瓶詰めの空
あるところに女の子がいました
女の子は重い病気で、ずっと病院で暮らしていました
沢山の薬を体に入れるため、沢山の点滴を腕につけていました
女の子は外で遊んだこともありません
病室の小さな窓から見える小さな空が、女の子にとって外のすべてでした
「空を飛べたらいいのに」
「空を飛べたら、あの雲を瓶に入れて持って帰ってくるの」
そんなある日、女の子が目が覚めると背中に羽が生えていました
女の子は嬉しくなって、点滴をすべて外してベッドから降りました
点滴を外すことくらい、ずっと入院している女の子には簡単でした
窓を大きくあけて、女の子は空に飛びました
もちろん、雲を取るための瓶も持っています
たかく、たかく
雲の上にそっと降りると、少しつめたいふわふわしたかんじがしました。
女の子はしゃがんで、空の青を瓶にすくいとりました。
雲の端っこを少しちぎって、同じように瓶に詰めます。
「これで、曇りの日でもきれいな空が見られる」
にっこりと笑って、女の子は元の病室に戻りました
枕元に大切な瓶を置いて、布団に寝転がりました
空を飛んで疲れたので、そのままぐっすり眠ってしまいました
目が覚めたとき、女の子の腕にはまた点滴が付いていました
空を飛んだのは夢だったのかと思って瓶を探すと、瓶はきちんと枕元に置いてありました
瓶の中は変わらず、青くキラキラした中に真っ白の雲が浮いています
女の子は、仲良しのお医者さんやお母さんに瓶を自慢しました
お医者さんもお母さんも「きれいだね」と笑って瓶を見ていました
来る日も来る日も女の子は瓶の中の空を眺めていました
雨の日も、雪の日も、そのなかではずっと青くきれいな空が揺れていました
少し時間が立って、女の子は天国へ行きました
女の子のベッドの枕元には、瓶が一つ置いてあります
その中にもう空はありませんでした
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2012.03.14 投稿