表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の転生者(ストレンジャー) 旧:雷霆の騎士  作者: 林檎亭
3章 ユミル王立士官学園 第二片
95/98

役に立たない前世

 計六人を乗せた馬車は学園都市エンティア・ユルヴを出発し、しばらく王都方面へ進み、中間に流れる川を渡った所で川沿いに北上し始めた。そのまま揺られること数刻、すっかり人里の気配はなくなり、やがて木々もまばらな森へと這入り進んだ。綺麗に均された道を進んでいるのか、揺れはそこまででもない。木漏れ日に感嘆し、それも飽きてきた頃に馬車は目的地へと到着した。

 森の中にぽっかりと空いた空間に、堅実ながらも洒落た木造の家がひっそりと建っていた。そのすぐ傍らには静かにせせらぐ清流がある。

 王族やその招待客のみが使うことが許されているだけあって、その静謐な雰囲気はむしろ息を呑むほどであった。


「うおー、さっすが王様の別荘は別荘でもデケェな」

「ほえー」


 エインとセラもそれぞれに感動しているようだった。


「森と言うには見通しが良く、陽の光も適度に入り込んでくる。近くに川がある事で水にも困らない。喧騒から程良く離れ、且つ戻ろうと思えば直ぐに戻れる距離。うん、中々良い立地ね」

「なんか家は大きいけど、森がすっかすかでむしろ気になるわ」


 フィスとカスミは感動と言うには程遠い感想を述べていた。


「わぁ、素敵な所。こんな素敵な場所でソールと過ごせるなんて夢みたいだわ」


 シシリーがくるくる回りながら、器用に腕に抱きついてきた。同時に柔らかな感触が押し付けられる。


「し、シシリー。危ないよ」


 と言いつつ体を離す。シシリーってば本当に無防備で心配になる。

 僕はほら、精神的には大人だから大丈夫。子供にドキドキしたりしない。しない。


「ようこそ、私の別荘へ。ホストとして、また本日は君たちの友人として歓迎するぞ」


 いつの間にか別荘の前にモルガナが仁王立ちしていた。


「良い所じゃろう? お父様が元気な頃はよくいらっしゃっていてな。私も中々に気に入っているのじゃ」

「そうですね。とても静かでのんびりできそうです」

「では皆様、お部屋へ案内します。お荷物はこちらでお部屋へお運びしますので、そのままお出で下さい」


 ティティスさんが恭しく礼をして僕らを先導した。モルガナも倣うように並んで歩き出した。


「そう言えば、お主の寮の住人は全員は来なかったのかの?」

「え? あぁ、そうですね。一人は外出が嫌みたいで留守番です」

「そうか。それは残念じゃのう」


 モルガナが本当に寂しそうな目をした。そんなに残念だったのか。


「そうですね。ヴィヴィアンも来ればよかったのに」

「ほぅ、ヴィヴィアンと言うのか」

「はい――って、知ってらしたわけではないんですか?」


 てっきり調査済みかと思ってた。寮メンバーが足りないことに気付いていたみたいだし。


「そ、そうじゃな。私とて知らぬ事は知らぬからな」

「そうですか」


 まぁ、名前まで知らないのは別段おかしいことでもないか。


「しかし、次の機会があれば、その時は是非会ってみたいもんじゃのう」


 果たしてヴィヴィアンが来ることはあるのだろうか。




 部屋割りは僕とエイン、フィスとカスミとセラ、シシリーとヒルダとなった。


 部屋を確認した後、早速広間に集められた。

 ソファーにはモルガナが座り、その両隣にティティスとランスロットが立っている。


「それでは皆様、簡単な注意事項とスケジュールをお伝えします。まず、この辺りは魔獣が少なく人も近付かず、更に親衛隊が周囲を警護しているため安全ではありますが、単独で目の届かないところまで行くのはご遠慮ください。どうしてもという場合は必ず複数名で、かつ別荘周辺の親衛隊を誰かしらお連れ下さい」


 あぁ、やっぱりずっと馬車を囲んでいた気配は親衛隊の人のものだったのか。

 それからティティスはいくつかの本当に簡単な注意事項と、食事と消灯の時刻を僕らに伝えた。


「基本的には各々自由に過ごしてくださって構いません。ですが、提案としてこのようなものは用意させていただきました」


 そう言いつつティティスが手を叩くと、メイドさんぽい人が何か包みを持ってきた。それをおもむろに広げるとそこにあったのは――


「水に入る時に着用するための衣装を用意させていただきました」


 紛うことなく水着だった。




 水着を渡された僕たちは男女それぞれの部屋に分けられた。女性側はティティス率いるメイドさん達が一緒に入っていったけど、僕らは水着だけ渡されて空き部屋に放り込まれた。「穿けばいいだけ」だからとか。いや、確かにそうなんだろうけど。


「貴族様は水に入るのにも専用の服に着替えるんだな」


 エインは感心した様子でせっせと服を脱いで、水着を眺めていた。あまりにも男らしく裸で仁王立ちしているので、さっさと穿いてしまって欲しいところである。

 水着かぁ。前世以来だなぁ。と言っても、学校のプールの授業くらいでしか着たことなんてないけど。大学では泳ぎに行くという発想自体でなかった。夏は引きこもってオンラインゲームだ。

 少し懐かしがっている間に着替え終える。着替えと言っても早いもんだ。

 元いた広間でエインと女性陣を待つ。長いだろうなと思っていたけど、僕の想定は甘かった。待てども待てども着替えが終わる気配がない。人数も多いし、そりゃ時間が掛かるだろうけど、それでも長い。


「ジッと待ってんのもつまんねぇし、先に行こうぜ」


 エインの提案に同意し、一足先に川辺へ行くことにした。




「うおー、水つめてぇー!」


 気温は高いのに、川の水はかなり冷たかった。冷蔵庫にでも入れてあったのかと思うほどだ。

「しっかし、こう暑いとそれでも気持ちいいなー」


 最初は冷たく感じた川の水も案外すぐに慣れるものである。僕らは揃って川へと入っていった。深いところでは腰ほどもある。

 そこまで入った所で、エインと僕はあることに気付き目を合わせた。


「それにしても、川で遊ぶって……なにやるんだ?」


 それは僕にも分からなかった。


一週間空いた上に短くてスイマセン。次回はちゃんと来週の月曜に更新します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ