じゃーん。どお、似合ってる?」


 川のすぐ側までくると、シシリーは両手を広げて水着をアピールしてきた。いや、ちょっと刺激が強いので勘弁して欲しいです。


「う、うん。すごく似合ってるよ」


 それだけの言葉をなんとか絞り出す。


「ほんと? よかったぁ」


 僕の言葉を聞いて、シシリーが安心したように微笑んだ。

 ぐっ、心臓が!

 さっきまで男同士で遊んでいた僕には効きすぎる。

 逃げ道を求めてエインを見ると、エインも固まっていた。それを見て、やっぱりエインも男の子なんだなと思うと、ちょっと平静を取り戻せた。


「えっと、シシリーだけ? 他のみんなは?」

「すぐ来るよ。ほら」


 シシリーが指差す方から、カスミとセラとヒルダ、そしてその後に隠れるように白い布っぽいものを羽織ったフィスが歩いてきていた。

 みんなが水着なのは当然といえば当然なんだけど、意外にもヒルダも水着を着ていた。てっきり性格的に断るかと思ってた。


「やぁ、お待たせ。水着は初めて着たけれど、中々動きやすくて良いね」


 カスミは黒のセパレートタイプの水着で、少し落ち着いた雰囲気だ。水着の黒と髪の黒がいい感じに合ってる。


「これだと汚れを気にしなくていいよね! 実験の時も、これ着てたらダメかな?」


 セラはオレンジの水着だ。なんというか、引き篭もって実験ばかりなせいで真っ白の肌には良く合ってた。


「こっちは見ないでいいです」


 ヒルダは濃い目の黄色の水着を着ているっぽい。残念ながら上着を羽織っているので、上半身部分はよく分からない。下はスカートみたいになっていて、随分と可愛らしい印象だ。

 とにかく、誰もが一様に似合っていて、僕としては目の保養と言うべきか、目の毒と言うべきか困るところだ。

 けれど、そんな中で一人だけどうにも気になる人がいた。


「フィス。いい加減観念しなよ」

「か、観念ってなによ。私は別にそんな観念するような事ないわよ」

「其の格好でよく言う」


 カスミが呆れたように肩を竦めた。

 フィスはてるてる坊主を彷彿とさせるような格好だった。首から下が白いスーツで完全に隠れている。


「フィスはどうしてそんな事になってるの?」

「特に理由なんてないわよ。ちょっと寒いからよ」

「理由言ってるじゃない。と言うか、むしろ暑い位でしょ?」

「そんな事ないわよ」

「でも、汗かいてるよ」

「こ、これはよだれよ」

「其んな言い訳無いよ」


 ぐぬぬと項垂れるフィス。言い訳が苦しいものばかりなので、フィスは追い詰められるばかりである


「もしかして恥ずかしいの?」


 年頃の女の子、特に人に肌を晒す習慣がないこの世界では、水着姿で他人の前に出るのはもしかしたらよっぽど恥ずかしいことなのかもしれない。そう思って、何の気なしにそう言ったのだけれど、それを聞いたフィスの目が吊り上がった。


「は、恥ずかしくなんかないわよ! ええ、そうよ。いいわ。じゃあ、こんな布取るわよ」

「上手く挑発に乗せたね」


 カスミに言われるが、こちらとしては全然そんな気がなかったので心外である。

 フィスは布に手を掛けながらも、チラチラとシシリーを見ては躊躇っている。どうしたんだろう? やっぱり嫌なのかな? 嫌なのは無理強いしちゃ駄目だよね。


「えっと、無理しなくてもいいよ?」


 フォローのつもりで言った。誰にどう言われようと、僕は本当にフォローのつもりだったんだ。

 しかし結果的には火に油を注いだらしい。


「無理じゃないわよ! て、てい!」


 フィスは微妙に弱い掛け声と共に、身体を覆っていた布を取り去った。


「――っ」


 その下に隠れていた姿を目の当たりにした僕の喉の奥で息が詰まった。

 フィスの水着は青を基調としたビキニタイプだった。金色の髪と白い肌によく似合っている。細身のイメージが合ったけれど、いつの間にか全体的に丸みを帯びた非常に女性らしい曲線を描いていて、腰から足にかけてのラインが得も言えぬ色気を醸し出している。本人が気にしている通り、胸は非常に控えめだけど、逆にそれがとんでもない高威力を持っていた。言葉には上手く出来ないけど、少なくともシシリーの魅力に決して負けてはいなかった。


「――ぇ」


 声が聞こえた気がした。


「ねぇ。ねぇってば」


 気がつくと、フィスが僕に声を掛けていた。


「ねぇ、聞いてる? なんとかいいなさいよ」


 フィスは恥ずかしげに、それでもおずおずと水着を僕に見せるようにしている。

 えっとこれってどういう状況?

 頭の中がパンクしていたせいで、会話の流れが掴めてない。それを察してくれたのか、カスミがこっそりと耳打ちしてくれた。


「感想を待ってるのよ」


 そうか。

 感想。そうだな。感想。そう、感想言わないと。

 僕の言葉をジッと待つフィスを見つめ、喉の奥から絞り出すように言葉を伝える。


「えっと、その、凄く綺麗だよ」


 うわ、なんだこれ! 恥ずかしい!


「え……あ、ありがと……」


 フィスが顔を真赤にしてそっぽを向いた。

 僕もフィスの顔が見られなくて、川面を見つめた。


「むぅ。ソール! あっそっぼ!」


 シシリーは声を上げたかと思うと、僕めがけて飛び込んできた。


「ちょっうわっ」


 水面は激しく波立ち、水飛沫が舞った。


「つめて! かかったじゃねぇか!」


 僕の隣にいたせいでモロに水を被ったエインが楽しげに、シシリーへお返しの水を掛けた。


「本当に冷たい! えい!」


 シシリーも負けじと僕とエインに水を掛ける。


「なになに、楽しそう!」


 セラも同じように飛び込んできた。一層高く跳ねた水飛沫はその場にいた全員に降り掛かった。


「やったわね!」

「乗り遅れる訳にはいかない」


 そうしていつの間にか大乱戦となり、誰も彼もがずぶぬれになるほどにたくさんの水を被った。




 どれくらい経っただろうか。

 散々叫んではしゃぎ、やがて誰ともなく静かになり、三々五々好きなように過ごし始めた。

 そんな中でエインが提案してきた。


「ちょっとその辺探検しようぜ」

「いいけど、ここから離れるなら、モルガナ様と親衛隊の人に声かけないと」

「えー、んなもん別にいいじゃねぇか。そんな遠くまで行かねぇよ」


 とは言っても、こないだも危ない目に遭ったばかりだからなぁ。


「この周りをその親衛隊が警護してんだろ? なら、その範囲内しか行かねぇからよ。つか、どうせ行こうとしても止められんだろ」

「まぁ、確かに」


 そんなに狭い範囲なら大丈夫かな?


「なになにー? どっか行くのー?」

「ちょっとその辺散歩するだけだよ。セラも来るか?」

「うん、飽きてきたし、いくー」


 あ、なんか行くこと決まってる。ま、いっか。

 僕らは川から上がると、上流へ向かって歩き出した。

 少し行くと、川の先は滝になっていた。数mの高さから水が勢い良く落ちてきている。幅はそんなにないけど、それなりの水量で迫力がある。


「ほえー。すごいねー」

「滝ねぇ。こんなもん初め見たぜ」


 二人は感心したように滝を見上げている。でも確かに見惚れる気持ちも分かるような荘厳さだった。


「なぁ、上に上がれねぇかな」

「さすがにそれは止めてこうよ。そうなるとさすがに一度戻って、報告しないと」

「だよなぁ」


 あまり本気で言っていたわけではないのか、エインはあっさりと引き下がった。しかし興味は依然高いため、滝の周りをウロウロしながら色々触ったり眺めたりしている。セラも気のままにあっちに行ったりこっちに行ったりしている。

 そうして少し経った時、セラが不意に声を上げた。


「あれ? ここなにかあるよ」


 言われるがままに、その場所を覗いてみると、確かにそこには空洞が在った。人が一人二人通れるくらいの岩の裂け目だ。けど、なんだろう。微妙な違和感がある。


「変だよこれ」

「変って、なにがだよ」

「うーんとね。なんだろ。これは……」


 セラはしばらく調べるような手つきで岩を触っていたが、すぐに何かに思い当たった。


「そうだ。岩質が周りとちがうんだ。この岩だけちがう岩・・・・なんだ」

「どういうことだ?」


 僕とエインは顔を見合わせたが、それに答えてくれる人はいなかった。


「んふふふー」


 セラは変な笑い声を上げたかと思うと、ひょいと空洞へと入り込んでしまった。


「ちょっと待てよセラ」


 後を追うようにエインも入っていく。


「2人共、そんな不用心に行ったらダメだって」


 こうなっては僕だけ入らないというわけにはいかない。僕らは3人揃って謎の穴へと這入っていった。

水着についていろいろ調べたんですが、ソールがそもそもそんな水着に詳しいわけもないので、無駄に詳細な表現は控えました。


次回更新は9月11日7時の予定です

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