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嬉しいと思ったのは何故なのか、本人は薄々気が付いていた。戦いに慣れてきたというのもある。だが一番の理由は、友達の心を打ち砕いた連中を思う存分殴れる、ということだった。
ひたすら、殴り続ける。しかし、龍地のシールドがそれを全て防いでいく。
「なんだよ、お前も大したことねぇな!」
「……っ」
シールドバッシュ。秀彦の攻撃は弾き返され、逆に吹き飛ばされてしまい、尻餅をつく。
龍地は無様な姿を晒す秀彦を嘲笑いながら、左腕に力を込める。すると彼の腕が唐突に光を発し、気付けば彼の左腕に付けられている盾は一回り巨大化し、剣が一緒に刺さっていた。
――これが、能力の成長……いや、進化である。
「お前は自分の能力を引き出せてない! だからそんなに弱いんだよっ!」
盾に刺さっている剣を右手で引き抜き、構える。ガタイも合わさって、プレッシャーは凄まじい。それでも、秀彦の顔に焦りは無かった。
むしろ、笑っているようにも見える。
「そうだね、じゃあ……僕も見せることにしようか」
秀彦の両の腕が光り、辺りに突風が吹く。風が止み、その中心に立っている彼を見て、龍地は焦った。彼の両腕が、まるで鎧のような物体に包まれているからだ。しかも、さっきまでのガントレットとは違う、近代的な雰囲気を醸し出している。
それはまるで、機械で作られたスーツの一部のようでもあった。
「そういえば、貴方の戦う理由を聞いてませんでしたね」
ズシャ……まるで地響きを鳴らすように一歩、秀彦が歩み寄る。その迫力に、龍地は思わず後ずさりしてしまう。だが、彼の表情は笑みが溢れている。
「戦うことに理由がいるか? 戦うことが楽しいから戦ってんだろうがっ!
俺の人生はつまらないことの連続だった……何も面白く無い。刺激が欲しかったんだ! クソみたいな俺の人生に、最高の刺激がな!
そう願って俺はこの世界に来た……。俺はここで、戦って戦って……殺しまくるんだよぉっ!」
喋りながらも、ひたすら笑い続けている。その笑みに余裕がないことを、秀彦は察して、逆に鼻で笑い返した。一歩、一歩とじりじり歩みを進めていく。
彼から放たれる凄まじいプレッシャーに、遂に龍地は、笑うことを止めた。




