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GAMESHOW  作者: 自由な書き手
第四章 ~邂逅~
23/41

5

「どうかしましたか?」

 ボーっとしていたミヅキは、唐突に声を掛けられたことで反応する。

 その声の主は、体型が彼女と同じくらい――要するに小柄で、フリフリのワンピースを身に付けて、髪はオレンジ色で背中を隠せるくらい長い。いつの間にかミヅキの隣に座っている。

 声を掛けられたことで、今自分が道に迷っていることも思い出す。

「ここに行きたくて……」

「ああ、そこはこの時間の電車に乗って……」

 相手の説明を聞いて何とか理解出来て少し安堵すると、ミヅキはジーっと相手の顔を不思議そうに見つめる。相手も少し戸惑っている。

「こういうことを言うのは失礼かもしれませんが……どうして女装なんてしてるんですか?」

「えっ?」

 ミヅキが首を傾げながら素っ頓狂な発言をする。しかしその言葉を聞いた相手は動揺し始める。

 手を伸ばし、オレンジ色の髪を掴み、上向きに引っ張る。通常なら毛根が離れまいと抵抗するはずなのだが、相手の髪の毛はあっさりと抜けてしまった。

 いや、『取れて』しまった。この髪の毛はカツラで、本人の髪は短く切り揃えられていた。

「あ、あの、これは……っ!」

「別に隠す必要はありませんよ。本当に違うなら謝罪しますが……」

 図星を突かれた少女……いや、『少年』は、うなだれるように俯くと首を横に振った。

「僕は男です。この服装なのは……簡単に言えば、ちょっとした病気ですよ」

 病気と聞き、ミヅキの中でひとつの病名が思い浮かんだ。

 ――性同一性障害。軽く説明するならば、自分は男だと思っているのに身体は女だったりその逆だったり……ということである。その原因は脳にあると言われるが、根本的な解決方法は無い。何故なら既にこの場にそういう存在として、生まれ落ちてしまっているからだ。

 ミヅキはバツが悪そうに俯いてしまう。

「ごめんなさい、軽はずみな発言をお許しください」

「いえそんな! むしろ嬉しいです……。僕を男として見てくれる人がいて。

僕は西条薫って言います、よろしく」

 薫と名乗った少年は、おもむろに手を差し出した。それをミヅキは戸惑いながらもそっと握る。すると彼は嬉しくなったのか笑顔を浮かべて、彼女と一緒に立ち上がった。

「まだ時間はありますよね? 一緒に遊びましょう!」

「え、あ……」

 突然な出来事に戸惑う彼女を余所に、薫は離さないように強く手を握る。

 すると、ミヅキの片手に有る空き缶に気付いた彼がそれを取り、自動販売機傍にあるゴミ箱へ捨て、彼女と一緒に走り始めた。

 ミヅキは抵抗することもなく引っ張られていった。一度だけ、ちらりと空き缶の捨てられたゴミ箱へ視線を送った。

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