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遊びとは言ったものの、特にすることもなく街を徘徊し、ウィンドウショッピングを楽しみ、映画館でたまたまやっていた恋愛映画を見たり、一緒に食事をするだけだった。それでも、薫は本当に楽しそうだった。それに付き添っていたミヅキも、たまに頬を緩めたりしていた。
端から見れば、恋人同士のようにも見えるくらいだった。
「今日は、本当にありがとうございました」
陽は沈みかけていて、既に夕焼け空が辺り一面を赤く染め上げていた。
薫がお辞儀をする。同じように、ミヅキも頭を下げた。
「明日、またここに来てください……できれば、お一人で」
「…………っ!」
薫が彼女の手首を掴む。そこにあるのは巻かれたバングル。警報は鳴っていないが、チカチカと光っている。彼の手首にも、それがあった。
「僕は、僕を男として見てくれた貴女のことが好きなんです。戦いたくない……だから、明日も一人で来てください。そうすれば、貴女を殺さなくて済みます……」
薫の傍の物陰から、大人びた姿の女性が現れる。彼の相棒だろう。じっとミヅキのことを見つめている。薫はゆっくりと、彼女から手を離し、距離を置いた。
彼はミヅキに背を向け手を振りながら、パートナーの女性と共に、その場を去っていった。
「………………」
手の中にはまだ、繋がっていた時の暖かな温度が残っている。それを感じながら、思う。ミヅキは、初対面の人間にあそこまで積極的に誘われたことはなかった。
嬉しく感じながらも、自己嫌悪に陥りそうになっていた。脳裏に浮かんでいるのは、パートナーである剣護のこと。
「私は……」
――何故、それほどまでに彼のことを考えてしまうのか。
そもそも、二人は赤の他人である。彼女がどんな相手と恋に落ちたり、果てには体の関係になろうと構わないはずだ。にも関わらず、どうして彼のことが思い浮かんでしまうのか、理解出来なかった。
結局答えは出ないまま、ミヅキは帰路についた。




