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第3話 彼女が来るまで、あと二分_2

 商店に足を踏み入れた瞬間に、微かに感じる黴の混ざった埃のにおい。日に焼けた薄緑の暖簾。店内のどこにいても聞こえる、店頭に置かれたアイス用冷凍庫の稼働音。籠に入った少し傷んだ果物。コンビニでは今どき取り扱っていないチープな駄菓子。スーパーの一番下の段で眠っているような、二軍三軍の名も知らない最寄品。




 意味もなく、薄く埃の膜の張ったココアパウダーを手に取る。貼られた値段のシールは、近所のコンビニより割高に感じる。


 「今日はひとり?」


 大相撲の中継をぼんやり眺めていたおじいさんは、盛り上がりに欠く取り組みが続いたのか、当たり障りない話題を投げかける。


 「あ、はい」


 牛乳や野菜が冷やされている銀色の冷蔵庫の縁の鏡の部分で、自分の顔や姿を確認していた俺は、唐突な問いかけに声が上擦った。


 「あのハンサムな男の子は一緒じゃないんだ」


 「なんか、用事があるそうです」


 あくびをしながら、おじいさんは相撲の中継を見続けている。


 「そうなんだねえ。いつも一緒に来てるから、喧嘩でもしたのかと心配したよ」


 「いえ、仲は普通にいいですよ」


 おじいさんの死角を探し、腰を屈める。冷蔵庫の縁で、短く整えた真っ黒の前髪を撫でつける。眉毛も髭も、ちゃんと手入れしてきた。


 よし、大丈夫だと、心の中で気合いをいれる。


 細い目に薄い唇。我ながら良くも悪くも薄い顔立ちだと思いながら、薬用リップをスラックスのポケットから取り出して塗る。鞄を床に置き、カッターシャツの襟もとも正して、スラックスとベルトを調整する。

商店のラインナップってわくわくしますよね。

駅前のスーパーより割高なものもあるけれど、差分はノスタルジックな付加価値として有り難く買っています。

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