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黄昏の転生者(ストレンジャー) 旧:雷霆の騎士  作者: 林檎亭
3章 ユミル王立士官学園 第二片
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馬車内の攻防

 そうして数日が過ぎ、夏休みへと突入した。




 早朝、まだ空気が少し冷える頃、静かな街中に馬の嘶きが響いた。

 からからと車輪が地面を転がり、蹄が土を踏みしめる。

 この場に不釣り合いな音がやって来てやがて止まると、程なくしてドアがノックされた。


「おはようじゃ諸君! 準備はできたかのぅ!」


 そして返事をする間もなく、ドアが開け放たれ、やたらテンションの高いモルガナが飛び出してきた。


「お早うございます皆様。お迎えに上がりました。モルガナ様、入り口に立たれると邪魔になるので避けて下さい」

「おお、すまぬのう」


 後ろからティティスが静かにやってきた。んで、ここの主従関係どうなってんの。


「おはようございますモルガナ様、ティティスさん」


 カスミが率先して挨拶を返し、僕らもそれに続いた。


「なんじゃ。若いもんが元気がないのぅ。もっと元気に挨拶せんか!」

「モルガナ様が煩いだけです。さぁさぁ皆様。馬車の準備は整っています。皆様のご準備が整っておられましたら、順次乗り込んで下さい」


 促されるままに荷物を持って外へ出ると、途中で荷物は回収され、僕らが乗るようとは別の馬車へと載せられていった。


「おぉ、すげぇ」


 馬車に乗り込んだ所で、エインが感嘆の息を漏らした。

 内装はやはり豪華で、かつ椅子がふかふかである。これは前世でも経験のない柔らかさだ。一体何の素材使ってるんだろう。これなら馬車での最大の敵、尻が痛くなるから逃れられそうだ。

 さらに馬車内は広く、全員が乗ってもゆったり出来るほどのスペースがあった。


「おや、私の乗るスペースがないんじゃが」

「モルガナ様は別です」

「えー、私も若者と一緒に旅がしたいんじゃがー」

「駄目です」


 僕らの乗った馬車に乗り込もうとしたモルガナはティティスに引き摺られて、後の馬車へと消えていった。


「なんだか、今日のモルガナ様テンション高いね」

「そうだな。それにティティスさんもやけに砕けてる感じするぜ」


 それも思った。


「今日は公務とは別だから、少し気が抜けているんじゃないかな」

「どっちでもいいわよ。私、あの二人のこと全然知らないから」

「今日のっおっ昼っは、なーにかなー」


 今さっきあった事を話題にしていたはずなのに、一人だけ既に意識が未来へ飛んでいた。




 間もなく3台の馬車は発進し、街を出た所で更に馬車が合流して増えた。


「ソールー!」


 窓から身を乗り出して手を振っている女の子が目に付いた。


「シシリー、おはよう」


 僕も窓から手を振り返す。

 シシリーの乗った馬車はゆっくりとこちらに近付いて……あれ? 近くない? そろそろ止まらないとって――うわ!

 シシリーの馬車はこちらの進路を塞ぐような形で停車した。


「あ、危ないわね。何考えてるのよ、あの子」


 フィスが怒っているけど、危ないというのは同感だ。どうしたんだろ。まさか馬の制御が効かなかったとか? そんな感じはしなかったけど。

 そんなことを考えている内に、シシリーが馬車から降りて、こちらに向かってきていた。


「私もこっち乗る!」


 そしてドアを開け放つと、そんなことを言い放った。


「ダメよ。こっちはいっぱいよ。戻りなさい」


 間髪入れずにフィスが返した。


「大丈夫。詰めれば座れるから! よいしょっと」

「ちょっと、私とソールの間に入らないでよ。狭いじゃない」

「気にしない気にしない」

「気にするわよ。せめて座るならあっちにしなさいよ。あっちならまだ少し余裕あるわよ」


 フィスが対面の座席を指して言った。

 現在は窓側から僕とフィスとカスミが並んで座り、対面にエインとセラが座っている形だ。正確には現在はシシリーも加わってるけど。


「私はソールの隣がいいんだもん。フィスこそ狭いのが嫌なら向こう行けばいいじゃない」

「いやよ。なんで私がわざわざどかなきゃいけないのよ。途中で入ってきたアナタがあっち行きなさいよ」

「いーやーでーすー」

「こっの」

「ちょ、ちょっと待ってここで喧嘩しないで」

「其うだよ。こんな所で喧嘩をされると私達だって被害を受けるんだから」

「それならシシリーに言ってよね」

「つーん」

「よし、今すぐ叩き出しましょう」

「分かった。分かったよ。私が離れるから、喧嘩は止めなさい」


 カスミは溜息をつくと対面の席へと座り直した。


「もう、カスミが譲ることないのに」

「まぁまぁ。丸く収まるなら良いじゃないか。ね、フィス」

「仕方ないわね。ソール、ちょっと詰めなさい」


 フィスは徐ろに立ち上がると、僕の正面に立った。ぐいぐいと僕をシシリーごと押しやると、窓際の席に座った。


「よし」


 フィスは何かに納得すると、するっと窓の外を見た。


「なんだ、フィスも窓側が良かったのかな。言ってくれれば最初から席変わったのに」

「ふんだ」

「おい、見ろよセラ。あれが何も分かってない奴のアホ面だぜ」

「あほづらー」


 何故かエインが僕を見ながらそんな事を言った。なんなんだろう。心なしか他の人の目線もやや冷たい気がする。本当になんなんだろう。

 まぁでもとりあえずはこれで落着かな。

 何か忘れてる気がするけど。


「ところで、私は何処に座れば良いですか」


 最後に、ドアの前に立っていたヒルダが僕らを見上げて言った。

次回更新は8月21日(月)7時の予定です

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