悔しがーリックな人
暇だろ?コレ読めよ?
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
それではぁあ?
今回ご紹介するのはこの方!!」
男が現れる。
スーツ姿。
姿勢は良い。
表情も穏やか。
だが——
なぜか拳を握りしめている。
「比嘉 悔次郎と申します。」
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「はい」
男は静かにうなずく。
「わたしはですね——」
一拍。
「何かを比べて、
勝手に悔しがるのが趣味です」
「……勝手に?」
「はい」
「誰も競っていないのに?」
「はい」
「なるほど」
黒岩、腕を組む。
「例えば?」
「はい」
男は、
遠くを見る。
「先日ですね」
「電車に乗っていたんです」
「ほぅ」
「そしたら、
隣の人のバッグがですね」
一拍。
「やたら良さそうだったんです」
黒岩、黙る。
「革の質感」
「金具の光沢」
「持ち手のしなり」
「すべてが——」
男の顔が歪む。
「上なんです」
突然。
「ちくしょうめ!!
ちっしょめえ!!」
スタジオに響く叫び。
机が揺れる。
拳を握りしめる。
「なんでだ!!
なんであんなの持ってるんだ!!」
数秒。
荒い呼吸。
……
……
そして——
すっと姿勢を正す。
「……まあ、いいか」
穏やかな笑顔。
「気にしても仕方ない」
朗らかに歩き出す。
黒岩、
少し感心した顔。
「切り替えが早いですねぇ」
「はい」
「健康に良いんです」
その瞬間。
男の視線が止まる。
スタジオのスタッフの足元。
靴。
一拍。
「……」
顔が震える。
「……あ」
次の瞬間。
「あぶだーーー!!」
絶叫。
「なんだその靴!!
軽そうじゃないか!!」
「くそおおおお!!」
再び癇癪。
黒岩、
静かに目を閉じる。
……
……
カメラを見る。
……
……
「……かはぁーっ……」
深いため息。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
ほうれん草とコーンのバターソテー
を差し出す。
「ファミレスか!」
「つまみだせと……」
「野菜は好きだが今じゃない!!!」
比嘉 悔次郎、
静かに整った髪をなでる。
「……まあ、いいか」
再び穏やかな顔。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口のシャツに、
なぜかバターのシミ。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
淡々と進行する。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「エレベーターの閉まるボタンを押したがる女」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」
どうだい?面白いだろ?他にこんなのあったらみてみてえんだけど?




