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多額の借金を抱えた俺、マグロ漁船に乗る直前に『サーモン狂いの天才令嬢』に拾われました。 〜ミステリーは彼女が解く。俺は物理で死なないように頑張る〜  作者: @gamakoyarima
1章 黄金の鮭消失事件 〜その鮭、時価3億円につき(ただし生臭い)〜

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エピローグ 報酬はプライスレス(0円)、借金はリミットレス(50億)

「……50億」


西園寺家の客間。 俺は目の前の紙切れを凝視していた。


昨夜の晩餐会。 俺たちの活躍により、鮭ゾンビのパンデミックは未然に防がれた。 世界は救われた。 だが、西園寺家の屋敷は半壊し、VIPたちへの慰謝料と口止め料は天文学的な数字になった。


「50億……。俺の時給が1000円だとして、不眠不休で働いて……570年かかる計算か」


室町時代から働いてようやく返せる額だ。 俺は乾いた笑いを浮かべた。 もう笑うしかない。


ガチャリ。 ドアが開き、威厳ある老紳士が入ってきた。 西園寺剛三ごうぞうだ。 昨夜の戦闘服(筋肉)ではなく、今日は高級スーツに身を包んでいる。


「よう。目覚めたか、英雄」


「あ、剛三さん……いえ、お父様」


俺は反射的に直立不動になる。


「昨夜は見事だった。貴様の筋肉、そしてアリスを守ろうとする気概……。借金まみれの『野良犬』にしては、なかなか骨のある男だったぞ」


「は、はあ……」


褒められているのか? これはチャンスか? 俺は恐る恐る切り出した。


「あの……お父様。俺、頑張りましたよね? 世界を救いましたよね?」


「うむ。間違いなく救世主だ」


「でしたら……この50億の請求書、なんとかなりませんか? せめて半額とか、クーポン適用とか……」


剛三はニヤリと笑った。 そして、背中に隠していた「何か」を取り出した。


「安心しろカケル君。私とて鬼ではない。貴様の働きには、相応の『報酬』を用意している」


「ほ、本当ですか!?」


俺の目が輝く。 金一封? 借金帳消し? いや、西園寺家の財力なら、50億なんてポケットマネーのはずだ!


「受け取れ! これが私の感謝のしるしだ!」


剛三がバサッと広げたもの。 それは、ボロボロに使い古された、色あせたピンク色のパーカーだった。


背中には、手書きのマジックでこう書かれている。


『 鮭魂(SALMON SOUL) 』


「…………はい?」


俺の手が止まる。


「これは私が若い頃、初めて北海道で熊を倒した時に着ていた『伝説の勝負服』だ。汗と鮭の脂が染み込み、洗濯しても匂いが落ちない、国宝級の逸品だぞ」


剛三は誇らしげに鼻を鳴らした。


「これを貴様にやろう。特別に洗濯はしていない。私の『覇気』と『加齢臭』を直に感じるがいい!」


「いらねぇぇぇぇッ!!」


俺は全力でパーカーを地面に叩きつけた。


「金だよ! 俺が欲しいのは現金! もしくは小切手! 古着の押し付け合いじゃないんだよ!」


「なんと! このパーカーの価値がわからんとは……やはり貴様はまだ『養殖モノ』だな」


剛三は呆れたように首を振った。


「まあよい。それを着て精進しろ。……アリスを頼んだぞ」


剛三はそれだけ言い残すと、満足げに去っていった。 残されたのは、俺と、50億の請求書と、異臭を放つピンクのパーカーだけ。


「……詰んだ」


俺が床に突っ伏していると、今度はアリスが入ってきた。 その後ろには、メイド服を着たままスルメをかじっているポーラもいる。


「あらカケル。お父様から『宝物』をいただいたそうですわね? おめでとう」


「嫌味か!」


「それより、準備はよろしくて?」


「準備?」


アリスは旅行鞄をドンと置いた。 その中には、着替えやサバイバルグッズ、そして大量の『鮭缶』が詰め込まれている。


「行きますわよ、カケル。次の目的地へ」


「どこへだよ。俺はもう動けねぇよ……」


「貴方の実家……**『赤城養鶏場』**へですわ」


「え?」


俺は顔を上げた。


「黒幕の細井は言っていました。『鮭と鶏の融合』と。……奴のアジトは、間違いなく貴方の実家周辺にあります」


アリスは扇子を開き、ビシッと俺を指差した。


「それに、貴方も気になるでしょう? お父様の失敗した『ニワトリ1万羽』……。本当にただの失敗だったのかしら?」


「……まさか」


俺の背筋に冷たいものが走る。 親父の失敗。 莫大な借金。 そして細井の出入り。 すべてが一本の線で繋がろうとしている。


「行きましょう。世界の終わりを止めるために。……そして何より」


アリスはニッコリと笑った。


「貴方の実家の『とれたて卵』で、究極の卵かけご飯(TKG)を食べるために!」


「動機が食欲ゥゥゥッ!」


「行くぞカケル! 私は焼き鳥が食べたい!」


ポーラも目を輝かせている。


俺はため息をつき、床に落ちていた『鮭魂』パーカーを拾い上げた。 臭い。 魚臭いし、おっさん臭い。 でも、不思議と嫌な気分ではなかった。


「……わかったよ。行ってやるよ」


俺はパーカーを羽織った。 サイズは無駄にデカいが、着心地は悪くない。


「待ってろよ、実家。……そして親父」


借金50億の執事と、ポンコツお嬢様と、食いしん坊テロリスト。 俺たちの新しい旅、第2章『実家・バイオハザード編』が、ここから始まる。

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