すれ違い様に変顔をキメる男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
それではぁあ?
今回ご紹介するのはこの方!!」
男が一歩前に出る。
「ガイザマーと申します。」
年齢不詳。
髪型は整っているが、
表情はすでに少しおかしい。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「小生がですね、
おっこども——子供の頃にですね、
車に乗せられていたんですね」
「ほぅほぅ」
「窓から流れ流れゆく、
ゆきまくるケシーキをですね、
おんながめていたんですが」
「おんながめてた?」
「ええ、
おんながめていたんです」
黒岩、軽くうなずく。
「そしたらですね——
すれ違った一台の車の運転手が」
一拍。
「明らかに変顔をしてたんですよ!!」
「ほぉ!」
「家族全員で
大爆笑した記憶がありましてですね」
「なるほど、なるへそ、
ざ・ワールド!的な?
ちぇけな?」
「……バカにしてますか?」
「いやいやいや!
コレはね、おやくそく!
ね!
硬いこと言わないで!」
一拍。
「硬いのはポコちゃんだけでいいって
言うじゃないの!」
スタジオ、微妙な沈黙。
「えー、それではですね。
一体どんな変顔ですれ違うのか」
「VTRになってますのでね」
「見てみましょう!」
「こちらです」
——VTR
車が走っている。
「ブーーン」
対向車。
「ブーーン」
運転席。
「……」
(変顔)
「ブーーン」
——VTR終了。
スタジオ。
黒岩、沈黙。
……
……
「……かはぁーっ……」
カメラ目線。
ゆっくりと寄る。
「こいつぁ、
ダメだよw」
「面白く無いとでもいうのかぁ!!
きさまぁ!!」
ガイザマー、立ち上がる。
「おいw
つまみ出せ!
邪魔だ変態!!」
「どうぞ!!」
川口が、
エイヒレを差し出す。
「だから違うって!!」
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口の頬が、
ほんのり赤く腫れている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
「次回は——」
黒岩、カンペを見る。
「リードだけで散歩する人」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




