悪趣味なやーつ
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口でぇえーーす!!おーいw**
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
小柄。
メガネ。
手には——
財布。
「観察原 慎太郎と申します。」
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「はい」
男は静かにうなずく。
「わたしはですね——」
一拍。
「自分の財布をベンチに置いて、
** どうなるか観察するのが趣味です」
スタジオ、
一瞬静まる。
「……」
黒岩、
ゆっくり顔を上げる。
「今、
なんて言いました?」
「はい」
「財布を置いて、
人の反応を見るんです」
「盗まれるかどうか」
「拾ってくれるか」
「無視されるか」
一拍。
「人間性が見えるんです」
黒岩、
しばらく黙る。
……
……
「……」
深く息を吸う。
……
……
「……かはぁーっ……」
長いため息。
「それ、
楽しいんですか?」
「はい」
「とても」
男は穏やかに言う。
「特にですね」
「誰かが」
一拍。
「周囲をキョロキョロしてから
** 持っていく瞬間**」
黒岩、
ゆっくり目を閉じる。
「……おい」
低い声。
「それはな」
一拍。
「ちょっと悪趣味だな」
スタジオ、
重い空気。
「でもですね」
男は続ける。
「人は試されるべきなんです」
「社会は観察されるべきなんです」
黒岩、
静かに立ち上がる。
そして——
「インケンカンしょにべいだな!
** 帰ってくりゃれ!」
一瞬。
沈黙。
男、
少し驚いた顔。
そして——
「平成じゃなくてよかったな!
** はっ!」
吐き捨てるように言う。
黒岩、
指をさす。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
みかん
を差し出す。
「……」
黒岩、
それを見る。
一拍。
「……冬か!」
「つまみだせと……」
「柑橘は好きだが今じゃない!!!」
財布が、
スタジオの机の上に置かれている。
誰も触らない。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口の手が、
なぜか少しオレンジ色。
皮の匂いが、
漂っている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
静かに言う。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「コンビニのドアを二重に開け閉めする男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




