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第33話 可憐さとシニカルの二面性_2

 「女心はね、もう少し後ろ暗いかなあ」

 スキップをするような軽やかな足取りに、無垢な声音で唯が続ける。

 「そのさとみちゃんって、小学校から大学までずっと女子校で、職場もうちの高校なの。合コンとかでウケがいいんだって。それで、さとみちゃんは少しでもきついことを言われると、泣きながら職員室に帰っちゃうの。で、ヤンキーたちの言い分としては、毎週末合コンを開いて彼氏をとっかえひっかえしてるくせに、清楚ぶって気弱なふりしてんじゃねーよってこと」

 「それは、えっと、先生も大変だね。反抗的な生徒が多くて」

 「うんうん。先生は大変な職業だよねえ。でも、さとみちゃんにも相当な落ち度はあると思うなあ」

 「どういうところが落ち度?」

 夕焼け色に染まり始めた景色を合図とするように、目的もなく進んでいた足が、徐々に駅の方に向かう。唯ちゃんはきっと、今日も日暮れ前の電車で帰っていくのだろう。

 「いい歳して清純ぶっててるのに、昔の恋人を制御できない詰めが甘いところ」

 唐突に他人をあげつらった彼女に驚き、歩みを止めた。けれども唯ちゃんは、俺の心境の変化に気づかないのか、剥げた看板を眺めながら進み続ける。

 「多少生徒に反抗されたくらいでね、さとみちゃんは授業中にいきなり泣き出して、他のクラスの先生を呼びに行ったの。かわいそうだけど、でもそれはちょっと、卑怯だと思った」

 同意を求めるように、唯ちゃんが振り向いて首を傾げる。明日の天気の話をするように、穏やかな笑顔を向ける彼女に、小走りで追いつく。

 「女子高生なんて、都合よく子供の権利を主張する狡猾な集団だから、扱いが面倒なのは分かるよ。それでも、適当にあしらわないと。他の先生には出来ているし、女子校の教師になろうと思った時点で、想定していたはずなのに。自分も同じことを学生時代にしてきたのだろうから」

 「ま、まあそうかも」

 「それに、唯たちは安くない学費を払ってるんだから、授業を中断されない権利があるはずだもん」そんなことを、唯ちゃんは甘えた口調で言い切る。

 冷えきったアイスが、より固く感じる。

 「男子の目が無いと、争いが表面化しやすくなっちゃうの。だって、唯が綾乃と大声で悪口を言い合ってたら、航大くんは悲しい気分になって、きっと止めてくれるでしょう? でも、もし航大くんと宮瀬くんが言い合いをしていても、唯は止めないと思う。唯には関係ないんだもん。積極的な平和主義者は、男の子だけだよ」

 唯ちゃんは従順そうな見た目に反し、そんな風に身近な友人たちを鼻で笑う日もある。俺は常々、その冷たさに驚く。


ブラックモンブラン、大好きです。

チョコレートアイスのなかで一番好き。

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