おにぎりを食べてる姿を見られたい男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
司会は私、館主の——
「黒岩です!」
「そしてアシスタントのかわ——」
遮るようにして、黒岩。
「はい!!
それではぁあ?
今回ご紹介するのはこの方!!」
「ちょっとー! 名前ぐらい言わせてよー!」
ゲストが一歩前に出る。
「メドベージェフ幸広と申します。」
若い頃はサーフィンに夢中になっていたらしく、
いまだにロン毛で日焼けした見た目。
だが服装は、どこか少しフォーマルだった。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「えー、わたしの趣味はですね……」
一拍。
「おにぎりを食べている姿を、見られたい!
とですね。はい。」
「はわぅ……
で、何でまた……見られたいとは?
くわしく、くわしくぅ!
くわしくよろしく!」
「すれ違い様に食べ見せるというこの感覚がですね、
なんともあのー、
『あ、食べてるな』と
100%で思わせられるというですね、
快感ですか」
「かっはぁー!!」
黒岩、カメラ目線。
ゆっくりと寄る。
「食べ見せる!!
食べ見せるという言葉はアタクシですねぇ、
聞いたことないねぇw
食べ見せると!!
うーんw」
「……バカにしてますか?」
「あいやいやいや、そうじゃないんですがねw
珍しい言葉だなとねぇ?」
「あ、あの人、おにぎり食べたかったんだなと。
見たね?
あの、見た人がね?
思うわけですよ。
それがいいんですよ」
「一日何回くらいやるんですか、その食べ見せ?」
「んまぁー気分にもよりますが、
10回くらいは食べ見せたいですかね。
満足感と満腹感の差し引きというかですね、
駆け引きというですかね、
っと!!
ここでおにぎりだろ!
あぁあ!!
ここだったか!
んにゃーー!!
今だったよーー早まった!!!
とかでして、
非常に楽しいですね」
黒岩、沈黙。
……
……
「……かはぁーーっ……」
カメラ目線。
ゆっくりと寄る。
「おにぎりをポケットに二個入れてますが……
いちいち買いに行くんですか?」
「鮮度も大事なんでね。
いちいち買うんですよ。
なんか棘があるなー、
“いちいち”とか!
私がバカみたいじゃないか、それじゃ!!」
「まあまあ、しょうがないですよ。
バカなんだものねぇ?
川口くん!」
「ぼかぁ何も言ってないですが——
痛いっ!!!」
司会席の見えない部分で、
黒岩が川口くんをつねる。
「ったーきたぁ!
くっそコケにしやがって!!」
「つまみだせ!
ふぁなかす野郎め!」
川口くんが、
「おつまみセット」を持ってくる。
「どうぞ」
「あぁこれな、
イカの酢漬けがいいおつまみ——
しょろーっ!!
なんだよこれあ!?」
「つまみだせというので……」
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
なぜか川口くんの目に青タンが出来ていて、
しょんぼりしている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?
まだ手探りな感じで始まったこの番組!
ねぇ?
えーっと……」
黒岩、カンペを見る。
「来週は——
おおおお!!
すれ違い様に変顔をするというのが趣味!!
楽しみですなーー!!
また来週!!」




