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GAMESHOW  作者: 自由な書き手
第二章 ~信頼~
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1

「ん、あれ……?」

 剣護が目を開けた時、彼はベッドの上で横になっていた。辺りを見回すと、そこは何度も見たことのある風景――自分の部屋だった。

 体を起こす。時刻は朝の六時、少し早い時間帯か。

「夢……、じゃないよな?」

 頭部と腹部に軽い痛みがある。先ほど受けた攻撃によるものが残っているのだろう。この痛みは本物だ。

 痛みだけでなく、手に残る生々しい感触も思い出してしまい、気分が悪くなる。

「できれば夢であってほしかったけどなぁ……」

 頭を掻きながらベッドから抜け出し、着替えを始める。学校にいくわけにも行かないので、普段着に。

「う~ん……まんま俺の家だな。家族とかはどうなってるんだろうか?」

 着替え終えた剣護は、思考を張り巡らせていく。ここは自分の部屋だ。しかし、あの出来事が夢である可能性は有るだろう。彼が思い付いている考えは二つ、現実世界に戻され、ある時間に再び呼び戻されるか。もしくはパラレルワールドであるか。家族がいれば妹が騒がしいはずなので、後者の可能性が高い。

 それより、彼自身が一番驚いたことは、自分がこの場に居ることに、パニックを起こしていないことだ。動揺はしているが、思考は全く止まらない。驚愕の連続で頭がおかしくなったのだろう。剣護はそう考え、気にしないことにした。

「よっ……て、お前はたしか……」

「……おはようございます」

 部屋を出て、リビングに向かう。他に何か判断材料がないかと辺りを見回すと、キッチンに立って無表情で料理をしている少女の姿が目に入る。間違いなく、さっき剣護と一緒に戦った、シュベルトだ。

 ちょうど良かった。剣護は色々尋ねようと声を掛けようとする。だが、肝心の名前が思い出せなかった。

「えっと、名前は……ああもう! 外国人の名前はちょっと覚えにくいな……」

 剣護は苦笑しながら、必死に名前を思い出そうとする。シュベルトは気にも止めてないといった風に料理を盛り付け、テーブルに並べていく。和風料理の良い香りが、部屋中に漂う。

「名前はあくまで型式のような物なので、付けて頂いても構いませんが?」

「型式?」

 首を傾げる。型式と聞いても剣護の頭の中には、ロボットしか浮かんでこない。

「シュベルト・シュトゥムヘイト。直訳で沈黙の剣です。この世界では、武器によって名前が付けられているんです」

 無口な彼女にはピッタリの名前だな。剣護はうんうん頷く。それでも彼にとっては覚えにくい名前であることに変わりはない。これからも一緒に戦うのだから、覚えやすい名前である方が良いだろうと、首を捻って考える。

「シズカ? 安直か……。あ、愛とか……い、いやいや! なにが愛だよ! 何を持ってして愛なんだよ!

えっと、えっと……、ミヅキ! ミヅキとかどうだ?」

 剣護が一人でギャーギャーと騒いでいる。少女は無表情のままで首を傾げる。いつの間にか彼の正面の席に付いて、ご飯を食べている。

「……と、とりあえず、ミヅキってことで」

 名前を決め一段落すると溜息混じりにお互い向かい合うように座る。直後に、腹が小さく鳴ってしまう。この世界のことについては、飯を食べてからにしよう。そう思い、出来立ての味噌汁を一口飲む。剣護の表情が明るくなる。かなり美味いようだ。

「…………」

 ミヅキと名付けられた少女は微かに、嬉しそうに微笑むのだった。

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