1:クソったれな世界で
クソったれな世界でゴミカスのような彼の人生も、もうじき終わる――――。
「断頭台を上げろ――――ッ」
腕を縄で結ばれ、見せ物台として建てられたステージに上がりゆく男。
彼は一体、なにをしたのか?
広場に集まった見物人たちは、その理由を知らない。
ただ人々が集まっているから、人が集まったのか。
滅多なことでは行われない、断頭台による公開処刑があることを聞きつけ人が集まったのか。
だが、そんな事なんてどうでもいいのだ……。それがクソったれな世界というものだろう。
ッ――――。
*
「よくもまあ、貴重な一生をあれだけ……」
そう言った光に包まれた人影は神か否か。
死んだ男は、顔すら目視できない人影の眼が見えるのか……? 人影に少し目を向けると、伏せた。
そして、沈黙ののち。口にする。
「……チャンスがなかった」
人影は高らかに笑い、応える。
「チャンス? そんなもの、人間共が作り上げた虚無! そんなものをお前は信じていたのか?」
「……わりぃかよ。そうだよ、俺はそんなものを信じないと生きられないゴミだよ……」
人影はフッと笑い。
「ならば、もう一度。人生をやり直すことが出来るとしたら、どうだ?」
「はあ?! 無理だね。何度やり直したって、結果は同じ……。あの世界はクソだ」
「ほぉ~~。ワレが丹精込めて生み出した世界をクソ呼ばわりとは。では、聞く――――ッ。何があの世界には足りぬ!?」
男は人影を睨みつけた。
「理だよ。あんたが生み出したって世界は、生きて死ぬだけの世界。生きる目的も無いのに、死ぬまで何しろってんだよ?!」
「そんなもの好きにすれば――――ッ。いや……ワレが間違っておった。確かに、お前の言う通りじゃな」
「だろ……早く死ねて清々する」
「しかしッ、しかしじゃ! お前は自ら、生きる目的を探したのか??」
「はあ?? 生きる目的を探すって何だよ?! チャンスもねぇのに、生きる目的なんか見つかるかよ! そもそも、理の話だろ? 話を逸らすな」
「まあまあ、落ち着け。論点を変えたのはお前ではないか。ん~~そうじゃな、あ、そうか。要するにお前は……スタートとゴールが自分で決めれないんじゃないか?」
…………。
男は答えることが出来なかった。
人の人生なんて、多少の差はあれど……始まりがあり、終わりがある。だがそれは、生きて死ぬという単純なものではなく、子供心に夢見た物語りのような始まりと終わり。
没頭して、睡魔にも抗うような物語りの世界。
「ならば与えよう! そして、見つけぬまで終わらせぬ。断頭台から始まる不死の世界を!」
光に包まれた人影の言葉を最後に、男の意識は転げ落ちた生首と切り離された身体に戻った。




