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Fantasia-Leap-Online  作者: 水無月 静
第一章   四葉の友
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闘志燃やして

 今回選んだ決闘のルールは、先に相手のHPを0にした方の勝ちといういたってシンプルな内容だ。

 武器は当然のことながら、スキルや魔法の使用も自由。枠の外にさえ出なければ何をしても構わないが、頭部への攻撃だけは禁止であり、無効化される。

 制限時間もないため、どちらかが倒れるまで延々と続く……まさに決闘といえるゲームだ。

「一刀流初段・居合切(いあいぎ)り!」

枝垂桜(しだれざくら)!」

 タクトが引き抜いた刀を受け流し後ろに回るが、攻撃はいとも容易く避けられてしまった。

 さすがタクトだ。ここまでたった1人で前衛を受け持ってきただけあり、その剣技は洗練されている。

 生半可な覚悟で勝てる相手ではないだろう。

「円月!」

 振り下ろされる刀を薙ぎ払いで弾き、返す刃で一撃。しかしこれも、すぐさま後方にステップしたタクトには当たらない。

 続く連撃もタクトには掠りもしなかった。

 スキルを連発するだけの単調な攻撃は通じないと考えるべきだろう。これは、ボクの技量が試される戦いだ。

「もう終わりか?なら、次は俺のターンだ!」

 距離を取っていたタクトが爆発的な跳躍力でこちらに接近してきた。構えは上段。狙いは……左肩!

「『一刀流二段・袈裟懸(けさが)け』!」

 刀の動きを先読みし、横に跳んで回避する。裏回りは……この立ち位置では難しいか。

「まだだぜ!」

 ボクの動きをさらに読んでいたらしいタクトが、急激な方向転換でさらに距離を詰めてくる。対するボクは回避行動をとった直後で、体勢が整っていなかった。

 避けられない……っ

「もらった! 『一刀流三段・燕返(つばめがえ)し』!!」

「うぁっ!」

 薙ぎ払われた刀がボクの腹部を直撃する。即死は免れたけれど、大きなダメージだ。

 しかしまだタクトの攻撃は終わらず、体勢が完全に崩れたボクに怒涛の連撃を仕掛けてくる。その一つ一つを防ぐのは、この状態では不可能だ。

「くっ……やぁ!」

 何度か直撃を受けながらも、不意を突いてタクトの刀を弾くことに成功する。その一瞬の隙を逃さず、ボクはバック転で一度距離を離した。

 この攻防で、ボクのHPは半分以上が奪われてしまった。対するタクトはほぼ無傷。普通なら勝機はないに等しい戦況だろう。

 けれどHPの最大値が低く設定されているFLO(このゲーム)での決闘なら、ここからの逆転だって十分にありえるはずだ。

 今大切なのは焦らないこと。そしてチャンスを見極めること。

 反撃に出るタイミングさえつかめれば……必ずどこかに、活路は見いだせる!

「今度は逃がさねえぜ!」

 刀を鞘に納めたタクトが再び接近してくる。一刀流初段・居合切りを始動としたコンボを繰り出すつもりなのだろう。

 なら……!

「チィッ!」

 手元で剣を回し、縦に平行にしてタクトの一閃を受け止めた。

 居合切りは剣を引き抜く動作の関係で横向きに斬ることしかできない。こうして垂直になるように剣を突きだせば、防ぐことはそう難しくないのだ。

 しかし居合切りはあくまで始動。タクトの連撃はこの程度では止まらない。

 だからボクはその攻撃を、あえて受けた。

「うぅ……!」

 剣で前面を防ぎ、防御に徹する。剣の直撃は受けないが反動は大きく、少しずつだがHPは減っていく。

 このままではすぐに力尽きるだろう。でも、その前に……!

「どうした! その程度かぁ!?」

 防戦一方のボクにしびれを切らしたのか、タクトが少し高めに剣を振り上げた。

 ここだ!

 即座に逆手に戻した剣で、タクトの脇腹を切り裂く。さすがのタクトもこれには反応できず、ボクの攻撃は直撃した。

「っ……!」

「逃がさない!」

 後退しようとしたタクトを、前に踏み込んで再び切り裂く。タクト風に言うなら、ここからはボクのターンだ。

 剣を下ろす隙さえ与えないほどの速度で、ボクは攻撃を繰り返す。中には抜けられそうで抜けられない、意地の悪い攻撃も織り交ぜて。

 ボクの攻撃によって、タクトのHPも徐々に減っていく。そして半分ほどにまで減少したあたりで……

「そこまでだ!」

 ボクと同じように刀を縦に向けたタクトによって、攻撃は中断させられる。

 さらに振るわれたタクトの刀を横に避け、剣が届かない距離まで離れた。

「やるな!」

「そっちこそ!」

 今度は正々堂々と、真正面から切り結ぶ。けれどこの状況は、2本の剣を持つボクが有利だ。

 片手の剣でタクトの刀を受け止めながら、重心を落として懐に潜り込む。そして飛び上がると同時に、タクトの体を思いっきり斬り上げた。

 よろけたタクトにもう一撃。しかしその追撃はすんでのところで避けられてしまった。

 もうお互いHPは残り少ない。次に斬り結ぶのが最後の攻防になるだろう。

「頃合いだな……次でラストにしようぜ」

「そうだね」

「最後に、見せてやるよ。俺のとっておき……!」

 刀を横に構え、重心を下げた。来る!

「食らえよ! 『紫電一閃(しでんいっせん)』!!」

 残像が生まれるほどの、目にも止まらぬ速さでタクトが迫る。限界を超えた速度で相手をすれ違いざまに切り裂く『紫電一閃』を放ったタクトは、まさに雷電そのものだ。

 普通なら動きをとらえることさえ難しいその攻撃は、とっておきと言っても遜色ない。猪突猛進を形にしたような、タクトにお似合いのスキルだろう。

 枝垂桜で避ける余裕はない。かといって直撃すれば間違いなく敗北する。普通に斬り結んでも大きな反動で隙を与えてしまうだろう。

 なら、迷っている暇はない!

裂双牙(れっそうが)!」

 ――ガキンッ!

 すれちがいざま、ボクは後方宙返りとともに剣を振り上げた。ボクを両断しようとしたタクトの剣は、ボクの2本の剣によって弾かれる。

 それと同時に、ボクは反動を利用して軽く宙に飛び上がった。真下には攻撃を止められ硬直するタクトの姿が。

 スキル使用後はわずかな硬直時間(ヒットストップ)が生まれる。それによって停止してしまっているタクトは、ボクのこの攻撃を避けられない!

「『爪月(そうげつ)』!」

 水晶の洞窟で使わずじまいだった新スキル『爪月』で、落下とともに、手元で回した右の剣を勢いよく振り下ろす。

 鉤爪でひっかくような動作で振るわれた2本の剣は、タクトの両肩に吸い込まれ、その体を大きく切り裂いた。

 これでもタクトのHPは尽きない。でもボクはまだ、コンボを続けられる!

「三日月!!」

 同じく水晶の洞窟で習得した『三日月』を使い、すぐさま左の剣で真上に斬り上げた。

 それでもまだタクトは倒れない。けど……!

「ボクの……勝ちだ!」

 振り上げた剣の勢いをそのまま利用し、タクトの腹部に膝蹴りを打ちこんだ。

「ぐぅ……!?」

 悶絶し、崩れ落ちるタクト。それと同時にHPも尽き……

『勝敗が決定いたしました。これで決闘ゲームを終了いたします』

 アナウンスが鳴り、ボクたちの決闘は幕を閉じた。

「カナター!」

 エリアが消滅すると、外で観戦していたアルナたちがすぐに駆け寄ってきた。

「やったわね! あのタクトに勝つなんて!」

「カナタさんなら絶対勝ってくれるって信じてました!」

「おめでとうカナカナ! そして最高のパンチラをありが痛ぁ!?」

 うっとりした顔のクロに目潰しをかましつつ……

 ボクは、その場に座り込んだままのタクトに向き直った。

「くっそー……洞窟でも思ったけど、やっぱつえーなお前。こうして戦ってみてよくわかったよ」

「それほどでもないよ。少しでも選択を間違ってれば、負けてたのはボクだった」

「いいや。正しい選択ができたことこそ、お前の実力だと思うぜ」

 そう言って立ち上がり、歩み寄ってくるタクト。ボクの目の前までやってくると、サナから受け取った刀を差しだしてきた。

「約束通り、こいつはやるよ。大事に扱ってくれよな」

「うん……ありがとう」

 サナに借りた刀を腰から外し、アカバネを装備する。この重さに長さ……僕の身体で扱うにはちょうどいい。

 柄の感触も手になじむ。これなら、実際に使用するときも問題はなさそうだ。

「それじゃ、一件落着したところで……水晶の洞窟、行きましょ!」

「そだね。2人の決闘見てたらあたしも身体動かしたくなってきちゃったし!」

「うぅ、あの虫さんともう一度会う時が来てしまったんですね……」

「俺に任せときな! 今度こそ倒してやるぜ!」

「アンタはもう少し疲れってものを覚えなさいよ……」

 心機一転、タクトを先頭にボクたちはダンジョンに向かって歩き出す。

 今度こそボクたちの力だけで攻略することを、胸に誓って。

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