愚民向けイージーソフトルネサンス
な、暇な愚民どもwわたしの大切な友よコレでも読み晒せカス
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
それではぁあ?
今回ご紹介するのはこの方!!」
小柄なおばさんが、
小走りでスタジオに入ってくる。
手には、
なぜか白い手袋。
「閉間 節子と申しますぅ」
やや息切れしている。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「はいぃ」
おばさんは、
深くうなずく。
「わたくしはですねぇ——」
一拍。
「エレベーターに乗ると、
閉まるボタン係と化しますぅ」
「……係?」
「はいぃ」
「使命感と申しますかぁ」
「とんでもないですぅ」
黒岩、
少し顔をしかめる。
「具体的には?」
「はいぃ」
「誰かが乗るとですねぇ」
手を伸ばす仕草。
「すぐ押しますぅ」
「閉まるボタンを?」
「はいぃ」
「反射ですぅ」
黒岩、黙る。
「一回で終わるんですか?」
「いいえぇ」
一拍。
「ずっと乗っちゃいますぅ」
「……降りない?」
「はいぃ」
「乗り続けますぅ」
「どれくらい?」
「酔うまでですぅ」
「酔う?」
「はいぃ」
一拍。
「ゲロ吐くまで乗ってますぅ」
スタジオ、沈黙。
……
……
黒岩、
ゆっくりカメラを見る。
……
……
「……かはぁーっ……」
深いため息。
「それで、
どうなるんですか?」
「はいぃ」
おばさん、
少し誇らしげに言う。
「途中でですねぇ」
一拍。
「あ!おります!」
勢いよく言う。
だが——
降りない。
代わりに。
閉まるボタンを押す。
「……降りないんですね」
「はいぃ」
「とんでもないですぅ」
黒岩、
額を押さえる。
「他には?」
「はいぃ」
「勝手にですねぇ」
一拍。
「違う階のボタン押しちゃいますぅ」
黒岩、
ゆっくり目を開く。
そして——
「まるでヨットハーバーだ!」
一瞬。
沈黙。
「意味わかんな!」
おばさん、即答。
黒岩、
小さくうなずく。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
マグロしぐれ煮
を差し出す。
「……」
黒岩、
それを見る。
そして小さく言う。
「しぐれてんなぁ」
「つまみだせと……」
「魚は好きだが今じゃない!!!」
おばさん、
指を伸ばす。
スタジオの壁。
非常ボタン。
カチ。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口が、
なぜか少し青ざめている。
口元に、
うっすら何かの跡。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
静かに言う。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「横断歩道の白いところだけ踏んで歩く男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」
な?アレだろ?なw




