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黄昏の転生者(ストレンジャー) 旧:雷霆の騎士  作者: 林檎亭
3章 ユミル王立士官学園 第二片
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忍び寄る悪意に足音はない

 翌日、ライオネルは欠席していた。

 さすがにやりすぎたかな……

 でも謝りに行くのも違うよなぁ。また余計に怒らせそうだ。

 彼を気にかけつつも、何日か平穏無事に経った頃、ライオネルが登校してきた。

 だけど今まで通りとは行かないようで、以前ほど居丈高に振る舞うことはなく、随分と大人しくなっていた。

 更にはライオネルから僕に声を掛けてきた。


「やぁソール。先日は悪かったね。俺も少々反省している。よければこれからも級友として宜しく頼む」


 そう言って手を差し出してきた。

 呆気にとられたまま、僕はその手を取った。


「――っ!?」


 ぞわりと、背中に悪寒が走った。


「ありがとう。それでは」


 ライオネルは確りと手を握ると、直ぐにその場を離れていった。

 その背中をジッと目詰める。

 なんだったんだ、いまの悪寒。

 まるで、得体の知れないものを目の当たりにしたような……。




 夏も近付いてきた頃、新しい実習が通達された。

 小隊規模で遠征をする、というものだ。

 遠征と言っても、3日ほどで往復できる距離で、魔獣もあらかた討伐済み。二~三泊野宿の遠足みたいなものだ。

 さすがに先日、魔獣の襲撃を受けたばかりなので、護衛として騎士団が経路を巡回し、安全確認と適時魔獣を討伐することになっている。


「今までやってきた日帰りの演習と同じようにすれば大丈夫だ! 貴様達なら問題はない!」


 ベイリンが激励しつつ、黒板に当日の詳細な取り決めを書いていく。


「小隊は六人で編成してもらう! こちらからメンバーの指定はしないが、ある程度はバランスを考えて組むように! 以前に、観測が苦手な者だけで組んで、道に迷って帰ってこれなくなった事もあったからな!」


 それは怖いな。


「メンバーが決まったグループは後ほど私の所に報告に来るように! その時に地図も渡す! それでは本日のホームルームはここまでだ!」


 ベイリンが教室を出ていくと、教室内が一気に騒がしくなった。

 みんな誰と組むかで盛り上がっているようだ。

 それにしても六人編成か。まぁ、やっぱりメンバーは――


「おう、ソール組もうぜ」

「私も、私も!」


 こうなるよね。僕ももちろんそのつもりだったので、逆に声が掛からなかったら泣いているところだ。シシリーも一緒ということは、自動的にヒルダも一緒ということになる。

 これでメンバーは僕を合わせて4人。と言う事はあと2人。学科が一緒ならセラとパーシィも誘うけど、錬金科に遠征実習なんてないしね。


「あと2人どうしよっか?」

「えー、もう4人でいいんじゃね」

「それはさすがにダメでしょ」


 とは言っても、入学してからこっち、ほとんどこのメンツでしか活動してないから、クラスに仲の良いやつが全然いない。ここで生来の人見知りが祟ってくるとは――!

 ここはコミュ力の高いエインか、知人の多いシシリーに頑張って貰うしか。なんて思ってたら、男子生徒が2人近付いてきた。


「えっと、まだメンバーに空きあるかな?」

「僕らも、えっと、一緒に入れてくれない?」


 確かこの2人はレヌアールとベノワだっけ。話したこともないのでびっくりしたけど、もしかしてエインかシシリーとは顔見知りなのかな? と思ったら、2人も一緒に顔を見合わせていた。

 え、誰も心当たりないの。


「えっと、どうかな?」


 返事がなくて不安に思ったのか、ベノワが再度問いかけてきた。

 うーん、どうしたらいいんだろう。そう思って2人を見ると、目で「任せる」と言ってきた。ような気がした。

 僕が決めるのかよ。

 まぁ、断る理由もないしいっか。


「うん、大丈夫だよ。よろしくね」


 そう答えると、2人は安心した表情を浮かべた。それになんとなく違和感を抱いた。理由は分からないけど。

 というわけで、メンバーが早々に決まった。

 |ソール(僕)、シシリー、エイン、ヒルダ、レヌアール、ベノワだ。

 それから役割分担なんかを話し合って、ベイリンに報告、地図を貰い。あとは実習の日を待つだけとなった。




 実習当日は良く晴れた遠足日和だった。風が心地良い。

 Aクラス32名5グループが門を出た所で整列していた。


「それでは先日通達した通り、四半刻(30分)毎に出発してもらう! 目標地点は同じだが、ルートはそれぞれ変えてある為、余程道を間違えない限りは他のグループと遭遇ことはない! つまり、他のグループと遭遇したら、どちらかが道を間違っているということだ! また、今回は念のために実習域を囲むように我々暴威騎士団が警備を行っている! 魔獣が近づかないようにはしているが、万が一の事があれば、先ほど配った救援筒を使うように! そして救援が来るまでは、むやみに撃退しようとせず、守りに徹すること! よいな!」

「はい!」


 救援筒は魔道具の一種で、上空に向かって使用すると、魔術が射出され、空で大量の煙を出す。ワンタッチで使える狼煙みたいなものだろうか。

 量産型ではあるが、魔道具という時点で貴重品だ。使わないに越したことはないだろう。と思うのは貧乏性か。ゲームでもレアな回復アイテムは使わずにラスボス倒してたもんなぁ。


 ベイリンの訓辞が終わり、順々に出発し始めた。僕らは3番目なので、1時間ほど待たないといけない。その間は所持品のチェックなどをしたり、雑談をしたりで時間を潰していた。そうして出発が近くなってきた頃、席を外していたレヌアールが戻ってきた。手には何かスクロールのようなものを持っている。


「こ、これ。ベイリン先生から。地図変更になったって」

「えっ」


 こんな直前で?


「んだよ、折角計画練ったのに、変更かよ。なんでだよ」

「なんか、突発的な事態にも対応できる訓練だって。このグループは学年序列上位者ばかりで優秀だからって」


 そう言われてみれば、確かにこのグループは1位の僕と2位のシシリー、4位のエインと8位のヒルダがいる。レヌアールとベノワは20位台だった気がするけど。

 うーん、クラスのトップ2が揃ってるから、そう言われれば納得……かなぁ?


「なんだよ、お前らのせいかよ。ま、いっか。それならそうで、さっさと確認しようぜ。俺達の出発もすぐだ。今のうちにルートの確認しとこう」

「そうだね」


 そして僕らは額を寄せ合って地図を見た。


「あれ? 結構ズレるんだね」


 シシリーがルートを指でなぞりながら疑問を呈した。


「本当だ。森に入る区間が長い。大丈夫なのかな」

「い、一応騎士団の人が巡回してくれてるし、大丈夫じゃないかな」

「そうだな。さすがにアブねールートは使わせねーだろ」

「これだと、この辺りで野宿かな?」

「そうだね。それなら2日目には折り返せるはず」


 口々に意見を交換していく。短い間だったけど、それなりに計画は出来た。あとは歩きながらでも、休憩中でも詰めていけばいい。

 やがて僕らが出発の番となった。


「それでは、気をつけて行って来い!」

「はい!」


 ベイリンに見送られ、僕らは歩きだす。

 この実習に込められた悪意に気付かず。

次回更新は6月26日(月)7時予定です

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