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GAMESHOW  作者: 自由な書き手
第四章 ~邂逅~
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2

 電車で30分ほどだろうか? 剣護が降りた先には、学生服の人間ばかりがいた。それもそのはず、ここは学校のすぐ傍の駅である。

 挫けそうになる決心を、何とか保たせる。こんなところまで来たのに、帰るわけには行かない。

「あの頃の俺とは違う」

 そう言い聞かせる。たった数日の出来事……それでも剣護は、自分は少しは変わったはずだと呟く。

 事実、彼は精神的に多少なりとも成長している。それは揺るぎようがない。

 周りの人間と同じように歩を進め、教室へと向かう。クラスは既に鞄の中に入っていた教科書類で確認済みだ。どうやらクラス自体は同じらしい。メンツも変わっていないように見える。

 席に着き、溜息を漏らす。昔は何の苦労も無く、何も考えずに通っていたことを思い出して、剣護は苦笑してしまう。酷く滑稽だと。あの頃の自分とは、悪い方向に変わってしまったのだろうか。

「おい久しぶりだな、天城。美月ちゃんはどうした?」

 ミヅキ、という名前を聞いて少し驚く。何故彼女の存在を一クラスメイトが知っているのか。しかも相手は、剣護の元居た世界では、適当に会話をしている名前も知らない男。

 しかしその疑問も、すぐに解決する。

「ホント、なんでお前みたいなヤツに、あんな可愛い妹が居るのかねぇ?

家事全般オールオッケー、しかも兄貴にあんな優しい……はぁぁ! 信じらんねぇ。俺も妹が欲しいな~っ!」

 剣護は溜息を漏らす。どうやらこの世界では、ミヅキが彼の妹ということになっており、一緒に学校に通っている設定らしい。

 彼の本当の妹は……、家事全般オール駄目。少し気性が荒く、家ではギャーギャーと騒ぎ、三人目の男と付き合い中という……彼としては自慢し難い妹だった。別に仲が悪いわけではなかったが。

「な……っ!?」

 物思いに耽っていると、唐突にアラームが鳴り始めた。咄嗟に手首を押さえ、音が漏れるのを防ぐ。だが、そんなことで音が消せるわけもない。

「ん、どうかしたのか?」

 幸いだったのが、この音は同じバングルを持つ者同士にしか聞こえないことである。話していた男子学生は彼の動作に首を傾げている。

「悪い、ちょっとトイレ……!」

 剣護は早々に立ち上がると、教室から飛び出した。まずはこの場を離れることが先決だと考えた為である。

 何人かの教師が歩いている廊下を走る。

「おい、君……」

「すいません、トイレです!」

 ある教師の静止も振り切り、トイレへと走る。走りながら、ちらりと教師の後ろ姿を見る。

 ――あの先生は、見たこと無いな。

 この世界と向こうの世界では若干の誤差が有るのだろうか、それとも別の理由があるのか。色々考えながらも、剣護はトイレへ駆け込んだ。

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