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少年はいつも一人だった。
何か悪いことをしたわけでも、人格に問題があるわけでもない。少々気が弱いが、それは問題ではない。成績は学年で中間ほど、運動は少し苦手。だからどうというわけではない。
なのに、少年には心を許せる存在がいなかった。
友達という存在は、いるにはいた。だがそれは表面上だけで、世間的に言う親友ができなかった。
それなりに女子とも話したり、遊んだりもした。だが彼女ができたことは、一度もない。
少年には、人望がなかった。
クラスメイトが集まって話したり、何か遊んだりする時は良い。二人一組になれと指示を受けたり、授業の教材を忘れたから誰かに借りるなど、それができないのだ。
特定の誰かと仲良くなったりできない。それは、彼の短所だ。
小学生から中学校終わりまで、それが改善されることはなかった。
何故親友が出来ないのかと、少年は悩んだ。
クラスメイトに話し掛けられた時は笑顔でそれなりに対応するし、知らない別のクラスの生徒に何か頼まれた時も、喜んで引き受けてきた。
分からない、わからないワカラナイ。ドウシタライイノカワカラナイ。
高校への進学が決まってからは家に引き篭もることもあった。高校生活の第一歩である入学式にも出ない始末。
少年はこの先の人生を考えた。恋人どころか、友達もいない人生。これがずっと続く人生なんて、生きている意味があるのだろうか?
「意味なんて……」
ない。誰からどんな言葉をかけられたとしても、少年の考えは変わらないだろう。
なら、このまま惰性で生きていくしかないのだろうか? 最後には周りに誰も残ること無く、一人で死ぬのだろうか?
「やだなぁ……」
ぽつり、呟く。死ぬことへの恐怖は、さほどない。ただ、一人でいることが怖いのだ。
――意味が欲しい。今までも、これからも生きていく意味、理由。
ふと、思い出す。明日は月曜日、学校に行かねばならない。
「ま、行く気もないけどね……」
眠気が襲ってきた為に、ベッドの上に寝転がる。
目を瞑りながら、これからのことを考える。
「欲しい……」
友達が。俺のなにもかもを受け入れてくれるような。俺のバカを笑って許してくれるような、親友と呼ぶべき存在が、欲しい。何回と、何十回と願った。だが、願うだけで手に入れられるはずもない。少年は、そんなことはわかっていた。
意識が薄れていく。その感覚に全てを委ねていく。
――貴方のその願いは、本物ですか?
聞こえる、誰かの声。聞こえると言っても、耳から伝わったものではない。頭の中から、直接聞こえてくる感覚。
――ああ、俺は……欲しい。
いつでも、俺の隣に居てくれるような存在が。少年の答えに、返ってくるものはなかった。
空耳か何かだろう。少年はそのまま眠りについてしまった……。