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「お疲れ様です。貴方は無事に勝ち残ることが出来ました、おめでとうございます」
秀彦の背後からショウが現れ、拍手と共に嫌味に聞こえる台詞を放つ。彼は気を失った翔大の前に立つと、ぶつぶつと呪文を唱え始めた。
「待ってくれ! 彼はただ戦闘不能になっただけだ。また時間を置いて戦うことだって……っ」
「確かに可能ですね。ですがそれは、フィールド移動を行ってない時に限ります。
フィールドを移動し、敗北をした方は無条件で……死んでいただきます」
まだ認めようとしない彼を無視し、ショウは無常にも呪文の詠唱を終えてしまう。
それと同時に、彼の身体は、呪文によって生まれた風の刃で細切れになっていた。
秀彦は表情を歪め、死刑執行した張本人は笑顔を浮かべている。まるで楽しんでいるかのように。
――まるで、そうすることが……正しいというかのように。
「それではまた、次のバトルに」
ショウがパチン、と指を鳴らす。
風景が一瞬にして変化し、そこは剣護と話していた公園だった。
既にショウの姿は無く、夕焼け空が映る秀彦の視界には、嬉しそうに手を振る剣護と、無表情を貫いているミヅキの姿だった。
「待っていてくれて、ありがとう」
歩み寄って、手を差し出す。剣護も笑顔で手を出し、握手する。
「仲間……いや、『友達』なんだから、当然ですよっ」
剣護が恥ずかしがりながらも言い直す。
ともだち……友達。秀彦の頭の中で何度もリピートされる。現実世界で手に入れることの出来なかった存在に、目頭が熱くなっていく。
それは剣護も同じだった。彼が承諾してくれるとは限らない。それでも、彼は言わずにはいられなかった。
「……そうだな、僕達は……友達だ!」
秀彦は笑顔を浮かべた。その目元に涙が溜まっているのを、剣護は見逃さなかった。
大の男が情けないとか、恥ずかしいとか、そう考える者もいるかもしれない。それでも、剣護にそんなことは言えなかった。
何故なら、彼もその泣きそうになっている一人だったからだ。
その光景を眺めていたミヅキとマホは、少し満足そうに微笑んでいた。




