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登場人物紹介+説明と解説(一章時点)

【キャラクター紹介】

‣ジャック・ファウスト 

 種族 ニンゲン/職業 屑拾い

 その日暮らしの生活にも関わらず、弱者を守る意志を抱く心優しき青年。16歳。

 

 本作の主人公。景色に溶け込みやすい砂色のポンチョにボロボロの半ズボンに譲り受けたお古のハバーサックを腰に据えて、残骸内で拾ったブカブカの紐靴を履いた壊滅的なファッションの青年。屑拾いで生計を立てているが稼ぎは良くない。

 かつて老婆の得意料理だったホッペルポッペル(馬鈴薯と腸詰めやハムで作るオムレツ)が大好物。育ての親である老婆の背中を追い続けた結果、やがてそれは彼の善性の礎となる。

 

 ──幼年期のトラウマは彼を、”誰の幸せも奪わないでほしい”という

不完全な最後の祈りで縛りつけるに至った。

 

‣マイケル・スタークベッター(……)

 種族 人間/職業 便利屋 階級はacht (アハト)(8)

 荒々しい口調が特徴的な流浪の傭兵。17歳。


 ジャックの相棒的存在。(某ヤンキーギャグ漫画に登場するツンツン頭の彼のような)尖ったヘアスタイルが目立つ青年。重度の武器オタクであり歯車工房製の背の丈程ある巨大な剣を愛用している。

 月桂樹の香りを当て好むといった、意外と洒落臭い一面をもつ。世話焼きな性格の反面、お人好しと抱擁を異常なまでに嫌っている。ツンデレ。


‣グレーテル(本名 マルガレーテ・ナーイアス)

 種族 人間/職業 船上医術士

 終末世界に似つかわしくない、凛として儚い花のような女性。18歳。

 

 丁寧に結われたブロンドの髪に、衣装の所々に飾られているワスレナグサが似合う素朴な淑女。自身の涙を触媒にして対象から苦痛を忘れさせる、忘却の魔術レーテーの使い手であり、飛行船団員の治療を担っている。

 スチムの姉であり、三人兄弟の長女。


 ──他者の幸せを願い、その為ならば自信を犠牲にすることを厭わない。

 忘却の魔女に架けられた十字の枷は重く、彼女が抱く祈りは決して、己を救うことさえをも許さなかった。

 

‣スチム

 種族 人間/職業 飛行船技師

 活発だが現実主義的である、姉思いの少年。13歳。


 グレーテルの弟。船体やエンジンの修理を担っている飛行船団のエンジニアであり、頭が良く若年にして優秀。いつかその拙い手で旧帝国の遺産である大型兵器の残骸を再起動させることを夢見ている。

 突拍子もない行動をとる姉に振り回され続けており、その度々にうんざりしている。しかしながら同時に彼女は、彼にとっていつ崩れてしまうかも分からない、たった一本だけの支柱でもあるのだった。


 悲観的な姉に、もっと胸を張って生きてほしいと心から願っている。

 ──忘れることは出来ても、なかった事には出来ないのだけれど。


‣ヨウ(楊)

 種族 獣人/職業 便利屋(船団戦闘員兼……) 階級はdrei(ドライ)(3)

 可愛げのある白いぱっつん前髪では誤魔化しきれない、イカれたウェアウルフの女。21歳。


 凄腕の傭兵であり、ついた二つ名は不死のツバメ。シリンダー・オートマチック社製のフルカスタムガンブレード二丁を使用している。

 北東の遊牧民族出身な為、話し言葉にクセがある。食べることとタバコ、少年が好き。姉がいる。


‣アルベルト・ヴォン・ヴォーゲルザング

 種族 使者/職業 修道院長

 異端を忌み嫌う司祭。41歳。


 エフォロイ旧城塞にある安息所の院長で、教会奉仕省所属。マシューらは彼の私兵であり、教義を都合よく解釈している膿みきった男。その反面、脅しに簡単に屈するなど小心者。


‣シスター・ヘレン

 種族 使者/職業 修道女

 ジャックの看病を請け負った安息所に務める癒し手。20歳。


‣ブラザー・ジェリカン

 種族 使者/職業 修道士

 秘蹟の儀式(サクラメント)を受けたばかりの新米修道士。15歳。


‣簒奪者マシュー・ホプキンス

 種族 人間/職業 インベスティゲータ(捜査官)

 アルスターコートに円錐形の帽子(カポテン帽)を被った紳士風の男。30歳。


 将軍(ジェネラル)を自称する男。己の尽きぬ欲を満たすためにあらゆる不正を行い、無実の犠牲者を積み上げていった狂人。教会の名のもとに異端審問を担当しているが、その実態はただの雇われ処刑人でしかない。

 審判の際は柄の部分に針が引っ込む仕掛けが施された、異端を証明する為の審判の針(ラインハイト)。執行には上腕から射出される異端の力を封じ罪を洗い流す処刑者の針(マルテュリウム)と呼ばれる、浸礼された強化鋼を用いる工房カルド(蝶番)で作られた、特殊な二種の針を用いる。射出装置の外側に異端を無に帰す杭を打ち出すパイルバンカー(カノン)を備えている。

 

 故郷マグナ・ウェンハムの綺麗な情景は、彼の記憶の中にあり続けていた。

 これはグレーテルが垣間見た、彼がまだ、しがない弁護士だった頃の話──

 大陸東端にある教会神父の家に生まれた彼は、裕福でないながらも民衆に優しかった為、信頼も篤かった。彼は決して有能ではなかったから、情勢だとか信仰だとか、小難しいことは好みじゃない。彼にとって温かい日常が続くのならば、それだけで充分だったのだ。

 弁護士の仕事は向いていただろう。エクレシアエ(教会)に属する弁護士には、教会への忠誠の他に、弱者救済の義務があったから。能力が乏しくとも、彼の立場が救う命は確かにあった。

 スープキッチン(炊き出し)の日、恵みを求めてブレッドラインに連なる子供たちの、あどけないその姿を彼は、誰よりも愛していた。

 

 ある日の夜、彼はゴールに誘われる。しがらみから目を背け続けていたマシューは、村内で反教会派が芽吹いたことを知らなかったのだ。

 

 この日から、彼の平穏は崩れ始める。

 

 やがて騒ぎは、村中を巻き込んだ大きな物へと発展する。緊張が高まる中で彼には、どうすればいいのかなど分からなかった。必死に呼びかけても、民衆は止まろうともしない。

 反教会派をまとめるリーダー、ゴールが会談の為に村を去ってしまったので、制御が出来なくなった民衆たち。それらは次第に暴徒と化し、平和だった村の景色は枯れ始めの木のように、みるみるうちに寂れてゆく。法も形骸化し、次第に彼は、民衆と教会に板挟みにされるようになる。日に日に衝突によるけが人は増え続け、正当性を証す為に子供までもが傷つけられ始めた。

 

 マシューは選べなかった、もう……耐えられなかったのだ。

 老いた父は頼りにならない。震える手で筆を握り、教会へ助けを綴った。


 数日後、検邪聖省から遣わされた純白の聖職者が村を訪れる。

 白くたなびく教会装束は、瞬く間に赤に染まる。全てが炎に抱かれ、誰も彼もがその海に沈む。

 静まり返った焼野原に残ったのは、()()から受け取った処刑道具を身に付けて佇む

 ”簒奪者”マシュー・ホプキンス、ただ一人。

 

 向き合おうとせず、自身で行動を決定づけようともしない怠惰。

 ……それこそが、彼の背負う罪の十字架だった。


 だが、その怠惰ゆえにそこに至ることはない。

 やがて彼は悟る。”人は狂気に堕ちるからこそ、より強い恐怖で縛り付けらなければならない”のだと。

 冬入りを知らせる冷風が、彼の頬を横殴る。そして村からは、誰も居なくなった。


‣鉄杭のジョン

 種族 人間/職業 処刑人

 マシューに与する人物であり部下の片割れ。31歳。


 処刑担当。ベストを着た長身の男性、柱状の長い杭に変化する打突特化の変形メイスを振るい戦う。

 マシューとは同じ故郷の幼馴染であり同僚。そして、彼の唯一の理解者だった。


‣大槌のマリー

 種族 人間/職業 徴税人

 マシューに与する人物であり部下の片割れ。22歳。


 徴税担当。小柄な女性だがその華奢な体躯に似合わない程の大槌を振るう。大槌は主に戦闘用ではなく、徴税を拒む異端者が住む家の扉を叩き壊す時に使用している。

 10年前、冬のあくる日。マグナ・ウェンハムの片隅で一人凍えていた所をマシューに保護されて以来、彼を篤く慕っている。

 ……全てから目を背けてしまったマシューを見て、彼女は何を思うのだろうか?


‣ゴール

 種族 人間/職業 牧師

 教会の腐敗を見かねて、反教会派である福音主義(エヴァンジェリオン)に身をやつした男。30歳。


 元々はマグナ・ウェンハムの修道士であり、マシューやジョンの同僚。

 マグナ・ウェンハムでの改革が滞っていた為、噂で聞いていた本部に協力を仰ごうと西にあるピニオス(peneios)へと会談に赴いていた。よって彼は、村で何があったのかを知らない。無事会談を済ませたは良いものの、故郷と連絡が取れなく帰還も滞っていた中、エフォロイ城塞で荒れ狂うマシューの噂を耳にした彼は、改心させようと接触を図る。


 自分の事を善だと思いつけあがる、もっともどす黒い悪。


‣老婆

 種族 人間/職業 ???

 ジャックを身一つで育て上げた、彼にとっての恩人。故人。


 他の生存者と異なり、自らの意志で誰かに救いを差し伸べる芯のしっかりとした女性。火事でいなくなってしまっても、なおジャックを見守り続ける──物心がついた時から、彼女の事は輝いて見えていた。

 

‣アルトマイヤー

 種族 人間/職業 商人

 アルトマイヤーの資材買取店店主である世話焼きの老人。74歳。


 エフォロイ中心街の裏路地に店を構えている。ジャックにとってただ一人のビジネスパートナーであり、老婆に先立たれ一人になってしまった彼を、彼女に代わり見守っている。

 老婆とはシェルター時代に知り合った古くからの友人。


‣メフィアー(悪魔、または破壊者)

 種族 神/職業 

 偃月刀を握る蒼黒い魂だけの存在。年齢不詳。

 

 悪魔を自称する影。ファウストと魂の契約を交わし、その成り行きを見届けようと耐え忍んでいる。

 ──照らす者の亡き大地は、ひとりでに輝くことは叶わない。

 だからこそ私はこの迷いの森で、ジャック……お前を待ち続けるのだ。


          * * *


【地図】 (見づらくてすみません…)

挿絵(By みてみん)

【用語解説】

‣歯車工房……エフォロイの東の港町、ヴァルトブルグ(Wartburg)に本拠を置く小工房。蒸気式の駆動装置を搭載した、特殊な変形武器を制作するのが得意。無骨な見た目に反し、多機能的な武器を制作する工房として知られている。     

 マイケルの愛用する巨大な剣も本工房製。


‣シリンダー・オートマチック社……正式名称E.S.A.I.(East Cylinder Automat Industries)退廃したこの世界に現存する、数少ない巨大企業の内一社。旧帝国技術研究廠に所属していた科学者の生存者達が立ち上げた企業で、海を越えた東に位置するミットラー(mittler)大陸に本社を置く。生体義肢やより高精度の強化鋼装備など、様々な産業を手掛けている。

 現会長はローゼン卿ことエリッヒ・W・ローゼン。


‣ラベゴ……大陸北部に存在する砂漠地帯。


‣ハザマ……星神が堕ちたことにより調律が立ち消えたことで、埋められなくなった世界の歪。


‣星辰の教会……星神を崇拝する教団。落陽の日々を生き抜いた人類は同時に、星の導きを失ってしまう。だが、新天地を求めてシェルターを脱した一集団がその残滓に魅かれ、クレーター中央に座していた遺骸を拝領したことを発端とする。

 その最初期、星の意思の代弁者として人々を導いてきたのだが、枢機卿が入れ替わり腐敗した。施しを行う奉仕省や異端を処す検邪聖省などが内部組織に存在する。

 

‣秘跡の儀式(通称・サクラメント)……星神の残滓である血を拝領しその身を捧げることで、星に仕える使者に成り、彼の意思を読み取れる状態にする儀式。自我を星に委ねることとなるが、超常的な神秘に見える。

 堕ちた星は光を発しない、故に使者は皆狂気に呑まれるのだ。


‣エヴァンジェリスト……腐敗した教会を見かねてとある人物が立ち上げた、反教会派の新教徒集団。

 星辰の教会と異なって、彼らは落陽の日以前に紡がれた福音書原典を掲げており、世界全体の改革を目指している。


・ミレニアリズム……旧帝国の標語、”落陽の時は近い、千年帝国を建設する時が来た”

地図…『ファンタジーマップシミュレーター』 The Stranger様 

コンパス…オガムド(ChatGPT様)

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