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「なあ、ミヅキ……そろそろ教えてくれないか? この戦いについて」
食事も終えて、食器も片付け終わった後、剣護は椅子に座ったまま尋ねた。彼女が戦いについて知っているかの保証はないが、聞かずにはいられなかったのだろう。
「………………」
ミヅキは彼の前の席に腰を下ろし、口を開いた。
「この戦いは、貴方の願いを叶えるためのもの。それ以上でもそれ以下でもありません」
彼女はいつもの無表情のままだが、剣護は真剣な面持ちをしている。
「戦いの期間は決まっていません。最後の一人になるまで、戦い続けなければいけません。どれほどの人数が参加しているかは不明。データ等は非公開となっています。
このバングルが、一組に二つ支給されます。半径100Mにこれを付けている人物と会った際に鳴るように作られています。ちなみに、これは取ることが出来ません」
剣護は言われて、手首に付けられている薄いバングルに気がついた。それほど手首に馴染んでいたのだ。違和感は無いに等しい。
「基本的に、人間一人に武器となる私達一人、二人一組の戦いとなっています。たまに違う時はありますが……まあそれはいいでしょう。
最後まで勝ち抜くことができれば、貴方の望みが叶います」
剣護の望み。それは、親友を作ること。周りからすれば小さいことなのかもしれない。だが、彼にとっては何物にも代え難い大切なことなのだ。
「…………しかし」
そう……しかしだ。顎を撫でて考える。命のやり取りをしてまで手に入れたいのだろうか? 自分に問い掛けるが、答えが返ってくるはずもない。
彼の心情に気付いているのかいないのか、ミヅキは無表情のままで言葉を紡ぐ。
「貴方がどんなことをしようとついていくだけですよ。私は道具なんですから」
彼女の言葉――道具、という台詞に、剣護の表情が険しくなる。
「そういう言い方は止めないか? 道具って……」
彼の言葉に、今度はミヅキの表情が険しくなる。険しいといっても、ほんの僅かだが。
「貴方は甘いんですね……それはいつか弱さに繋がりますよ」
「あーはいはい、悪かったな……。性格なんだからしょうがないだろ」
言葉が通じない。そんな感覚に近いと、剣護は思った。主義主張の違いなのか、観点の違いなのか。彼には分からなかった。