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「や、やべ……!」
ハッとした時には既に遅く、刃が根本まで深々と突き刺さっていた。剣護は剣から手を離しオロオロし始める。引き抜かないのは彼の無意識な行動だったが、出血を防いだり傷口を広げたりしないように等様々な理由があり、結果的には好判断であった。しかし、それを良しとしない者がいた。
「ダメですよ、トドメを刺さないと」
「あ、おい!?」
ショウは口元を緩めたまま男に歩み寄り、剣を思い切り引き抜いた。血は溢れ出し、よく見れば臓物のような物まで流れ出ている。
剣護は口元を抑え、込み上げてくる感覚を必死に耐えている。いつの間にか元の姿に戻ったシュベルトが、無表情でジッとその様子を眺めている。そこには、微かに苦悶が映っているようにも見える。
「これは戦いですからね。まさか、あなた方も無償で願いが叶うなんて思ってなかったでしょう?」
ショウはメモ帳を手に取り、ページをめくり、またぶつぶつと呟き始めた。剣護の目には、呪文を詠唱している魔術師のように見えた。
今度はショウの足元に小さな魔法陣が展開され、直後に小さな地震が起こる。瞬間、剣護達の視界に映ったのは、大きな尖った岩に腹部を突き刺されている男の姿だった。
それを行った張本人は、何事も無かったかのように剣護へ向き直り、歩み寄る。
「さて、それではお連れしましょう。ゲームショウの舞台へ」
「な……ぐぁっ!?」
剣護が驚愕している内に、ショウは手を翳して、呪文を唱える。空気が集まって塊を作り、剣護へと放たれる。
その一撃は彼を吹き飛ばし、地面へと叩きつける。剣護は後頭部を打ち付けて、一瞬にして意識を失ってしまった。
ゲームショウ。その舞台の火蓋が切って落とされる……。