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黄昏の転生者(ストレンジャー) 旧:雷霆の騎士  作者: 林檎亭
2章:ユミル王立士官学園
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18話 前兆

「ただいまー」

「あ、ソールにフィス。おかえりー」


 寮に戻るとセラが出迎えてくれた。

 そのセラが待っていたと言わんばかりに僕へ駆け寄ってきて手を取った。


「待ってたよー。ちょっと実験に付き合って欲しいの」


 そして僕の返事を聞かないまま部屋へと連れ込まれてしまった。


「えっと、実験って何をするの?」

「ほらコレ。明日が本番でしょ? だから調整しておきたいなーって」


 そういえばそっか。

 というかそれならそうと言ってくれれば良かったのに。

 そうして、しばらくセラに付き合った後、ご飯に呼ばれたので広間へ戻った。



 晩ご飯を食べつつ、今日のことを皆が口々に話題にしていく。その中で一つ、印象に残ったことがあった。

 近隣の森にて、魔獣に襲われていたマスターを助けたことを話し、その流れで皆に注意を促そうと思ったのだけど、途中でカスミが深刻な声で僕の話を遮った。


彼処あそこの森に猿型の魔獣だって?」

「其れは、どの様な姿をしていたんだい?」

「なるほど……。其れなら恐らくハイディエイプだね」

「うん。特性としては三点。一つ、集団で行動をする。一つ、普段は隠れ潜んでいる。そして最後の一つが面白いんだけど。彼奴あいつ等は偵察を行う」

「其う、偵察さ。少数で獲物を確認し、群れに戻り、改めて多数で狩りを行う」

「魔獣にしては非常に知能の高い、厄介な相手さ。階級ランクにして、C級。ま、規模にも依るけれどね」

「然し、ハイディエイプは学園都市エンティア・ユルヴの付近には棲息していない筈なんだ」

「そして、集団行動を旨とする習性上、より大きな群れに属する動物、つまり人間は基本的に襲わない」

一寸ちょっと、きな臭いね。少し調べてみるよ」


 そう言ってカスミは早々に食事を切り上げて部屋に戻ってしまった。



 残された僕らは少し呆気にとられてしまったけど、空気を読まずにどんどん食事を我が物にしていくセラのせいで、食事に集中せざるを得なくなってしまった。

 あ、その揚げ物まだ食べてない!



 食事も終わり、自室に戻るとカスミの話が蘇ってきた。

 カスミの話から考えるに、僕が森で遭遇したのは偵察隊だろう。集団というには数が少なかったし、マスターも突発的に森に行ったのだから、待ち構えられていたというのも考えられない。あの襲撃はハイディエイプにしても予定外の事に違いない。

 あの森にハイディエイプはいないとカスミは言った。それはつまり、あの森にハイディエイプの獲物となる生き物がいないってことだ。

 それならあの猿達は、一体何を偵察しにあの森に来ていたんだ?

 なんて考え事をしている間にいつの間にか眠ってしまっていた。 






 翌日、いつもどおり登校したところで呼び出しを受けた。

 なんかまずい事したっけ?

 言われるがまま職員室へ行くと、そのまま応接室へ通された。

 そこで待っていたのはなんと白金髪プラチナブロンドの眩しいモルガナ王女だった。


「久しいの。二ヶ月ぶりか?」

「お、お久しぶりです。モルガナ様」


 モルガナは意地悪そうな笑みを浮かべた。


「えぇと、ティティスさんもお久しぶりです」

「はい、お久しぶりですソール様」


 とりあえず挨拶はしてみたものの、なんで二人がここに? んで何で僕が呼ばれたの?

 それと、なんか知らない人いるんですけど!


「さて、ソールを呼んだのは他でもない。会わせたい人物がおったからじゃ。ほれ、挨拶するのじゃ」


 人形かと思うほどに微動だにしなかった人影が、モルガナの背後から僕の前へと歩み出た。

 濃紺の髪を垂らした美丈夫だった。

 彼は僕へと手を差し出しながら自己紹介を始めた。


「お初にお目にかかります。私はランスロット・クィ・ベンウィックと申します。若輩ではありますが、親衛隊の隊長を務めさせていただいております」


 親衛隊!?

 親衛隊って言えば王様を直接守る、騎士の中でも特別な存在なんじゃ。なんでそんな人が僕に挨拶――って、女王様にも挨拶されてるんだった。これもスカジ効果なのか。


「僕はソールです。えーっと、武術科の一年です」


 それ以上は言うことがない。

 僕はそれだけ言って差し出された手を握った。

 この人、かなり強い。僕じゃ勝てなさそうだ。


「さすがですね」

「え?」

「いえ、とんでもなく強い子供がいると聞かされてはいたのですが、失礼ながら今の今まで半信半疑だったのです。あるいはいくら強くても子供だろう、と。しかしこうして面と向かって理解しました。貴方は強い」

「いえ、そんな事はないです。まだまだ未熟です。全然、足りていません」

「謙遜なされますね」

「そんなつもりはないですよ」


 本当に謙遜ではない。僕は僕の求める強さに、全く足りていない。まだまだだ。


「さて、顔合わせも終わったの。こちらとしては用事は終わりじゃ。スマヌの時間を取らせて」

「いえ、大丈夫です」

「そう言ってくれると助かるの。して、逆にお主から聞きたいことなどはあるかの?」


 え、急に言われてもなぁ。

 うーん、特には思いつかないけど……まおあ、強いてあげるなら。


「本日はどういったご用件でこちらに? まさか僕とランスロット卿と合わせるだけの為ではないですよね?」

「ふむ。それも目的の一つであったが、もう一つ気になることがあっての」

「気になること」


 問い返すと、モルガナは愉しそうに笑った。

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