散歩にリードを持ち歩く男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
それではぁあ?
今回ご紹介するのはこの方!!」
男が現れる。
手には、
一本のリード。
何も繋がれていない。
「ジャンクション孝二と申します。」
年齢四十代半ば。
ジャージ姿。
表情は、なぜか満ち足りている。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「はい。
わたしはですね——」
一拍。
「散歩にリードを持って歩くんです。」
「ほぅ」
「そして道すがら、
様々なものにリードを繋ぐんです」
「……様々?」
「はい」
男は、
誇らしげにうなずいた。
「例えばですね」
「電柱」
「自動販売機」
「ベンチ」
「公園の遊具」
一拍。
「その瞬間から、彼らは私のペットになります。」
スタジオ、沈黙。
……
「なるほど、なるほど」
黒岩、ゆっくりとうなずく。
「名前はつけるんですか?」
「もちろんです」
「電柱には?」
「ポール」
「自動販売機には?」
「ベンダー」
「ベンチには?」
「ベンちゃん」
「……」
黒岩、目を閉じる。
数秒。
……
……
「……かはぁーっ……」
カメラ目線。
ゆっくりと寄る。
「それで、
満足するんですか?」
「ええ」
男は静かに言った。
「繋いだ瞬間、
私のものになる」
「私の管理下に置かれる」
「そして——」
一拍。
「とても従順です。」
黒岩、天を仰ぐ。
「川口くん」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が
炙りカルビを差し出す。
「だから違うって!!
人をつまみ出せと言ってるんだよ!!」
「つまみだせと……」
「カルビは好きだが今じゃない!!!」
ジャンクション孝二、
静かにリードを握りしめる。
「あなたも——」
一拍。
「繋がれたいですか?」
黒岩、
一瞬だけ黙る。
……
……
「——CM」
*
CM明け。
川口の鼻から
なぜか血が出ている。
ティッシュを詰めている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、何事もなかったように言う。
「まだまだ奥が深いですねぇ」
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「S字フックを色々な所に引っ掛け回る趣味」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




